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魔術士?ライル

初めての投稿なので読みにくいかもしれませんが、よろしくお願いします。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 僕は、召喚した土の精霊が魔法を駆使して土で造りあげた巨大な腕でガシッと捕まえられると、目的地に向かって思い切り投げ飛ばされた!


ブンッ!! ビュォオオオーーーー!!


眼下を高速で森が過ぎ去って行き、


「ぎゃあ~~~~!!!死ぬ~~!!!」


と叫ぶ僕は、ついこの間まで、自分がこんなことになるなんて、全く想像していなかった。

併走する風の精霊が爆笑してるし!


同じように飛ばされたパートナーの獣人の子もにゃにゃあ~~!って叫んでいるようだった。


精霊さん、さすがにこの移動手段は雑すぎるって!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


~5日前~

 王都に続く街道沿いにデントナと呼ばれる街があり、立地の良さから多くの人が行き交い、発展していた。今は夕刻であるため街には光の魔道具の明りが灯り、商店や食堂、酒場に仕事を終えた住人や冒険者が集まり賑わっていた。そして、そんな街のレンガ造りの建物が建ち並ぶ一角に、国内で1,2を争う魔術学院があった。



 今、その魔術学院の教授室に、身長160cmくらいの黒髪の華奢な男の子が呼ばれていた。


 その黒髪の少年の前には向かい合うように、スラッとした長身に仕立ての良いローブを身につけた40才手前ぐらいの銀髪の男性がいた。

その男性は晴れやかな顔で、


「ライル君、卒業おめでとう!やっとだな。」


と目の前の少年に向けて声をかけた。


「シン教授ありがとうございます!……ホントにご迷惑をおかけしました。卒業できたのは教授のおかげです。ありがとうございました!」


 ライルと呼ばれた少年は、目の下にクマのある顔で声をかけてくれた男性に頭を下げて答えていた。


 この世界では百年ほど前に魔力を貯めるクリスタルが開発されてから、クリスタルを燃料とした火水風土光闇の6元素の術式を印した魔道具による魔法が、誰でも使える身近で便利なものとなっていた。そこで貴族や商人など中流以上の子供たちは、6元素魔法と魔道具作りの基礎を学ぶ魔術学院に通うのが一般的になっていた。ここで得た知識で便利な魔道具でも開発できれば、一攫千金も夢ではないのである。


 ライルは16才となり、その魔術学院を卒業したのだった。普通は夢あふれるところである。しかし、ライルの表情はとてもそんな風には見えなかった。


「まぁ卒業式であんな事になったのは初めてだからな。学長の慌てぶりは面白かったが…。」


シン教授は卒業式の様子を思い出して苦笑していた。



~~ここから回想~~

 そもそもライルは3ヶ月ほど前に行われた卒業式で同級生と共に卒業するはずであった。


 その卒業式は魔術学院にある下部が六角形で上部がドームとなったレンガ造りの伝統ある講堂で行われた。

 講堂内部は魔術学院の技術のすいを結集した魔道具により、煌びやかな光の演出と連動した深みのある音色に彩られ、幻想的な空間が構築されていた。

 卒業生とその関係者、有名な魔術学院の卒業式を見ようと列席した有力者などが感動し感嘆の声を挙げた演出のあと、卒業生が一人一人学長に呼ばれ、学長から卒業証書を授与されていた。

 卒業証書には魔術学院特有の細工があり、卒業生が魔力を込めると、それぞれの学生の魔力の特徴に応じた色に光り輝くという特徴があった。

 様々な色と光り方に歓声が上がる中、卒業生が誇らしげに証書を受け取っていき、遂にライルの番となった。


「ライル、前へ!」

「はい!」


緊張した面持ちのライルが壇上に上がると学長が

「さぁ、この証書に魔力を込めるが良い!」

と言って、厚手の紙を少年の前に両手で広げた。


ライルが力を込めると、直ぐに「あっ!」と息を飲んだ。


ボフッ!!!


一瞬にして学長が持っていた証書が燃え上がり、

「うあっちーーーーっ!」

炎は学長の立派なひげと数少ない髪に燃え移っていた……。


 学長の後ろに他の教授と共に並んでいたシン教授が即座に『コールド!』と唱えて消化したのだが、学長は炎により髭と髪が焦げてちじれ、コールドの魔法により一張羅がボロボロになっていた。


 ライルが(うっわ~~~!学長がずたぼろのオークみたいになった;;)と思いながら

「大丈夫ですか……?」

と恐る恐る確認すると、学長が顔を真っ赤にして、

「ライル!お主の卒業は儂が認めるまで延期とする!」

と宣言したため、ライルの卒業は取り消されたのだった。


 結局その後、シン教授を含めた周りのとりなしにより、ライルがクリスタルを介さずに直接魔力を込めても暴発しないようなファイヤボールの魔道具(ファイヤボールの魔道具は一般的に暴発し易い)を作成できれば卒業を認めるという話に何とか落ち着いた。


 だが、その課題の達成は困難を極めた。

 ライルは魔力量は桁違いに多いのだが、制御力が皆無であった。また不器用でもあった。

 元々魔力を貯めることができるこの時代では魔力量は重視されず、魔道具造りには緻密な制御力と正確性が何よりも重視されるので、ライルは学院で落ちこぼれであった。それでも余りある魔力をクリスタルに込めてみんなの実験頻度を増やし、開発が円滑に進むように手助けをするなど、役には立っていたのだが、自分一人で作成するとなると中々思うように進まなかった。


