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洞窟での出会いと精霊

 持てる量の限界までジャイアントボアの肉を詰め込んだユイナ達が、索敵をしながら進んでいると、前方に人型の反応が現れた。

「これは…オークかな?」

 どうやらこちらの方向に向かって来ているようである。

「こちらに来そうだけど…」

「オーク肉も美味しいらしいけど、これ以上持てないから、避けて行くにゃ。」

 ユイナらしい回答を貰ったので、無駄な戦闘は避け、オークが行き過ぎるのを辛抱強く待った。

「あぁ〜私のボア肉の残りがアイツに取られちゃうにゃ。しょうがないけど何かムカつくにゃ。」

「今オーク認識したから、今度倒したかったら探せるから…」

 ユイナを宥めながら、先へ進むライルであった。



「地図によるとここら辺が入口のはずたけど…」

森に面する山のふもとで地図を広げるライル。

「ゴツゴツした岩しかないよなぁ…とりあえずブレスレットを着けてみるか。」

 ライルがブレスレットを着けると、岩の一部がゴゴゴッと奥に引っ込みだした!呆気に取られて見ていると、人1人がしゃがみながら通れる隙間ができていた。

「ふぇ〜…凄いにゃ…」

 注意しながら隙間を通り抜けたその先には、ほのかに光るものが2つただよっており、立って歩くのに十分な高さのある通路が続いていた。


 2人の歩きに合わせて2つのほのかな明かりが漂いながら付いてくる。不思議だが、嫌な感じは全くしなかった。

 そのまま30mぐらい進むと天井が高くなり、厳かな雰囲気の大きな両開きの門扉が行く手を遮っていた。

あかしを見せよ』

 何処からか重く身体の芯に響くような声が聞こえた。

 ライルは(これしかないけど)と思いながらブレスレットを掲げると、重厚な音を立てながら扉が開いていった。

 扉の中には大空間が広がっており、先程と同じほのかな光が数多く漂って、内部全体を照らしていた。そして空間の中央には澄んだ水を湛えた地底湖があり、湖面が光を反射していた。その上下に広がる光の幻想的な様子に

「綺麗だにゃ〜」

とライルとユイナは感動してしばらく立ち尽くしていた。

 その後湖に近づくと、湖の中央まで格式を感じる桟橋が伸びていた。


 桟橋の近くまで行くとライルは、

「僕は、桟橋の先まで行ってみるよ」

 と言い、桟橋を渡り始めた。

 ユイナが立ち止まっていると、ここまで付いてきた光が、ユイナの目の前をグルッと回り、まるで誘うかのように湖岸を右に進んでいった。

「うん?付いて行ってみるにゃ。」

 ユイナは光の誘導に従い湖岸を歩き出した。


 ライルが桟橋の中央まで進むとブレスレットが輝きだし、地底湖から柔らかな光を放つ羽を背に付けた小さな女の子が、目を閉じた状態で現れた。

 ライルがびっくりして見ていると、

「Zzz~。Zzz~。」

と寝息が聞こえてきた。

「……え〜っと、…寝てる?」

「Zz〜、はっ!!」

女の子が目を見開いた。


「…」

「…」

思わず見つめ合ったあと、ライルが

「寝てました?…」

と聞くと、女の子は目をそらしてから、

「フハハッ、何の事かな?

