第243話 クロス・カウンター!
前回のあらすじ:鞍馬刑部を倒したサシコ!一方その頃、ガンダブロウVS燕木も最初の転機が訪れようとしていた……
「エドン無外流『逆時雨』……"秘剣・燕返し"!!」
俺はかつてと同じ技で燕木の放った風行の技を跳ね返す!あの時はこれで燕木が手詰まりとなり決着がついたが……
「やはりそう返すか!」
燕木はこれを待ってましたとばかり槍を肩に乗せて身体をひねる奇妙な構えを取る!
──フッ、流石に対策を考えていたか!
俺の「逆時雨」はそう簡単には破れんが……どう対処するか。お前の工夫、拝見させてもらうぞ!
「ダイハーン無外流『飛燕翼』……"鶏転冀流"!!!!」
燕木は身体を捻った体勢から身体を風を受けた風見鶏の様に3、4回転させる!
すると身体の周りに気流が発生し、俺の放った技は燕木に直撃することなく気流に沿ってヤツの周りを一回転。そして、再び俺へと向かって技が飛んでくる!
「な、なんだそれは!?」
俺は面食らった事で行動が遅れ再び『逆時雨』を発動する事ができない!何とか横っ飛びで回避には成功したが、飛んできた風の刃は先程よりも更に威力が増しており、俺の背後の柱に着弾するとズバーン!という大きな衝撃音と共に柱を粉々に破壊した。
……放たれた六行の技を相手へと跳ね返す技。これはまるで……
「これではまるで俺の逆時雨と同じではないかっ!」
俺の驚きに対し燕木は不敵に笑ってみせた。
「フフフ……そうだ、村雨。この技はお前の『逆時雨』と同じ相手の技を利用して跳ね返す技だ」
「馬鹿な!? 『逆時雨』は無属性の呪力が、相手の六行の属性と同化する事で初めて成り立つ技……風行の属性を持つお前では再現できないはず!」
『逆時雨』は六行の属性を持たず呪力に特殊効果を付加できない俺が、その特性を逆手にとって編み出した俺にしか再現できない唯一無二の技。俺と同じく属性を持たざる者ならまだしも、六行の属性を持つ燕木には真似することは不可能なはずだが……
「……その通りだ。俺の呪力では他人の六行、ましてや自分と異なる属性を同化させて跳ね返すなど不可能……俺が跳ね返す事が出来るのは俺と同じ風行でかつ俺の技に近い性質の技だけだ」
……!!
「お前が跳ね返してきたのは俺の技だ。自分の呪力ならば再度自分の呪力に同化させる事も比較的容易い」
自分と同じ属性だけ反射可能……か。
そんな事が可能かなど今まで考えもしなかった。だが、なるほど確かに、自分と同じ属性の技でかつ自分の呪力と近い性質の呪力という限定条件ならば理論上『逆時雨』の再現はやってやれない事もないだろう。だが、戦場でそんな限定的な状況が起こり得る可能性は決して高くなく、しかも相手が複数人でそれぞれに異なる六行の属性を持っていればこの技の使い道はほとんどない。そういった事を踏まえると習得の手間や労力の割には使い勝手が悪く、思いついてもまず習得を目指す事はないだろう。
しかし、これが俺の『逆時雨』に対抗する事を想定しているならば話は別だ。
ふん。燕木のやつめ……俺を倒す為にこんな準備をしていたとはな。先のアラール川での戦いでは戦場に漂う六行の残滓を俺が用いた為に使えなかったのだろうが、今は一対一。この技ある限り俺の『逆時雨』とヤツの鶏転冀流とは技を反射しあうばかりの堂々巡りで決着はつかなくなるだろう。となれば自分から技を放てない分、不利となるのは当然俺の方という訳か。
「ふふふ。これでやっとあの時の続きが出来るな」
……燕木はあえてかつて敗れた試合を再現して見せて、自分があの時よりも成長している事を示して見せた。
「まさかこれで打つ手無しではないよな、村雨?」
そして、次は俺の番という訳だ。
……ふん。当然だな。
正直俺の『逆時雨』に対してこの様な対抗策があるとは予想だにしなかった。しかし、だからといって俺の戦闘能力全てが封じられた訳じゃない。『逆時雨』の初見殺し性だけで得られるほど「太刀守」の称号は甘くないのだ。
「無論だ!」
さあ、来るならば来い!
どのような技を繰り出してこようと今の俺には対処しうるだけの自信はあるぞ!
「フッ……では行くぞ! ダイハーン無外流『飛燕翼』…」
燕木が再びこちらへと攻め込もうと一歩踏み出したその時!
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
突然、砦を大きく揺らす振動! と同時にとてつもなく巨大な呪力の気配!
さしもの燕木も一時足が止まる。
「ち……ッ!!」
「今度はなんだ!?」
この衝撃の爆心地は階下……それも恐らくは地下からのものだ。地下といえばサシコとコジノちゃんがアカネ殿の救出に向かった方向……であれば、この揺れに彼女たちの行動が無関係であるとは考えにくい。
彼女たちの身に一体何が起きたと言うのだ……?




