川の主!?
本流との分岐点に到着したユイナ達は、動かなくなった水球の中で、ぐったりしていた。
「吐かなかった自分を誉めてやりたいにゃ。
ライルは……白目むいて気絶してるにゃ。」
ユイナがうめくように呟いていると、
プルプル震えた小さな手がゆっくりと伸びてきて、ユイナの肩を掴んだ。
「お主…何度も潰しおって、、、我を殺す気か。」
「何度か背中で「ギャッ」とか「グェェ」とか聞こえてたけど、あれシズクだったにゃんね。ごめんにゃ、気にする余裕なかったにゃ。」
「分身とはいえ、苦しいんだからな…まぁあれではしょうがないが。」
暫くしてある程度回復すると、シズクは3人の水の精霊に目を向け、
「さてお前たち、この川の主、水神竜ミラカナチを呼んできてくれるか?お前たちならできるだろ?」
と言った。
「ほへっ?母上に用事だったの?」
「全然そんな風に見えなかったのだが。」
「そんならそうと、言ってくれりゃ良かったのに。」
「やっぱり子供だったか…何度か話しかけたんだがな…」
ジト目でシズクが呟くと
「いや~ハハハ。それじゃあ、ちょっと待っててね〜」
とごまかして逃げるように3人の精霊は川深くに潜っていった。
半刻ほど経ち、ライルもどうにか復帰した頃、周りの音という音が全て消え、水の粘度が上がったような重厚な雰囲気が辺りに満ちてきた。そして底からゆっくりと大きな影が浮かび上がってきた。
それは、頭に金色に輝く立派な角を2本持ち、上半身が美しい女性で、下半身が龍の身体となった巨大なものであった。
そしてその姿は、見る者が思わず膝をつき、ジロリと見られると平伏せざる負えないような威厳に満ちていた。
「お前たちか妾を呼んだのは」
重厚な声で水神竜ミラカナチが問いかけてきた。それに対し
「そうだ。泉の妖精である我が直々に…」
とシズクが答えようとすると、
「…シズクではないか、誰が貴様の望みなど聞くか。」
とシズクを見た水神竜は一気に機嫌が悪くなった。
(雲行きが怪しいにゃ)
ユイナとライルがやっぱり…と思いながらシズクにジト目を向ける中、
シズクはちょっと焦りながら
「いや、我と汝の仲ではないか。」
と続けるが…
「誰のせいでこの場から動けなくなったと思ってるんだ?」
と水神竜ミラカナチは低く底から響くような声で、半眼になりながらシズクを睨みつけた。
「…そうかもしれんが、それで半神半霊になったんだから、悪いことばっかりでは…」
「疾く失せよ!!!」
水神竜がうるさいとばかりに大音声を発すると、それと同時にゴォオオオーーー!と圧力を生じ、ライル達が入ってる水球がグルグルと回転した!
「…と言いたいところだが…。
シズク以外は無垢な者たちであるし、妾の子供たちが世話になったようだからの。
あの子らがここまで楽しそうなのは、なかなかない事ゆえ、特別に慮ってやろう。」
吠えてスッキリしたのか、優しい声で言ってくる水神竜であった。
「ぐぇえぇぇ…っ」
「……。せっかく妾が手を貸してやろうと言っておるのに何をしておる?」
「そっちが転がしたにゃ…。」
「ハハハ、それはすまなんだ。ちょっと力が入りすぎたか。願い事を云うが良い。」
改めてお願いを説明すると、
「なるほど。それならばあの子らに引き続き、連れて行って貰えば良かろう。」
「え、しかしお手を煩わせるのは悪いかと。」
と、ここに来る時のことを思い出し、ちょっと腰が引けた感じでライルが言うと
「フハハハ、よっぽど遊ばれたとみえる。だがまぁ、そう心配するな。今度は水量も多く、深いため、そう激しくはならんだろうよ。
それに、あの子らであれば、この川に住む者は手出しせぬが、他の者が運んだ場合どうなるか知らんぞ。この川にはそれなりの強さの者が多々いるのでな。
あと、あの子らはお主らを気に入ってるみたいでな、仲良くしてやってくれ。」
「少し激しかったので、躊躇してしまいました、すいません。こちらこそよろしくお願いします。」
話がついたのを感じ、3人が寄ってきたので、改めて挨拶を交わすライル達。
「またよろしくにゃ。ユイナって言うにゃ。楽しくやっていこうにゃ。できれば穏便にしてくれると助かるにゃ〜。」
「僕はライルです。こちらがシズクで、こちらが光の精霊のキラです。風の精霊はカマチ。お手柔らかにお願いしますね。」
ユイナとライルがちょっぴり引きつった笑顔で自己紹介すると、
「私がミリで、研究肌のがミル、1番激しいのが…痛っ!」
「誰が激しいって?あたいがミレだよ。」
「そういうとこなんだけどー。とにかくヨロシクね。」
と水神竜の娘3姉妹も名乗って手を差し出してくれ、握手をしたのだった。
こうしてライル達は何とか無事に?本流の川下り手段と新たな仲間を手にし、川下りを開始する準備が整えることができた。
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