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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第4章 落日の荒野編(クリバス〜クギ〜)
247/262

第245話 戦闘民族!(前編)

前回のあらすじ:膰䳝VSコジノに踏越死境軍が乱入する!


※一人称視点 コジノ


「きたきたきたきた〜! これよ、これぇ!」 



 膰䳝(バッドリ)が彼らに向き直り呪力を一段上げると青髪の女、浄江沙湖(キヨエサコ)は興奮気味に叫んだ。



「こういうギンッギンッの猛者と戦いたかったのよ私は〜!」



 膰䳝(バッドリ)の放つ呪力は量・質ともに凄まじいものがある。実際に戦えばどうなるかは分からないけど、少なくとも相対した時の迫力は燕木師匠や太刀守殿よりも上。彼らは燕木師匠との戦いでも全く歯が立たなかったのだから、膰䳝(バッドリ)と相対した今、彼に勝てる算段など付きようもないだろう。



「わははっ。最近の若い娘はみな威勢がいいのォ」



 しかし、そのような事など彼女たちにとっては問題にならない。絶対的強者に挑み、たとえ己が死ぬ事になったとしても満足できる戦いが出来たのならばそれでいいのだろう。



「さあ、闘りましょーか!」



 浄江沙湖(キヨエサコ)が息巻いて前に出ようとすると、小柄な老人術師、紅孩童子(コウガイドウジ)がその前に割って入る。



「何よ! 紅孩、邪魔しないで!」


「……フェフェフェ。そっちこそじゃ。先に術を当てた方がヤツと戦う。そう決めたはずじゃろうて」


「ハァ!? 私の術のほうが先に当たったでしょ!」


「いいや、ワシの方じゃ」



 どちらが先に膰䳝(バッドリ)と戦うかをモメはじめる浄江と紅孩の2人。まさかそのような事で仲間割れするとは思ってもみなかったであろう。膰䳝(バッドリ)は、その様子をぽかんとした表情で眺めてのち、頭を掻いて口を挟む。



「何だ何だ。こっちは2人掛かりでも一向に構わんのじゃがな……どっちの術かは知らんが火行の術の方がわずかに先に当たったぞい」



 火行の術……つまり紅孩童子(コウガイドウジ)の放った術である。



「んなっ!」

「……決まりじゃな」



 そう言って紅孩童子(コウガイドウジ)がズズイと一歩前にでる。



「フェフェフェ。目の前に立つとまた一段と凄まじい呪力……鳥肌が立つのお」



 紅孩童子(コウガイドウジ)はそう言いつつ、何か気がかりな事があるのか膰䳝(バッドリ)の顔をじっと見つめる。そして、数秒思考を巡らせたのち、意外な問いを投げかけた。



「お主……もしや烏儼(ウゴン)族か?」



 ……!!

 えっ、烏儼(ウゴン)族!?



「ああ、いかにもそうじゃ」



 膰䳝(バッドリ)はさらりと答える。

 むむ、まさか膰䳝(バッドリ)があの伝説の烏儼(ウゴン)族とは……であれば、あの出鱈目な強さにも納得がいくばい。



「はあ? なーによ、ウゴン族って」



 浄江沙湖(キヨエサコ)紅孩童子(コウガイドウジ)に説明を求める。戦闘の出番を紅孩童子(コウガイドウジ)に奪われた為かどこか不満げな様子だ。



「メリケニ島の一部地域に住んでいたと言われる少数部族じゃよ。黒い肌と頑強な肉体、そして高い呪力と六行適性を併せ持ついわば戦闘民族じゃ」



 そう。以前、紅鶴御殿にあった書物を読んで知った事だ。

 曰く、烏儼(ウゴン)族は成人のほとんどが六行使いの戦士となるというジャポネシア最強の民族。彼らは特定の国には属さず様々な国から傭兵として雇われて戦う事を信条としており、名だたる武芸者・陰陽術師を多数輩出していたという。その名は戦国の世では広く知られていたが、彼らはある時期を境に突如として歴史からその名を消す事となる。



「戦国時代の中期から後期にかけて隆盛を誇った烏儼(ウゴン)族……じゃが、数十年前、先代太刀守・朝青編竜(アサオヘンリュウ)と戦い、死闘の果てに滅ぼされたと聞いている」


「ほー、よく知っとるな」



烏儼(ウゴン)族は一人一人は高い戦闘力を持つものの、横の繫がりは薄く、また大陸に覇を唱えるような野心を持つ者もいなかった為それまでは各国に雇われて戦うだけの立ち位置に甘んじていた。また彼らの住むメリケニ島はジャポネシア本土からは海を隔てている為、大陸への領土的な侵略は行いづらい環境でもあったが、雇われの傭兵だった烏儼(ウゴン)族の織田蹴長(オダケルナガ)が当時の大国ヒシローマで将軍となった事で状況は一変する。蹴長(ケルナガ)は散り散りになっていた烏儼(ウゴン)族を糾合し、その武力を持ってヒシローマ帝国の皇帝の座を簒奪。天下を武力で統一せんと隣国に侵略を開始した。しかし、この目論見はすぐに潰える事となる。圧倒的な力を持ちながらもどこの国にも属さず、大陸統一の野心を持つ国が現れる度にその国と敵対してはその目論見を打ち破り続けていた先代太刀守・朝青編竜(アサオヘンリュウ)が彼らの前に立ち塞がったからである。


 全盛期の朝青編竜アサオヘンリュウの強さは大災害に例えられる程であり、さしもの烏儼(ウゴン)族たちも彼に敵わず敗北。その時の戦いで一族はことこどく討ち滅ぼされたと伝えられている。

 


「まさかあの伝説の烏儼族の生き残りと戦うことが出来るとは……フェフェフェ! こりゃあ愉快! 長生きはするもんじゃて!」



 紅孩童子(コウガイドウジ)は己の「触媒」である杖のような長燭台を構えると、先端の蝋燭にボボボッと勢いよく火が灯る。その様子を見て膰䳝(バッドリ)もニヤリと笑い金棒を構えた。

 


「わはははっ、そりゃあ良かったのう、爺さん。だが、一つ忠告しとく。烏儼(ウゴン)族は確かに先代太刀守に負けて滅ぼされたが、ワシが奴らと同じと思っているならばそれは大間違いじゃ」



「……なに?」



「何故なら先代太刀守・朝青編竜(アサオヘンリュウ)を殺したのはこのワシなのじゃからな」



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