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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第2章 北方の旅路編 (ツガルンゲン~アイズサンドリア~キヌガー〜ウィツェロピア)
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第44話 急変!

前回のあらすじ:司教の間に呼ばれるガンダブロウとアカネ。アカネのいた世界の遺物が散乱するその部屋で、二人はマキと情報共有をする。



「ふぅん……帝を連れ戻すために異世界から転生ねぇ」


 司教の間にて、俺とアカネ殿はここに至るまでの経緯をマキに話した。アカネ殿が異界人であるという事はマキも既に気づいていた様だが、キリサキ・カイトの妹だという出自や地異徒の術を神に授けられたなどの話には、流石に目を丸くしていた。


「ええ、信じてもらえないかもしれませんが……」


 マキは俺とアカネ殿を交互に見る。識行使いの生まれ持った性か、マキは相手の言葉に偽りがないかをじっくり観察しているようであった。


「正直ちょっと信じられない話だけど…………二人とも私と違ってそんな荒唐無稽な嘘を真顔で話せる人間じゃあないわね。うん、私は貴方たちを信じるよ」


 マキはそう笑って言うと、懐から四角い金属質の手鏡のようなものを取り出す。


「アカネちゃん。これ何か分かるかしら?」


「あっ、ケータイ!」


「なるほど、ケータイって言うのね、これは……もしかしてだけど、帝が持っている八咫鏡(ヤタノカガミ)と同じような機能を持っているのかしら?」


「そうです、そうです! ()()の仲間みたいなものです!」


 アカネ殿が八咫鏡(ヤタノカガミ)もとい()()()を取り出し、マキに見せる。


「おおっ! アカネちゃんも八咫鏡(ヤタノカガミ)を持ってるのね!」


「ええ。それは少し古い型のもので、ガラケーと言われているものなんですが、概ねわたしのコレと似たような機能を持っています」


「ほうほう!それは一体どんな機能なの?」


「例えば離れた所にいる違うケータイを持った人と話せたり、画面の上で手紙を送ったり……あっ、使うためには電気の力を溜める必要があるんですが、その充電さえ出来れば通信手段として凄く便利なものなんですよ」


「通信の道具!な・る・ほ・ど・ね~!どうりでこれを触媒にすると識行の精度が上がる訳ね!」


 「触媒」とは術士が陰陽術を使うときの補助となる道具だ。道具の持つ本来の機能が使用する術の六行に、性質が近いほど高い増幅効果を発揮する。水行なら水瓶、火行なら提灯といった具合だ。マキは識行使いでも索敵や予知を得意とする術士だが、昨日の戦いでもこのケータイを触媒にその感知力を増幅させ、楼蘭堂の侵入を察知していたようである。


「帝の八咫鏡(ヤタノカガミ)とこのケータイの類似性に気づいた時、私はある仮説を立てた……!このケータイも【稜威の高鞆(イズノタカトモ)】もここにある他の物たちも、創世紀時代の遺物は異界人の世界のものなんじゃないかってね!どうやら、その仮説は正しかった事が証明されたみたいだね!」


 マキは心底嬉しそうに語る。学者や研究者という類いの生き物は、自身の仮説を証明した時に最大の喜びを感じると聞いた事があるが、このマキのはしゃぎようと言ったらない。


「ええ、ただ……わたしが元いた世界にあった物も確かにたくさんあるんですが、よく見ると私にも分からないものもいくつかあります。もしかしたら一部はわたしの世界の物じゃないのかもです」


 アカネ殿はいくつかの捻れた形状の板?のようなものを不思議そうに眺めながらマキの狂喜をさえぎって言った。


「ふんふん、分からないものもある、と。単純にアカネちゃんが知らないだけで同じ異界のものなのか、一部はこっちの世界のものなのか、もしくは……」


 狂喜から一転、今度はぶつぶつと呟きながら、マキは思考にふける。まったく……着いていけないぜ。


「えーと、吉備さん?」


 マキの独壇場に耐えかねてか、今度はアカネ殿が質問をする。


「ん? ああ、もっと砕けた感じ呼んでくれていいよ。マキ姉さんとかマッキーさんとか」


「あ、じゃあマキ姉さん。わたしも聞きたい事が凄くたくさんあるんですが」


 興味の赴くままに知的欲求を満たそうとする性質はアカネ殿もまた同じだ。そして、今回ばかりは俺もマキの話は気になる点が多い。


「そうだ、マキ。お前一人で納得してないで、俺たちにも分かるように話してくれ」


「えー、めどくさっ」


「面倒がるな!だいたい俺たちは悠長にお前の研究につきあってる時間はないんだ!早くキリサキカイトのいる首都にいかなければ……あ、そうだ!マガタマについても話しを聞かなければならないんだった!」


「ああ、そうだ。それ約束してたわね」


 マキが心底気だるそうに頭をかく。


「まあ、仕方ないか。約束は約束だし。じゃあ、えっと……まず何から話したらいいかな?」


 マキばかりが情報を得ているのでは、取引をしてまで戦った甲斐がないというものだ。交換条件の対価である楼蘭堂との戦いには貢献したのだから、マガタマの情報を聞かなければ割に合わぬ…………そうだ、アカネ殿の旅を完遂させるには解決せねばならぬ問題は山積みなのだ……考えるべき事はまだまだたくさんあるし…………俺の……責任は…………ますます……


「まず、そもそも創世紀時代の遺物を調査しているのも私の研究主題であるマガタマと深く関わりがあるからでね…………て、村雨くん大丈夫?」


「…………ん?ど、どうした? 続けて……くれ」


 疲労のせいか、朝から体調は優れなかったが…………くそっ!ここにきて頭がズキズキ締め付けるように痛むではないか……


「ガンダブロウさん!すごく顔色悪いですよ!」

 

「い、いや……アカネ殿、このくらい……心配には、及ば……」


 俺の意識はそこまで言ったところでパタリと途絶えた。



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