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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第3章 混迷の中原編 (オヤマ村周辺〜ミヴロ)
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第94話 開会式!

前回のあらすじ:富岳杯控室にてアカネは謎のオッサンにからまれていた。


 ーー 富  岳  杯  組  合  せ  表 ーー



松  下(マツシタ)    茜 (アカネ)─┐

           ├─┐

駝  馬(ダバ)  文  鳩(フバト)─┘ │

             ├─┐

             │ │

甲 斐 田(カイダ)  震 源(シンゲン)───┘ │ 

               ├──┐

               │  │

果 東(カトウ)  毎 里 男(マリオ)─┐   │  │

           ├───┘  │

八 戸(ハチノヘ)  八 十 八(ヤソハチ)─┘      │

                  │

                  ├── ・・・

                  │

平 南 土(ヘナンド)  塔 令(トウレイ)─┐      │ 

           ├───┐  │

難 波(ナンバ)  食 倒 斎(クイトウサイ)─┘   │  │

               │  │

               ├──┘

               │   

男  鹿(オガ)  鬼  郎(オニロウ)─┐   │

           ├───┘

村  上(ムラカミ)  尾  道(オノミチ)─┘ 



      ・

      ・

      ・


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 …………強豪と当たりまくるじゃん、わたし!


 

「はははっ! ご愁傷様! とんだくじ運だな! マツシタ・アカネ!」



 トーナメント表を見た謎のオジサン・津久田玄場(ツクダクロバ)はわたしが自分が優勝候補に上げた選手たちがひしめく山に入っているのを見てあからさまに笑ってみせた。



「優勝候補が固まった山に入れられるとはな……ククク。どうやらこの様子じゃ、反対の山の俺と当たることはなさそうだ」



 ……は?

 俺と当たる……て?


 え、待って、ちょっと嘘でしょ……と思い、トーナメントの反対側の山も確認すると…… 


 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


   ┌─津 久 田(ツクダ)  玄 場(クロバ)

  ─┤

   └─前 田(マエダ)  加 賀 王(カガオ)


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 名前載ってるゥー!

 このオジサン、選手だったのぉ!?



「わっはっは! まあ、そう気を落とすなっ! 彼らが相手じゃ万に一つも勝ち目はないだろうが奇跡が起こる可能性だって0じゃないさ! まっ! 俺の教えてやった情報を参考にして、せいぜい頑張りたまえ……では!」



 津久田玄場はひとしきり嫌味を言うと、手をひらひらと振りながら去っていった。


 おお……わたしも他の選手の子たちに比べれば大概年上だけど、あの人は一体いくつなのだろう。どう若く見積もっても三十は超えてそうだけど……


 


「さーて! 皆さん自分の対戦相手の確認は済みましたかね?」



 更井さんはそう言うと入口とは別の場所にある扉を開け、選手たちをそちらに誘導する。



「それでは、そろそろ開会式のお時間です。会場の方へ移動をお願いします」



 時刻はもうすぐ17時……そうか、試合の前に選手の顔見せも兼ねて一旦会場に全員集合するのね。面倒だけども、開会式には御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)の金鹿なんとかも出てくるはずだ。金鹿がもしも船の外で暗躍していて、ガンダブロウさんたちと戦いになっていたのなら何かしらリアクションが見てとれるかもしれない。また、所持しているというマガタマの真偽やそもそもこの大会を何故開いたのかなど、探りたい事はたくさんある。行動の中に何かヒントがあるかもしれないから、注意深く観察しなくちゃね。



「よし、行こう!」



 わたしは誘導に従って他の参加選手たちと整列すると、会場へと繋がるゲートに歩きだした。



≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶

∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦

≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶




「おおっ、出てきたぞ!」



 選手たちが入場してきた事に観客が気づくと、地鳴りのような凄まじい歓声が船上にこだまする。


 巨大船のデッキの上に特設された小決闘用の闘技場と、その周りを囲うように半すり鉢上設置された数千席はあろうかという観客席。白色電球のような明るさの異様な篝火に照らされたそこは、まるで野球のスタジアムのようだった。


