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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第2章 北方の旅路編 (ツガルンゲン~アイズサンドリア~キヌガー〜ウィツェロピア)
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第65話 風、戻り来て!

前回のあらすじ:ウィツェロピアに着いた一行は反統一派の弾圧に出くわし、ヒデヨが憲兵と対峙!そして、憲兵に指示を行う大男がマントを脱ぎ捨て……



「見呼黒子!」



 マントの下から出てきたのは金属製の巨大な四肢と不気味な目玉模様が描かれた顔、そして胸の鉄板には「伍」の文字……

 大男の正体は無線傀儡であった!野次馬たちもその面妖な姿に驚きざわついた。



「こいつは……紅鶴御殿を攻撃していたやつ!」



 ヒデヨちゃんもヤツの正体に気づいたようだな。



「それは人形違い! あれは"肆號さん"、私は見ての通り"伍號"です! 同じ見呼黒子でも番号一つ違いは大きな違いですよ!ほっほっほ!」



 能面法師(ノウメンホウシ)の作った意思を持つ人形……今までに見た個体は御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)に随行しており、二度アカネ殿に破壊されている。しかし、まさかこんな形で遭遇してしまうとは……




「そんなのは知った事か!何故お前がこんなところにいる!」


「ほほほ! これは異なことを! 私は御庭番である能面法師様の傀儡人形! 帝に仇なす不忠の輩を取り締まるのが本来の使命でして、その使命を遂行している事に何かおかしな点がありましょうか?」



 奴らは他の人形や能面法師自身と見聞きした情報を共有しているらしかった。つまり、俺たちがここにいる事が奴に見られれば、すぐさま追っ手を差し向けられるだろう。ヒデヨちゃんには悪いが、俺たちはこのまま人混みにいて、彼女が一人でやつを倒してくれるとありがたいが……



「むしろ貴方こそ何故ここにいるんです?紅鶴御殿の近衛兵さん?」



「うっ…………そ、それは……」



「近衛兵は通常紅鶴御殿を離れる事はないはずですが…………ふっふっふ!どうやら色々と聞かなければならない事が多いようです……ねッ!!」



 黒子"伍號"は体と不釣り合いの巨大な腕部を振りかぶり、ヒデヨちゃんに向かって突進した!



「くっ……!」



 ヒデヨちゃんは背後に飛び退き、黒子の文字通りの鉄拳攻撃を回避する。空振りした黒子の攻撃は石畳を激しく叩き、四方に破片が飛び散った。



「ほっほっほ! かわしましたか! しかし、我が"剛力駆動(ごうりきくどう)"の力は…………」



 黒子が両手を床に穿つと、六畳ほどの一枚板の石畳をひっぺがし、高々と持ち上げてみせた。



「このような事も出来るのです!」



 おそらくは三百貫(約1.1t)を越える重さを易々と持ち上げるとは!火行の"燃焼活性"に加え、優れたからくり機巧のおかげだろうが…………



「貴方がここに来たのは太刀守(たちのかみ)とマシタ・アカネに関係がありますね?」



「うっ!」



「図星ですか?で、あれば……」



 黒子は石畳を持上げたまま、野次馬に混じる俺たちの方を向いた。



「その辺りに潜んでいるのではないですかなァ!!」

「あっ……貴様、よせ!」



 黒子は石畳をこちらに放り投げた!



「うわあああ!!」



 野次馬たちから悲鳴が上がる!こいつ……関係ない人たちも巻き込む気か!



「やっぱり…………」


「むっ?」



 石畳は誰に当たる事なく結界に阻まれて砕け散った!

 結界を展開させたのはもちろん……



「やっぱり、貴方たちはサイテーね!」


「ほほほ、やはりおりましたか……マシタ・アカネさん!」



 アカネ殿。やはりあの様な卑劣な真似をされて黙ってはいられなかったか。



「やれやれ。まあ、こうなったら仕方がないな」



 俺も頭をかきつつ、黒子の前に出た。



「これはこれは、太刀守殿も……アイズサンドリア以降、行方が掴めませんでしたが、このウィツェロピアにいらっしゃったとはね……」



 まあ、遅かれ早かれウラヴァに近付けばどこかの時点では居場所はバレるだろう。なら、それが多少早まっても問題あるまい。こそこそ隠れて奴等の横暴を見過ごすよりは、こっちの方が性にも合っているし。



「おや?情報ではもう一人、十四、五の少女がいると聞いていましたが……」



 少女?ああ、サシコの事か……どうやら連中、サシコが紅鶴御殿に残った事は知らなかったようだな。奴等の主な標的は俺とアカネ殿のはずだが、いちいちサシコの事まで気にかけるとはマメな事だ。



「…………まあ、いいでしょう。いずれにしても貴方たちにはここで……」



「あたしなら、ここにいるよ!」



 むっ…………この声は!?



「…………かっ、風……?」



 背後から突然つむじ風が吹く。俺たちが風上に振り返るとそこにはマントを被った華奢な人物が人混みをかき分けこちらに向かって歩いてきていた。マントには紅鶴御殿の紋章が描かれている。ま、まさか……



「さて、と……」



 ふいに、マントの人物が視界から消えた──としか常人には見えぬほどの速度で俺たちの横をすり抜け、黒子へと一直線に飛び込んだ。



「は、(はや)い!!」



 そして、俺たちが黒子の方を向き直った時には既に決着はついていた。



「ば、バカな…………ナ、ナンといウ速度……なんトいうキレアジ……」



 俺たちがかろうじて目に出来たのは、黒子の体が斬撃によって五体を裂かれ、地面に崩れ落ちる姿だけであった。



「ま、まったく剣筋が見えなかった……」



 黒子の比較的近くで対峙していたヒデヨちゃんも、その動きに圧倒されたのか驚きを隠せないでいた。



「こ、コノちかラ…………ヤハリ……ぎょ、"玉視(ぎょくし)"……ノ…………」



 そう言って黒子人形は文字通り操り糸が切れたかのように動かなくなった。まさに瞬く間の出来事。これほどの早業は一流のサムライでもそう容易くは出来ないだろう。


 その妙技をまさか、()()()がやってのけるとは……



「皆さん…………本当にお久しぶりです」



 本当に驚いたぞ。たった1ヶ月の間にここまで腕を上げるとはな!



宮元住蔵子(ミヤモトスミサシコ)ただいま帰還しました!」




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