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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第4章 落日の荒野編(クリバス〜クギ〜)
243/262

第241話 雷霆交錯!

前回のあらすじ:サシコVS鞍馬刑部、決着の時せまる!


※一人称視点 サシコ



「我流!! "神杖・八百八しんじょうはっぴゃくや(つづみ)"!!」

「エイモリア無外流!! "志那津火雷(しなつほのいかづち)"!!」



 鞍馬刑部が両手の槌と斧に空行の力を溜めて放った凄まじい一撃に、アタシは風・火・空の三属性を掛け合せた現時点で出せる最大威力の技で答える!



「オオオオオオオッ!!!!」

「ふんぬうううぅ〜!!!!」



 全身全霊、乾坤一擲!

 お互いの全てを賭しての奥義の打ち合い!


 これが決闘!これが死線!

 これこそが……アタシが求めた剣士の世界!


 この勝負に勝てばアタシにも見えるかもしれない……太刀守殿や七重隊長たちの領域……武を極めた達人の景色が!



「「 うおおおおおオオオオオオオ…………!!!! 」」



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「が……はっ!!」



 サシコと鞍馬刑部の死闘が決着に近づいていた時、トロイワ砦内の別の場所では踏越死境軍(モータルフロント)の陰陽術士2人と御庭番候補たちの戦闘も終結に向かっていた。



「ん馬鹿な……この"シーガーの鋼拳"益戸大達(マストダイタツ)がこんなやつらに……」



 そう言って敗れた益戸大達が床に倒れ込む。



「これで3人……いや最初に天井に穴開けた時に仕留めた奴を足すと4人かしら」



 戦闘を終えて満足げの浄江沙湖(キヨエサコ)が床に転がる死屍累々を眺める。

 拳から風行の衝撃波を放つ格闘家"シーガーの鋼拳"益戸大達(マストダイタツ)、空行の電撃を操る手投げ斧使い・"ミアザの鬼酋長"慈英郎仁村ジエロウニムラ愛八(アイハチ)、エビや貝、ヒトデなどの水行の式神を使う陰陽術士・"ミューエの水族王"蟹江西園(カニエサイオン)、石畳を自分の周りだけ水の様な性質に変えて地面に潜る"フューゴの土龍(どりゅう)"乙檻潜二(オツオリセンジ)……いずれも一流の六行使いで御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)の候補に挙げられるほどの猛者であったが、浄江沙湖(キヨエサコ)紅孩童子(コウガイドウジ)踏越死境軍(モータルフロント)陰陽術士2枚看板には敵わず敗北した。


「いやー、なかなか楽しませてくれたわねぇ〜!」


「……いつの間にか一人消えてしまってるがの」



 当初は更に犬叉狂志郎も踏越死境軍(モータルフロント)と交戦していたが、戦闘が推移していく中で彼らの前から姿を消していた。形勢不利と見て逃走したと見るのが自然だが、紅孩はまだ余力を充分に残しているように見えた犬叉が退いた事には多少の違和感を覚えていた。



「やる気のない奴には興味はないわ」


「フェフェフェ。まあ、そうじゃな。あやつは御庭番でもなかった様じゃし」



 しかし、彼らからすれば戦う相手に事欠かない敵陣にあっては逃げる相手はどうでもよく、それより次にどんな相手が現れるか。どこに向かえばより危険な敵と戦えるか。それのみが重要であった。



「さーて、お次はどっちに向かおうかしら。まだ砦には強い呪力の気配がちらほら感じられるけれど……」



 そう言いつつ沙湖は自分が開けた床の大穴から階下を覗き込む。



「気付いていたか」


「ええ、そりゃもう……地下の方からすンごい呪力がムンムン湧き上がってくるじゃないの」


「燕木哲之慎……いや、それよりも更に強いか」



 トロイワ砦の地下はサシコとコジノがアカネの救出に向かい、門番の膰䳝梵蔵(バッドリボンゾウ)と遭遇した場所である。膰䳝梵蔵(バッドリボンゾウ)御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)でも最強格の一人。彼の放つ強烈な呪力が羽虫たちを呼び寄せる花の蜜の香りのごとく、踏越死境軍(モータルフロント)の二人を引き付けていた。



「行くっきゃないでしょ!」

「無論じゃて」



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「……だあああっ!!!!」

 


 奥義同士の押し合いに勝ったのはアタシの方であった。


 鍔迫り合いの体勢から鞍馬刑部の斧と槌を弾くと、技の勢いで鞍馬刑部自身も後方にふっ飛ばした。



「ぬぐおおおおおおおおおっ!?」



 鞍馬刑部はそのまま壁に叩きつけられると、壁にもたれて力無く床に倒れ込んだ。2回の大技を喰らい、さしものこの男も立ち上がる体力・気力が尽きたらしい。


 しかし、油断は出来ない。まだ隠し武器を仕込んでいる可能性もあるかもだし、トドメを刺せる時に刺しておかなければならないだろう。だが……



「はあ、はあ……」



 アタシはこれまで自分の手で直接人の命を奪った事はない。その機会は何度もあったし、間接的には何度も人の命を奪ってきたのでもはや今更なのだが、いざその時が来ると何とも言えない不快感が押し寄せてくる。


 太刀守殿にも人の命はなるべく奪うな、と言われている。でも事ここに至って相手を仕留める事が出来るのに見過ごしたとあっては道徳的評価よりも平和ボケした愚かさが勝るだろう。このまま敵を見逃して、のちのち仲間に被害が出れば目も当てられない。個人的な不快感で躊躇している場合ではないのだ。




「鞍馬刑部、覚悟っ!」



 最初から意は決している。

 アタシは呼吸を整え刀を握り直すと、鞍馬刑部にトドメをささんと歩みだした。

 

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