王城の対策会議
王都グランの王城の奥深く、切り出された巨石により構築され、防音対策と侵入防止対策が厳重に施された一室に、主だった閣僚や将軍が集められた。全員が重厚で大きな丸いテーブルに揃うと、カッセル宰相が、
「急遽皆さんに集まって頂いたのは、ここに居るシメノ伯爵と魔術学院のシン教授より、緊急を要する情報が寄せられたからである。まずはこれを聞いて頂きたい。」
と言って、シメノ伯爵とシン教授に合図を送った。
宰相からの指示を受け、シン教授が魔道具に保存されているフェントール王子から送られた映像と音声の記録を再生した。
すると、その内容を聞き始めた途端、皆が度肝を抜かれ、色めき立った。
全て聞き終えるとグントール国王が、
「わしとアンジェは、ここで語られているフェントールの幼少期のエピソードを、確かに記憶している。また、我々と本人しか知らないことだと思っている。ゆえに、これは本物の可能性が高いと考えている。それを踏まえて、皆の意見と対応策を聞きたい。」
と述べられた。
宮廷魔導士ゲンダラールの乱心とも言える話に、どうしてあの愛国心にあふれていた者がこの様な事を…と、皆が信じられない気持ちで衝撃を受けていた。
また、閣僚達の中には、魔術師団を推進してきた革新派に属する人は半数以上いたが、今回の事を把握している者は誰もいなかった。推進してきた組織がクーデターを起こしたようなものであり、できればまやかしであるとの方向に持っていきたかったが、既に国王がご覧になっており、限りなく本物だと認識しているだけに、もみ消せる段階ではなく、否定したり笑い飛ばしたりする訳にもいかなかった。
政治的な派閥に無頓着な武闘派の将軍は、
「これは明らかな叛逆である。王子の苦境を打開するためにも、直ぐに斥候を送り、魔術師団の拠点への進軍準備をすべきである!」
と述べ、速やかな対応を進言した。
革新派の重鎮は、ひどく狼狽しながら
「陛下、まだ本物と決まった訳ではありません!もし偽物だった場合、軍を派遣した隙に王都で何かが起こるやも知れません!ここは私が調べますので…」
と自分のコントロール下に置こうとした。
これに対し国王は、
「それでは手遅れになる可能性がある。」
と意見を切り捨てた。
ここで、控えて推移を見守っていたシン教授は、魔道具から信号が送られてきていることに気づいた。そこで隣で同じく控えていたシメノ伯爵に伝えると、シメノ伯爵が、
「皆様、現在の状況を伝える信号が届いております。一旦ご覧になって頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。」
と提案した。
それを受けて国王は、
「許す。疾く映されよ」
と命じられたので、シン教授は魔道具を操作した。
すると、光の精霊が空中に漂い、大きな穴を挟んで魔術師団団長のガルクと対峙している場面が映し出され、
「ガルク団長、何が大事か、国のためになるか、良く考えて行動するのを期待する。」
と光の精霊の中からフェントール王子のような声があがるのが聞こえた。
その声にガルクがハッとしている内に、王子の声に促されて光の精霊がこちら側に引き上げて来るのが見て取れ、映像は終了した。
ガルクの土砂の付いた鎧や、大きな穴から聞こえたうめき声など、その圧倒的なリアリティに疑いを入れる余地はなく、また既に何らかの戦闘が行われており、一刻の猶予も無いことが見て取れた。
また、フェントール王子のしっかりした言葉に皆驚き、国王は少し嬉しそうであったが、焦った革新派の者が、
「あんなしっかりした物言いは、フェントール王子とは思われません!」
と言ってしまい、国王に凄まじい目で睨まれ、小さくなるのだった。
映像を受け国王は(小さくなった者を無視しつつ、)
「皆も見た通り、この話は真実であることが濃厚であり、一刻の猶予もない。
よって、先の将軍の進言通り、精鋭の斥候を即座に送ることとする。軍の編成は速度を重視し、魔法に対抗できるようにする事。細かな編成は宰相と将軍達、騎士団団長に任せる。では…」
と命じようとすると、再生状態にしていた魔道具から、リアルタイムの新たな映像が流れてきた。
そこにはなんと、高さが20mはあると思われる炎の巨人が映っているのだった!!
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