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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第4章 落日の荒野編(クリバス〜クギ〜)
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第246話 戦闘民族!(後編)

前回のあらすじ:紅孩童子VS膰䳝梵蔵!


※一人称視点 コジノ



「先代太刀守を殺したじゃと!?」



 先代太刀守・朝青編竜(アサオヘンリュウ)をこの男が殺した!



「ああ」



 ……って……いや、うーん。

 ちょっとそれは流石に……



「先代太刀守とは大きく出たわねー!」



 朝青編竜(アサオヘンリュウ)は全盛期のその伝説的な戦歴に比して晩年についてはよく分かっていない。衰えを感じて隠居したとも、自分とまともに戦える強さの敵がいなくなった事に絶望して自ら命を断ったとも言われているが、どれも定説とは言えず、彼の最期や墓の場所は明確に知る者はいないとされていた。


 確かに膰䳝(バッドリ)の強さは常軌を逸している。

 しかし、歴代最強とも謳われる朝青編竜(アサオヘンリュウ)を倒したと言われればにわかには信じられない。紅孩童子も浄江沙湖も真実とは受けとめていない様だ。

  

 

「……フェッフェッフェ! 面白い! 面白いぞぇ!」



 紅孩童子は高笑いを上げると、燭台の杖を膰䳝(バッドリ)へと向ける。



「お主の言葉の真偽に興味はない! 太刀守よりも強いと宣うその力が本物か否か! ワシが興味があるのはそこだけじゃ! 火行【魄威明鏡乱(はくいめいきょうらん)】!」



 紅孩童子が術を発動させると青白い炎が杖から四方に乱射される。炎の塊は壁や床、天井に当たると不規則に反射し、辺りを炎が跳ね回る地獄のような景色へと変えた。


 

「くっ!」

「おおっと!」



 膰䳝(バッドリ)をはずれた炎は、ウチや味方の浄江沙湖にまで向かっても跳んでくる。見境なしの無差別攻撃。この技は室外で放たれれば然程怖くはないが、壁と天井に囲われたこの地下空間では左右上下から時間差で攻撃が跳んでくるため回避がしづらい。膰䳝(バッドリ)の巨体にも何発か炎が命中する。だが、もともと驚異的な回復力を持ち、こちらの攻撃をほとんど意に介さない膰䳝(バッドリ)は回避を余り行わない。今度の攻撃は見た目は派手だけど炎の塊一発一発にはそれほどの破壊力はないみたいだ。数撃ちゃ当たるで威力よりも命中に重きを置いた技のようだけど、膰䳝(バッドリ)に対してはあまり効果がないのでは…………あ!



「ぐお、なんじゃあこりゃ……炎が纏わりついて息が……!」



 炎が消えない!?



「フェフェフェ! 【魄威明鏡乱(はくいめいきょうらん)】は火力よりも燃焼の継続性に重きを置いた術じゃ! しばらくその炎は消えんぞ!」



 なるほど……いくら傷を再生してもこれなら継続して火傷を与え続けられるし、炎の燃焼で窒息の効果も狙える!

 ウチは技の一撃の破壊力を上げることばかりを考えていたけど、こういう戦術もあるのか!



「げほっ……考えたのぅ! だが、これだけでこのワシを倒せるとは……」


「無論思っとらん!」



 紅孩童子は膰䳝(バッドリ)が怯んだ隙に更に術を畳み掛ける。


 

「火行【灼赫酸漿(しゃっかくかがち)】!!」



 床がボコボコと音を立てて赤く染まり、溶岩溜まりのように地獄の池と化す!これはクギ湿原で見た高熱の穴に相手を落として溶かす術!



「ぬうおおっ!?」



 膰䳝(バッドリ)の足は赤い沼に嵌ると、一瞬で黒炭のように変色する!これも相手の肉体を継続的に破壊できる術!

 しかし、これにもまだ膰䳝(バッドリ)は耐える……なんと凄まじい再生力ばい!



「まだじゃ!!」



 紅孩童子はなおも攻撃を行うため、陰陽術の詠唱を開始する。これまでの術は再生が追いつかないよう継続して損傷させるだけでなく、身動きを封じてとっておきの一撃を放つための時間稼ぎでもあったのね……見事な戦術ばい!



「火行【七星(しちせい)天道球(てんとうきゅう)】!!!!」



 術が発動すると7つの火球が膰䳝(バッドリ)の周囲に展開。そして7つが同時に膰䳝(バッドリ)の身体に向かい、着弾と同時に凄まじい火柱を上げて膰䳝(バッドリ)を焼き尽くした!



「ぐおおおおおぉ……!!」



 最上級火行の三重奏!

 幾重にも連なる獄炎に包まれた膰䳝(バッドリ)はもうその姿も見えない。恐らくは星の核すらも燃やし尽くすであろう超火力……無論、それをまともに喰らって生きられる生物はいない。さしもの膰䳝(バッドリ)もこれでは流石に生きては……て、ええ!?



「ヌ!?」


「……効……い……たぞ……やる……な……爺さん…………」



 なんと!

 炎の中から少しずつ灰が集まり、人の形を形成していく!


 そんな……燃えカスの様になっても再生出来るなんて……膰䳝(バッドリ)梵蔵(ボンゾウ)という男は不死身なの!?



「……ぶっ、は〜! 死ぬかと思ったぞ! がっはっは……げほ、げほ!」



 膰䳝(バッドリ)の身体はほぼ完全に修復。

 さしもの紅孩童子もこれ以上の連続陰陽術は流石に呪力が続かないようで、膰䳝(バッドリ)が再生する隙も追撃をする事が出来ないでいた。



「番付で言えば前頭筆頭……いや、小結! 三役級の強さだ! がはは! まさかこんな強い奴らと連戦出来るなんてな! 今日はツイてる!」



 小結……紅孩童子はウチよりも上の番付。それでもまだ上に関脇、大関、横綱の3つの番付がある。膰䳝(バッドリ)自身は恐らく横綱と格をつけているだろうから、ヤツの判定が正しいとするなら紅孩童子より更に三段階以上上の使い手でなければ膰䳝(バッドリ)を倒す事は出来ない事になるが……



「さァて、ちょうど身体も温まってきた事じゃし……こっちもそろそろ技ァ、使わせてもらうぞ!」



 そう宣言すると膰䳝(バッドリ)は得物の金棒を両手で掴み、大きく振りかぶる!と、同時に大気を切り裂くような凄まじい呪力が発せられた!


 これは……とんでもない技がくる!



「超力打法・"豪擲磐飛沫(スプラッシュ・ヒット)"!」


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