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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第4章 落日の荒野編(クリバス〜クギ〜)
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第236話 怪盗狸!

前回のあらすじ:亜空路坊の正体は御庭番十六忍衆であった!


※一人称視点 サシコ 



「それが出来るのはこの世界で私だけ! 龍の玉視や太刀守の称号を持っていても成し得ない! この私、御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)が一人、鞍馬刑部(クラマギョウブ)にだけできる事なのだ!」



 そう宣言すると亜空路坊(アクロボウ)は今まで自分の身を覆い隠していた法衣を脱ぎ捨てた。

 身体には様々な重装を纏い右肩にはアタシに投げよこしたものと同じ銀色の腕章が光る。今まで頭巾で隠れていた素顔は逆だった赤銅色の髪と厚ぼったい唇が特徴の壮年男性のもので、なんと言うかお世辞にも美形とは言えなかった。しかもそのご尊顔の右頬には醜さを更に強調するかの様に大きな痣があり……て、容姿ばかり気にしていもしょうがないわね。それよりも気がかりなのは奴が名乗った名前!



鞍馬刑部(クラマギョウブ)……てあの大盗賊の鞍馬刑部(クラマギョウブ)!?」


「いかにも」



 やはり……!

 鞍馬刑部、別名「イワティコの山賊狸」……北ジャポネシアでは広く知られた名前だ。



鞍馬刑部(クラマギョウブ)……まさか本物と会うことになるなんて……」



 アタシの村でも鞍馬刑部(クラマギョウブ)の噂は何度も耳にした。鞍馬刑部は隣国イワティコを拠点に北ジャポネシアの国々を股にかけた盗賊で、いくつも有名な事件を起こしたが民衆には多大な人気があった。彼の標的は主に民から搾取する悪代官や他の盗賊どもであり、奪った金品は時に下々の者たちに分け与えられる事もあったからで、北ジャポネシアでは今も彼を英雄視する者は少なくない。



「天下の大怪盗がお上の軍門に降るなんて……どうやらかつての誇りは失ってしまったようね!」


「ふん。誇り、か」



 亜空路坊(アクロボウ)あらため 鞍馬刑部(クラマギョウブ)は、先程の興奮した様子からやや落ち着きを取り戻し再びアタシの問いに答える。



「何かを成すのにまず必要なのは誇りではなく力だ。力がなければ誇りなどクソの役にも立たん」


 鞍馬刑部(クラマギョウブ)は吐き捨てるように言い放つ。

 ……どうやら鞍馬刑部(クラマギョウブ)は噂で聞いた様な高邁な人物ではない様ね。



「さて、宮元住蔵子くん。今君にいくら話をしても我らの理想は理解して貰えない様だが……となると、君はただの邪魔者という事になる」



 ……!

 そりゃそうか。

 アタシをすぐに殺さなかったのは仲間に勧誘する為だった。今アタシがその誘いを断った以上、そのまま放置という訳にもいかない。ここまで秘密を話した以上、仲間にならぬ者に取るべき選択肢は必然的に決まってくるだろう。



「"龍の玉視"は稀少。ただ失うのは残念ではあるが、敵になるぐらいならば…」


「"蹴速抜足"!!」



 従わぬ者は抹殺する。それが奴らの常套手段である。

 ならば、先手必勝。向こうから攻めてくる前にこちらから仕掛けるべきだ。そう思い、気先を制して技を放つが……



「  転  移  」 



 鞍馬刑部は攻撃が到達する前にマガタマを発動!

 アタシの目の前から姿を消す……が、気配はまだ消えていない。この瞬間移動は遠くへの転移ではない。とすると今奴がいるのは……



「うしろッ!!」



 振り返ると鞍馬刑部はアタシの背後へと移動しており、既に何らかの攻撃を放つような構えを見せていた。



「"殺界縛鎖(さっかいばくさ)"!!」



 鞍馬刑部の着物のそでから高速で黒い荒縄か複数射出される。回避が間に合わず縄はアタシの身体に巻き付けられる。



「くっ……!」



 実態のある縄……六行の技ではない!

 でも、この黒い縄にはどこか見覚えが……ハッ!



「六行の力が出せない!? これって金鹿の……!?」



 そうだ。これは金鹿馬北斎がマガタマの力を封じる為に使っていた黒い荒縄──確か殺生石とかいう鉱石を素材に使った──に酷似している。六行の力を発動できないところから見ても同じものの可能性が高い。



「これは対六行使い用の捕縛兵器! 殺界縛鎖(さっかいばくさ)! お察しの通り金鹿馬北斎が生産・所持していたものと同じものだ」



 やっぱり……珍しい武器や防具を収集していると言っていたけど、こんなものまで持っているなんて……


 六行の力を相殺する縄に瞬間移動ができるマガタマの欠片。この2つを突破できる手段は今のアタシには……



「このままお前を締め殺す事は容易だが……もう一度聞こう。その"龍の玉視"の力を我らの為に…」


「どりゃあっ!!」



 鞍馬刑部がそう言いかけた時、突然部屋の扉が開かれる。え!?誰か助けに来てくれたの!?まさか……た、太刀守殿?


 そう期待して振り返るとそこにいたのは……



「先輩たちを追っていこうとして道に迷っちまったが……敵はここにいるのかァ?」



「孫悟朗!?」



 この絶対絶命の危機に現れたのはまさかの木下孫悟朗!!

 何故、コイツがここに!?



「特攻斎だ!! ……て、ああっ!? 宮元住蔵子!?」



 ……ううむ。一応味方には違いないけど、よりによって六行を使えないコイツとは……



「なんだ、捕まっちまってるのか! へへへ、情けねえな!」



 しかし、それでも誰も来ないよりはマシか。ほんの少しの隙きでもいい。今は孫悟朗が突破口になる事を祈るしかない……



「……何だお前は?」


「へっ、よくぞ聞いてくれた! 我こそは踏越死境軍(モータルフロント)の一番槍! タキアの成らず香車、木下特攻斎だ!」


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