遭遇してつかまる?
次の日の朝、ライルは緊張気味に冒険者ギルドを訪れていた。
重厚なレンガ造りの冒険者ギルドは2階建てで、それなりの大きさがあり、1階には受付カウンターや依頼掲示板、併設された食堂もあった。
ライルが、依頼掲示板の前で依頼を吟味したり仲間と相談する冒険者や、出発前の準備や打合せをする冒険者の熱気にあてられながら奥に向かう途中、なぜか「グゥ〜〜〜」という音が聞こえた気がしたが、そちらに注意を払う余裕もなく、カウンターに向かっていた。
カウンターには3人の受付嬢がいて、なぜか1人の前が列もなく空いていたので、ライルは深く考えずにそちらに進んでいた。声をかけようと受付嬢を見ると、黒いオーラが全開であった。しかも
「何で私がアレの担当にされて、何とかしろとか、苦情処理とかしないといけないのよ!
……まぁ確かに魅力的な女性が無一文でいたら危ないと思って声かけたけども。
邪な奴とか軟派な奴とかは、こちらが止める前に即座に返り討ちにしたり追い払ったりしてたから、逆にお灸をすえられて助かった面もあるけど…声かける人がいなくなっちゃたし。そういえば、ぱっと見良さそうに見える人も判別してたけど、野生の勘かな~。
……それにしても、何も食べてないだろうからそろそろやばいかも。
実力はあるけど明らかにトラブルメイカーっぽいから、低ランクの人達は危険を感じて近寄って来ないし、多少のトラブルは関係ない高ランクの人達は低ランクの人と組むメリットないし……難しいな。
最終手段は登録料を貸してあげることだけど……ギルド長説得するの私か……くっ、貧乏くじ…」
とブツブツ言っていた。
ライルがビビりながら、
「すいません、魔の森に同行してくれる人を探しているのですが、どうしたら良いでしょうか?」
と尋ねると、受付嬢はどんよりとした雰囲気をまといつつ、
「あ〜それなら護衛依頼ですね〜。あと、自分も戦えるなら冒険者になって、同じ場所に向かう仲間を募る手もありますね〜。あの森だとなかなか探すのは難しいかもせれませんが。どうされます?」
と答えてきた。
ライルは(うーん。戦闘は得意じゃないんだけど…。でも仲間を探すなら自分も冒険者になった方が良いのかな…)と思案して
「護衛依頼っていくら位でしょうか?あと冒険者ってどんな手続きが必要ですか?」
と再度尋ねた。
この時ライルはジリジリと迫りくるものに気付いていなかった…。
受付嬢は応答していて落ち着いてきたのか、少しまともな感じに戻りつつ、
「護衛依頼は冒険者のランクによりますが、1日1人当り1金貨くらい必要ですね。冒険者登録は16歳以上であれば、犯罪歴がなければ誰でもなれますが、登録に2銀貨必要ですね。」
と答え、ここでライルをじっくり見ながら
「でも戦えたり特技がないと、パーティー組んでくれる人も見つかりにくいかも。…あっ!」
受付嬢が何かを思いつくと同時に、ライルに赤い何かが突貫してきた!
「にゃはは!仲間を探しているのか!私の登録料を払うなら、この紅のユイナが仲間になってやるにゃ!お前ツイてるにゃ!」
「そうです!偶然この方が!ツイてますね!」
受付嬢も凄い笑顔で乗っかってきた!
「…」
ライルが目を点にしていると、グゥ〜〜と音がなった…
「さらにご飯もくれると一生の仲間になるにゃ!」
「…」
「お願いにゃ〜…」
「私も助けると思ってお願いします〜…」
「はい…」
2人の女性の涙ながらのお願いを断れる力は、ライルにはなかったのである。。。
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