 しかしなんと久しぶり…われに繋がりを求めてきた人間は、カイルとミチル以来20年ぶりくらいよな。なんじの名を申してみよ。」

と言ってきた。それを聞いたライルは(父さんと母さんの名前だ!)と驚き興奮しながら、

「はい!ライルと言います。」

と勢い込んで答えた。すると女の子は

「ではライルよ、よくぞ参った。我はこの泉の妖精シズクである。汝に精霊と繋がる力を授けよう。召喚力と使役力の調整を望むか?」

と聞いてきたのだった。


全く意味が分からなかったライルは

「???…え!?どうゆうことでしょうか?」

と困惑して聞いていた。するとシズクと名乗った泉の妖精は、眉をピクッと動かして怪訝そうな表情をして

「我が汝の力を解放することにより、汝らの言うところの精霊魔法を使う力が得られるのだが…。

 汝からはカイルとミチルとの命脈を感じるが、二人から聞いておらぬのか?」

と聞いてきた。

「えぇ、父と母は既に他界しておりますので…」

ライルがそう答えると、シズクは驚き神妙な顔つきで、

「誠か!その若さでは苦労したであろう。知らぬとはいえすまぬことを聞いた。ではカイルとミチルが精霊魔法を操る精霊使いであったことも知らぬのか。」

と驚きの情報を伝えてきた。

「精霊使い!?…知りませんでした。」

全く知らなかった両親の話に絶句するライルであった。


「そうか。では精霊魔法については知っておるか?」

「すいません。ほとんど知りません…」

「なんたること…いやここ50年くらいほとんどの泉で授与儀式が行われていないことを考えると当然か…

 では我が直々に教えてやろう。」


そう言うとシズクは改まって丁寧に説明しだした。

「精霊魔法とは、まず精霊を召喚することから始まる。精霊に呼びかけ一時的に現界してもらうのだ。

 呼びかける力は召喚力と呼ばれ、汝らの魔力量に大きく影響される。

 一概に精霊と言っても力の強さによってランクがあり、召喚力が小さければ、高ランクの精霊には声も届かぬ。

 召喚力が大きくなれば、召喚に応じて貰いやすくなると言う訳だ。」

「次に、現界した精霊に魔法を行使して貰って初めて精霊魔法になる訳だが、

 精霊に望み通りの魔法を使って貰うには、命令に従って貰う使役力が必要となる。

 使役力は汝らの制御力に影響される。

 使役力が高ければ高ランクの精霊も素直に力を貸してくれるであろう。

 逆に使役力が小さければ、命令を無視されるだけでなく、場合によっては精霊に歯向かわれて召喚者が命を落とす可能性もある。」

「術者が消えれば限界する魔力を失い、精霊も間もなく精霊界に帰ってしまうがな。」

「つまり、精霊魔法とは、召喚と使役という2段階の工程を踏む必要がある。

 それぞれに成否判定があるため、術式のみの元素魔法よりも手間がかかるし、思った結果が出ない場合も多い。精霊も気まぐれだしな。

 しかし決められた術式の型があり威力もある程度の範囲に制限される元素魔法と比較して、生身の精霊が扱う魔法は精霊のイメージがそのまま魔法として現れるので、自由度が高く、高ランクの精霊は威力も凄まじいものがある。」


「どうだ?大体理解できたか?」

「はい。ありがとうございます。」

シズクがライルが理解できたかを確認したあと、

「では理解した上で、精霊との絆を求めるか?」

とライルに意思を尋ねると、ライルは

「はい!」

と勢い良く答えたのだった。


ライルの答えを聞いたシズクが「うむっ」と微笑んで頷き、

「良し、ならば精霊とつながる力を解放するが、通常は召喚力と使役力が大体同じレベルになるように調整を行う。成功率を上げるため使役力を高めにする者もいたがな。」

と言った後、羽ばたいて近寄ってきてライルの頭に手を触れた。そして目を閉じて集中すると、

「さてライルよ、汝の才能がどれくらいかというと...

 お主、召喚力の才能は素晴らしいが、使役力の才能は皆無だな…

 召喚力はAランクに声が届きそうなのに、使役力は精霊のつぼみにも命令できない感じであるぞ…

 どうする?命令を聞いてもらえないのに召喚してもしょうがないから、両方を同じレベルまで揃えようとすると…

 使役の才能が無さ過ぎて、使役力を上げるのに莫大なエネルギーを使うから、Eランク下手するとFランクの精霊しか扱えないな…う~む」

と言って、目を開けてどうしたものかと悩んでいる様子だった。

ライルはそれを聞いて自分らしさに苦笑しつつ、自分のありのままを受け入れようと心に決め、シズクに提案した。

「それじゃあ調整なしでも良いですか?」

「それは構わぬが、精霊たちは全く言う事を聞いてくれないと思うぞ…」

「それでも良いです。どうせなら色んな精霊に会ってみたいですし。」

「そうか汝が望むのであれば是非もなし。ならば力を授けよう!」


 シズクが両手を合わせて祈るような姿を取ると、シズクから温かな光が漏れ出し、ライルに吸い込まれていった。

 ライルは周りに漂っていた光が精霊であり、意思の疎通ができることが理解できた。シズクはライルが精霊を感じ取っていることを見て取り、

「この泉は半分精霊界に繋がっているようなものだから。光の精霊も半分現界しており、目に見えるのだよ。

 一度呼びかけを試してみると良い。汝の名前を伝え、力を貸してとお願いするのだ。」

と言った。


 ライルが近寄ってきた光に意識を向け

「えーとライルです.力を貸して頂けないでしょうか?」

と呼びかけると

「オイラに何か用かい?」

と光が答えて、光るボールに羽が生えたような姿になった。

「おぉ~!これが本来の姿?」

「そうだ、格好いいだろ?」

胸を張るような雰囲気の光の精霊に、ライルが目を輝かせてワクワクしながら

「うん。じゃあ今より明るく光ってみてもらえる?」

と言うと、

「え、嫌だ。疲れるし。じゃあね〜」

と繋がりを切り元の姿に戻りながら光の精霊は去っていった。あまりのことにライルは目が点になり

「ワッハッハッ。使役力ほぼゼロだからなぁ〜」

シズクはウケまくっていた。


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