 村外れの神社でやった予選とは比べ物にならない程の規模……賞金の額といい、巨大な船の上で開催する豪華なロケーションといい、ホントよくやるわね……



「アカネさーん!」



 例によってお面をした観客たちの中からわたしの名を呼ぶ声が聞こえる。


 見るとリングサイド近くの最前席あたりからお面を頭に乗せてこちらに手を振る少年たちの姿が見えた……丙一(ヘイイチ)乙ニ(オツジ)甲三(コウゾウ)の3人だ。



「おー! みんな観に来てくれたのー!」



「あたり前にですよ! アカネさんはウチの地区の代表なんですからね!」



 そうだ……この【富岳杯】に参加したのはマガタマの真偽を見定める為という個人的な事情もあるが、彼らの思いを託されたからでもあった。


 わたしはあくまで彼らの地域の代表選手。彼らの見てる手前、恥ずかしい試合は出来ない。ガンダブロウさんたちの方も気になるけど、戦闘でガンダブロウさんが負けるとは思えないし、()()()()()()()()()もある……何かあればまた連絡の狼煙を上げてくれるてはずになっているし、わたしは今はこっちに集中だ!



「アカネさん! 絶対優勝して下さいよ!」



 わたしは彼らの声援にグッとサムズアップしてみせる。



「……えー、皆さんご静粛に!」



 いつの間にやら壇上に移動した更井さんが声を張り上げる。

 屋外の会場だというのに声は不思議と反響し、よく聞こえる……マイクやスピーカーはこの世界には無いと思うけど、何か仕掛けでもあるのだろうか。


「さて、参加選手たちが出揃いましたところで、このミヴロ玩具祭の主催者にして小懸騎士(コケナイト)の販売製造を行う板岱屋商会の代表、宝富板之岱(タカラトミバンノダイ)会頭から開会のご挨拶がございます……それでは、会頭どうぞ!」



 更井さんがそう言うと壇上に小柄ででっぷりとした壮年男性が表れ、開会のスピーチを始めた。




「今ご紹介に預かりました板岱屋商会、会頭を務めます宝富板之岱(タカラトミバンノダイ)です。えー、この度は天気にも恵まれ、このような素晴らしい大会を無事開く事ができまして、誠に感無量の思いであります。まずは、この大会の開催にご協力頂いた町の方々にこの場を借りて感謝を……」 


 

 うわっ!

 これ長いやつだ!校長先生の朝礼的な!


 わたしはこういうの聞きながら待つの凄く苦手なのに……



「……えー、思い返せば30年前。このミヴロで板岱屋商店は小さな雑貨屋として始まりました。あの時は家内と私、たった二人の従業員しかおりませんでしたが、今は皆さんのご愛顧もございまして、全国津々浦々に支店を持たせて頂くことになり、昨年にはその数なんと百を越えました。従業員の人数もあの頃とは比べられないほど……クドクド」



 もー、どうして偉い人の話ってこんなに長いのかなー。

 いや、大会にこれだけ巨額を投資してるのだし、主催者としての自負もあるのは分かるのだけれど、どれだけ話したって観客や周りの選手たちは誰も聞いてないでしょーに……と、ふと会場に整列した他の選手たちを眺めてみると…… 



「……くそっ! 成り上り者が偉そうにしやがって!」



 何やら呪詛のような言葉をブツブツと呟いている者がいるのが目に入った。ん?あの人って……



「ちょっとばかし自分の店の玩具が売れたからっていい気になるなよ。お前のようなポッと出の天下などそうそう長く続くはずがないのだからな……」



 呟いているのはあの説明オジサン津久田玄場(ツクダクロバ)だ。

 壇上でスピーチすふ板岱屋商会の会頭を凄まじい剣幕でにらみつけている。


 ええ……?

 確かに話は長くてくどいけど、そこまで悪く言うほどか……



「偉いのはお前じゃなく玩具を作った技術者たちだろ……自分は帝にゴマするしか能がないくせして、それをさも自分の功績みたいに語りやがってクソが……ブツブツ」



 うわ……変な人だと思ってはいたけど、完全にヤバイオジサンじゃん、この人。わたし、こんなヤツと話しちゃってたのか。今後は近寄らんとこう。



「……えー、であるからして、昨今の若者たちの玩具文化への我が商会の貢献は…」


「会頭。そろそろ、次に移らないと時間が……」



 終わりの見えない会頭の挨拶を更井さんが割って入って止める。ナイスインターセプト。



「む? おお、そうか。それでは最後に、今大会開催に関わる私以上の功労者を一人ご紹介して挨拶を締めくくりましょう……今大会の発案者にして小懸騎士(コケナイト)の共同開発者、金鹿馬北斎(カネシカマホクサイ)先生です!」



 むっ!御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)

 ここで出てくるか……!



「それでは先生、壇上へどうぞ!」





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