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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第3章 混迷の中原編 (オヤマ村周辺〜ミヴロ)
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第95話 開幕・小決闘トーナメント!

前回のあらすじ:いよいよ始まる富岳杯!果たしてアカネは強豪ひしめくトーナメントを勝ち進めるか……



「君たちィ!新世界に興味はあるかい?」



 ファンキーな着物の痩せた老人……金鹿馬北斎(カネシカマホクサイ)は壇上に上がるなり唐突にそう宣言した。


「ここに集まった少年少女たちよ!吾輩は君たちに問う!君たちの溢れんばかりの才能は大人たちが支配する腐り切ったこの国のために使うべきなのか?美しさを失ったこの世界で前途ある子供たちの希望に満ちた可能性は汚さずにおれるのか…………否!君たちの無垢なる才能は既存の世界を維持するためではなく、新世界を開くためにこそ使われるべきじゃ!天地開闢の偉業に必要な力なのじゃ!」



 一昔前の尖ったロックンローラーか怪しいセミナーの主催者しか言わなさそうな凄いセリフを恥ずかしげもなくまくしたてる。

 金鹿馬北斎はその見た目に反して、その発言はなんとも扇動的でエネルギッシュだ。御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)は仮にも国の軍隊なのよね?こんな青年革命家みたいな事を演説していいのかしら……?



「せ、先生……」


「吾輩はこの大会において、君たち若人のさらなる覚醒を願う!覚醒とは固定観念の打破であり、すなわちそれを可能にする六行の力の解放……」


「先生!ちょっと……」



 とても子供の玩具の大会とは思えない大演説を、彼を壇上に上げた本人である宝富(タカラトミ)会頭が止めに入る。



「む? なんじゃ? ここからが吾輩の演説の本番っ……て、おい何する!離すんじゃ!」



 司会の更井さんと会頭に引きずられながら金鹿は退場……



「ははは、皆さん。そのまましばしお待ちを……」



 何というか……内●裕也的なクレイジーお爺ちゃん。

 金鹿馬北斎を実際に見て感じた印象はそんな感じだ……


 あまりに狂人的な雰囲気に、所持しているというマガタマの真偽やこの大会を通して何かを画策してるか等の真意は読み取れなかった。うーん、やっぱり優勝して金鹿が持つというマガタマを直に拝んでみるしかなさそうね。ま、わたしが見ても真偽の判別が出来るか分かんないけど…………て、んん?



「あっ、あれは……!」



 船のデッキから北側の夕焼け空に煙が立ち昇るのが見えた。


 ガンダブロウさんからの連絡の狼煙……先程よりも随分とこの船に近い場所だ!



「……えー、皆さん!大変長らくお待たせ致しました!時間になりましたので、いよいよこのミヴロ玩具祭の最大の目玉!最強の小懸主(コケマスター)を決める小決闘(コケットー)の頂上決戦……【富岳杯】を始めて参りたいと思います!」


 

 金鹿馬北斎を引っ込めさせて戻ってきた更井さんは気を取り直してメインイベント開幕を宣言すると、観客たちのボルテージは一斉に上がり、歓声が一挙に会場を埋め尽くした。



「それでは第一試合!参加選手は闘技場の所定の位置について下さい!」



 ……狼煙の位置は目測で数百メートル以内。この位置からだと見えないけど甲板の端まで行けば具体的な場所まで分かるだろう。ガンダブロウさんがここまで戻ってきているという事は既に戦闘は終わったという事?


 それとも想定外の危機が迫っていて、それを知らせに戻ってきたとか?


 あ、そういえば1回目の狼煙の後にサシコちゃんとは合流できたのかな?サシコちゃんはサシコちゃんで他に役目があったけど、そっちの方は首尾よく出来たのか…………うーん、色々気になるけども今はタイミングが悪い。


 

「おい、女」



 何故なら……



「何をボーッとしている?第一試合は俺とお前の試合だ。さっさと開始位置につけ」



 開幕カードはわたしの試合なのだ。

 今は目の前の試合に集中しなければならない。



「……今行くよ」



 対戦相手の少年──おそらく年下だが、非常に身体が大きく190センチ以上は身長がある──の乱暴な問いかけに軽く応じ、闘技場の反対側開始位置へと向かう。わたしのそっけない態度が気に入らなかったのか、少年はすれ違いざまにわざと聞こえるように悪態をついた。



「へっ、もうボケてるのか?オバサン」



 ……あ!?


 い、今なんつった、このガキ……!?


 わ、わ、わたしに対して……この、わたしに対してオ、オ、オバ…………


 確かにこの選手たちの中では歳は上だけど、わたしはまだ17歳!17歳!!17歳よ!!!


 それを、このガキ、こともあろーに……


 …………


 ……いや、怒るな。落ち着け。心の中とはいえ口調が乱れているわ。子供の言う事にいちいち頭に来ていても仕方ない。ここは()()()()として余裕の振る舞いを……



「早く行けやババア」



 冷静に冷静に…………



「ブスが。チンタラしやがってよ」



 ………………



「これだから低脳女は……」



 ……あ、やっぱムリ。駄目だ。



「そこの君!」



「あ?」



「馬車の手配をしときなよ!」



「はぁ? 馬車?」



「試合の後、すぐに帰るんでしょう?」



 わたしが煽り返すと少年はプルプルと怒りに顔を引きつらせる。



「……ッ!女が……!」



 わたしは開始線に立つとベッと舌を出してみせる。



「……トンパチがッ。()()にしてやるぜ」



「こっちこそ、デンシャミチで仕留めてあげるわよ!」



「これより第一試合・マツシタ・アカネ 対 駝場文鳩(ダバフバト)の試合を始めます!」



 司会兼審判の更井さんが声を上げると、わたしとダバフバトはお互いに向き合い、小懸騎士(コケナイト)を構える。



「両者、準備はいいですね? それでは、待ったなし! 小決闘(コケット)発揮陽(はきよう)〜…………(ゴー)!!!!」


 

どうでもいい雑記


トンパチ・・・相撲用語で勘の悪い人。頭の悪い人。

がい(害)にする・・・相撲用語でボコボコにする。

デンシャミチ(電車道)・・・相撲用語で土俵の外まで一直線に押し出される事。つまり瞬殺。

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