イフリートの望み
涙の結晶石がイフリートの胸に当たった瞬間、
[この大馬鹿者!!]
という大音声の罵倒が、イフリートの頭を駆け巡った。
[な、何奴!?]
イフリートがあまりの威圧感に少したじろぎながら問いかけると、脳裏に水神竜ミラカナチが浮かんだ。
[ミラカナチっ!?なぜここに!?]
[お主が阿呆なことに、操られているみたいだから、冷やかしにな]
[ぐっ……事情があってな。操られているふりだ。]
[ほぉー。お主が自分を曲げてまでか…。ちなみにお主が迎撃してるのは、妾の子供達が世話になってる者で、今も子供達は一緒にいるのだがな?]
[なぬ!?かなり強めの放り込んだぞ!大事ないのか!?]
[ミリが死んで、ミルが…]
[あぁ…!ワシはなんて事を…!]
[冗談じゃ。]
[…………勘弁してくれ。]
[じゃが、このまま続ければその可能性もある。その者達と繋ぐぞ。]
すると、ライル,ユイナ,フラウに加え、3姉妹とシズクとキラもついでとばかりに念話が届くようになった。
[あのライルと言います。よろしくお願いします。]
[ぬ!?お主の声は心地良いな。良く聞こえるぞ。そして何より、カイルとミチルの命脈を感じる…これは運命か。ワシはイフリートのヴァルレオスだ]
[ヴァルレオスさん、はじめまして、ユイナと言うにゃ。とりあえず操ってるヤツをごまかすために、軽めに攻撃して欲しいにゃ。]
[あぁ、そうだな。じゃあ左手で横から殴りに行くぞ]
と言うと、ユイナ目掛けて拳を振るった。ユイナは来る方向が分かっているので余裕があったが、必死に躱しているような演技をしながら、危なげなく対応していた。
それからお互い申し合わせをして、ヴァルレオスはユイナやライルへ見た目が派手で威力を抑えた攻撃を繰り広げ、ユイナは躱しながらミレの水をまとった両手の双剣を使い、ライルは防御の合間にミリ,ミルの水の魔法を撃ち出しながら、話を続けた。でも、まずは攻撃前に気づかれなかった3姉妹から
[私達のこと分からないなんて!]
[おっちゃんヒドっ!]
[これでもくらえ!!]、
[アウチッ!]
と、ヴァルレオスは強烈な一撃の洗礼を受けたのだった。
[私達の目的は……ということなんです。]
ライル達が現状を説明すると、
[なるほど…そういうことか。それなら協力するし、ワシもこの機会に賭けよう。]
とヴァルレオスは応えてくれた。
[ふむ。それは、お主が操られておるのと関係あるのかの?]
[あぁそうだ。事の始まりは、ライルの親であるカイルとミチル、そしてあのゲンダラールが、ワシの住む北の山の噴火口にきた時だ。
カイルとミチルは2人共優秀な精霊使いだった。それでも単独でワシに声を届け、召喚するのは無理であった。しかしあの2人は、お互いの声を重ね共鳴させる事で、効果を増幅する術を編み出していた。
その声は陽だまりのように心地良くてな…。ワシは召喚に応じることにしたのだよ。
2人は召喚に応じてくれたことに嬉しそうでな。その喜びようを眺めていたら、突然ゲンダラールが闇の魔法陣を使い、ヤツの部下が拘束の鎖を巻きつけてきたのだ。ワシはその時、抗うことができたのだがな…どういうことか見極めようと様子見してしまったのだ。今でもその判断を悔やんでいるのだが…。
そして、そのゲンダラール達の行動に、カイルとミチルは驚き、止めろと叫び、阻止しようとしたのだ。2人はどうやら強力な火魔法を用いた実験と聞いていたようだったが…。
結局拘束を阻止できず、兵器として利用するという話を聞いた2人は、そんな事はさせないと、2人で一緒に自殺しようとしたのだ!
そうすれば2人からの魔力供給がなくなり、ワシは現界できなくなって、兵器として利用されることはなくなるからな。
それもゲンダラールに寸前で阻止され、2人は水晶玉のような物に精神を吸い取られたようだった。その後2人の身体を通した闇の魔法でワシに命令できることを確認したゲンダラールは、2人の身体を保存の効果を付与した氷の魔法で凍結し、ワシも拘束の魔法陣の上から氷漬けにしたのだ。
ワシは自殺してまで阻止しようとしてくれたカイルとミチルを、できれば救いたくてな。抗わずに機会を待っていたのだ。
2人の子供であるライルが来て、王子の水晶玉の話を聞いて、2人を救う光が見えた。ワシも全力で共闘しようぞ!]
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