 初めの内は魔力を込めた分だけ大きなファイヤボールとなるようにして暴発を避けようとしたが、放とうとして意識を込めてもファイヤボールが大きくなり続ける(危うくまた立ち会っていた学長の髭と髪が犠牲になるところ(笑)を、シン教授がライルごと凍らす勢いで止めた)など上手くいかなかった。結局3ヶ月ほど試行錯誤した結果、一定以上の魔力が込められると外に漏れ出すという逆転の発想(魔力を無駄にする機構)を組み込んで何とか成功したのだった。ちなみに暴発を防ぐため直ぐに漏れ出すので、ファイヤボールはかなり小さいものであった。


~~回想終わり~~



「しかし卒業証書のキャパをオーバーさせて燃やしたのは見ものだったな……。」

「もう忘れて下さい」


遠い目をするライルに対し、

「ハハッ。しばらく語り継がれそうではあるが…。それよりライル君、これからどうするのかね?」

と苦笑しながらシン教授が問いかけると、


「えーと、卒業したら魔力をクリスタルに込める作業をしないかと誘ってくれていた所は、この件で話がなくなったので今は何も決まっていません。……とりあえずできることを探そうと思います。」

とライルはノープランであることを告げたのだった。


それを聞いてシン教授は、

「私の下で助手でもするかい?」

とライルに言ってくれたが、

「アハハ...僕には無理ですよ。」

とライルは自分には務まらなく迷惑をかけることが分かっていたので、断ったのだった。


 シン教授は少し考え、「ふむっ」とうなずいた後、


「そうか、ライル君はまだ若く色々な可能性があるから、様々なことを見て、経験して、焦らずにやりたいことや適したことを見つけるのが良いのかもしれないね。……ただ、亡くなった君のご両親には大変世話になったから、困ったことがあったらいつでもきなさい。

それと、この箱は、ご両親から1人前になった時に渡すように頼まれていたものだから、今封印を解いて渡そう。

……体には十分気をつけるのだぞ。あと、寮の部屋はしばらく居ても大丈夫だからな。……何かあったら、いや何もなくてもたまには連絡するのだぞ。」


と言ってくれた。ライルはシン教授の心を込めた言葉をかみしめた後、


「はい。今までありがとうございました。シン教授もお元気で。」


と挨拶をして魔術学院を後にしたのだった。



・・・・・

「はぁ〜とりあえず卒業だぁ〜」


 ライルは魔術学院から寮の部屋に帰ってきて脱力していた。


「明日からどうしようかな〜。」


 ライルは先程のシン教授とのやり取りを思い出していた。


「教授はいい人だけど、さすがに学院には居場所ないし……これ以上迷惑かけられないし。」


 もともと仕事先の事故で亡くなる前に仕事の危険性を感じていた両親が、何かあったらとライルをよろしくと託していたのがシン教授であり、教授は天涯孤独となったライルを嫌な顔一つせず魔術学院に入れる形で育ててくれたのであった。


 う~んとうなりながら少し考えていたライルだったが、そんな直ぐに良い考えが浮かぶ訳もなく、

「とりあえず、父さん母さんの箱を開けてみるか!」


と問題を先送りして、気になっていた箱を開けることにした。



 ライルがしっかりとした少し重めの蓋を開けてみると、中には地図とブレスレットが入っていた。

「これは…地図?えーと、うわっ!?」


いきなり箱が光ったと思ったら、父さんと母さんの立体映像が浮かんでいた。


「ライル、

 これを見ているということは、立派に成長したのだな。おめでとう。シン君には感謝してもし足りないな。

 その姿を見ることが叶わなかったのは残念だが、勇姿が目に浮かぶようだ…

 うーん、ちょっと間が抜けてそうな気がする…

 イテッ母さん何をする!?」

「そんなコトないわよね〜カッコよくなってるって。ね!私達のライルだし!」


「あ〜分かった分かった。コホン…。

 さて、その地図の場所には、父さん母さんが育った村の者が、成人した時に儀式として訪れた洞窟がある。ブレスレットを付けて行くことで入ることができ、そこから帰ってくると1人前に認められる聖なる場所だ。」

「でもその村は今は無いし、母さんと父さんが一緒に行ったのが最後だから、20年位使われていないのよね〜」


「そうだな。興味があったら行ってみると良い。そこで何があるかは自分で確かめてくれ。

 あ、一人で行く必要はないぞ。信頼できる仲間を見つけるのも力の一つだからな。」

「詳しいことは言えないけど、きっと役に立つことがあるわ。あと私達のシン君みたいに、良い仲間は一生の宝になるから、焦らず良い人見つけなさいね〜」


「話足りないが時間がないので、ライル!健やかに幸せに暮らしていくことを願っている!」

「二人はいつも見守っているからね!」

「「良い人生を!!」」


その後にこやかに手を振る二人の姿はスゥーっと消えていった。



「…うわ〜、こんな仕掛けが、あるなんて…

 …お父さんお母さん、懐かしいな。ありがとう…グスッ…

 …これもう一回見れないかな?…無理か」


 箱を何度か開け閉めして諦めたライルは、地図を手にとった。


「えーと、この赤丸の所だよね。えー!魔の森の中じゃん!そんな奥じゃないけど一人じゃ絶対無理!

 どうしよっか。仲間か〜…当てはないなぁ。う〜ん、そうだ!明日冒険者ギルドにでも行ってみるかな」


 こうして、ライルは冒険者ギルドでの出会いに思いをはせ、不安と期待を感じながら明日に向けた準備を始め、次の日、新たな一歩を踏み出すことになるのだった。



注※この世界のモンスターは倒しても魔石にはなりません。


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