冒険準備?
「さて!ライルさん、ユイナさん、冒険者登録ありがとうございます!こちらがお二人のギルドカードとなります!」
ちょっと前とは同一人物とは思えないほど雰囲気が華やいだ青色の髪をショートカットにした受付嬢が、全開の笑顔でカードを渡してきた。
ライルは(この人こんなに綺麗な人だったんだ)と変わりように驚きつつカードを手に取った。ユイナはライルにギルド併設の食堂で串焼を買ってもらい満面の笑みである。
「カードに名前の他にEって書いてありますけど何ですか?」
ライルがカードを見て受付嬢に質問をすると、
「それは冒険者のランクですね。冒険者にはE〜Sまでのランクがあって、最初はEランクからのスタートになります。依頼や仕組みについても説明した方がよいですよね?」
と受付嬢が答えてくれたので、
「お願いします。」
「フガフガにゃ(よろしくにゃ※串焼き頬張り中)」
とライルとユイナは説明をお願いしたのだった。
「ではまず、依頼を受ける時には、自分のランクと同じランクまでの依頼しか受けられないので注意して下さいね。依頼を受けてランクポイントを一定数貯めると、ランクを上げることができます。ただしCランク以上に上るときは、毎回ランクアップ試験があります。高いランクの依頼ほど難易度は高いですが、報酬も高くなるので頑張って下さい。依頼を受けるときはあそこのボードに貼ってある依頼書を剥がして、受付まで持ってきてくださればオッケーです。ただし常設依頼と書いてあるものは、討伐証明部位や採取物を受付に持ってくるだけで依頼達成となります。あと常設依頼以外の依頼を受ける時には報酬の1割を手数料として払ってもらいます。依頼に失敗すると戻ってこないので、期限や難易度をよく確認してから依頼を受けてくださいね。」
「あと、冒険者ギルドは世界中に支部があり、冒険者は国を自由に移動する事が可能です。また高ランク冒険者は貴族と同等の扱いを受けます。先程お渡しした冒険者カードを作る時に血を1滴垂らして頂きましたが、これで本人にしか使うことができないので、身分証明書としても使うことができます。多くの国で入国手数料が無料になる等の恩恵がありますよ。」
受付嬢が手慣れた感じで要点を説明してくれたあと、
「他に、カードにはパーティー名やクラン名、称号なども記載されます。パーティー名決めちゃいますか?」
と聞いてきた。それに対しユイナが
「それなら紅の…!」
と言いかけたが、
「却下。」
とライルは素早く止めたのだった。
「むぅ。」
「ははっ、直ぐに決めなくても大丈夫ですので決まったら追記するので言って下さい。」
軽快なやり取りを見て微笑んだ受付嬢が、(この2人ちょっと変わってるけど良い感じだよね。少し危なっかしい所があるから、何かフォローやアドバイスできることがあればしてあげたいな。パーティーだと、まずはお互いをよく知ることかな?と考え、)
「それより目的地は魔の森ということでしたが、行く前に軽い依頼とかで2人の役割や出来ることを確認することをお勧めしますよ。」
とアドバイスをしてくれた。
「なるほど。お勧めの依頼ってありますか?」
とライルが聞くと、
「そうですね〜街道沿いのゴブリンやウルフ、川沿いのスライムは常設依頼になってますのでどうでしょうか。」
と提案してくれた。
「フッフッフッ、それ位なら楽勝にゃ。」
「ユイナさんはその装備だとスピード重視の軽戦士ですか?」
「そうだにゃ。短剣を2つ持つ双剣スタイルにゃ。」
と自信満々なユイナの戦闘スタイルを確認した受付嬢が、
「なるほど。ライルさんは?」
とライルにも話を向けてみた。
「…一応魔術士でしょうか…魔術学院出ましたし…」
ライルの予想以上の答えに、受付嬢が(あれ?自信なさそうだったけど、実は凄いのでは?と驚きながら)
「あっ!凄いですね!じゃあ得意な魔法は?」
と聞くと、
「…焦るとすぐ暴発しちゃうので…暴発しても問題ない殺傷力のないやつかな…ライトとか…」
と心許ない答えが返ってきたのだった。受付嬢は魔法ではなく魔道具作りの専門なのかなと思い、
「あっ…独自開発した魔道具をお持ちとか?」
と問い重ねると、
「…市販の方が断然性能が良いですね…魔力量は多いので持ってれば自前で貯めることはできると思うけど、市販のは高くて…持ってないです……
一応作った中で使えそうなのは、どれだけ魔力を込めても暴走せずに、焚き火の種火になるくらいの小さいファイアボールを出せるヤツかな?………」
とライルが答えたのだった。
「…」
「…」
「とりあえず、ライルさんがゆっくり準備できる魔法か、暴発しない魔法で牽制して、ユイナさんが突っ込む形でしょうか。」
「何かやっぱり僕には無理な気がしてきたんだけど」
「まぁ私に任せるにゃ!ライルは少しずつ強くなってくればいいにゃ!」
少しの沈黙のあと、前にも増して不安な表情になったライルを励ましつつ、何とか役割をまとめる受付嬢とユイナであった。
「うーん。じゃあとりあえずに近くの街道沿いに行ってみようか、ユイナ…さん?」
「さん付けとかいらないにゃ。ユイナでいいにゃ。私もライルって呼ぶし。じゃあ早速〜!」
気を取り直したライルとユイナがそのままの格好で出て行こうとするので、
「ちょっと待って下さい!ユイナさんはその格好で良いですが、ライルさんは装備いりますよ!あと素材運ぶ麻袋とか!」
と受付嬢は慌てて止めたのだった。
「あっ、そうか。どこで揃えれば良いですかね?」
「初心者用の装備と道具はギルドの売店にも売ってますよ。あと討伐した魔物の買取もギルドでやってます。買取素材は掲示板に書いてあるので見ておいて下さい」
「色々とありがとうございました。えーと、」
「受付嬢のアスラです。今後ともよろしくお願いします。」
「アスラさん、ありがとう」
「ありがとうにゃ。アスラ」
この後、装備の高さに驚きながら、ライル用の革の胸当てと、脛当て、小手、剥ぎ取り用のナイフ、麻袋を購入し、街の出入口の門に向かったのであった。
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