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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第4章 落日の荒野編(クリバス〜クギ〜)
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第233話 ゲームチェンジャー!(前編)

前回のあらすじ:アカネを助ける為に地下牢へと突入したサシコがそこで見たものは……


※一人称視点 サシコ→ガンダブロウ→サシコ



「アカネさん! 助けに来ましたよォ!」



 扉をぶち破った勢いのまま、アカネさんが捕らえられているという部屋に突入し中を見渡す。部屋は机や本棚、寝台などの家具が備えられた三十畳ほどの広さで、更に別の部屋に繋がっていると思われる扉もあるなど、牢獄というより賓客用の客間という風だった。充分な灯りもあるし、地下の割には空気も淀んでいない……鉄格子に囲われて暗くジメジメした狭所に押し込められているんじゃないかとも思ったけど、待遇はかなり良さそうだしそこはひと安心ね。


 と、それはそうと、アカネさんはどこかしら?



「アカネさん! どこですか! アカネさ……」



 ふと目の端に人影を捉える。

 部屋の隅の方にある椅子に座る後ろ姿──



「アカネさ……ん……?」



 …………い、いや違う!

 座っているが背丈や体格がアカネさんとは似ても似つかない!



「……ここはかつて旧サイタミニカの王族が敵国の侵略者から身を隠すのに使った地下施設」



 謎の人物はゆっくりと立ち上がり、振り返る。

 大柄な身体を袈裟と頭巾ですっぽりと覆い、目以外の肉体がほとんど見えないという異様な出で立ち──その怪しい風体には見覚えがあった。



「元々この砦は防衛や補給よりも、そういった用途の為に建造された様でね。他にも隠し扉や隠し通路が多く、軍から隠れて活動する拠点としてはうってつけという訳だ」



亜空路坊(アクロボウ)!? 何故アナタがここに!?」



 反乱軍の発起人である吾妻榛名(アヅマシンメイ)の片腕にして、古代遺物兵器「銃」を大量所有していた謎多き男・亜空路坊!サイタマ軍との戦闘終了後、一時本拠地に帰還し盟主である吾妻に戦果を報告しに言ったと聞いていたけど……まさか、アタシらを追ってここへ?とすれば、増援?アカネさんは既に救出済み? 


 ──いや、違う!

 頭にコジノさんがミヴロで忠告してくれた「亜空路坊には気をつけろ」という言葉が浮かぶ。



「……御庭番と内通していたんですか?」



 直感した言葉がとっさに口をつく。

 そして、その言葉を亜空路坊は即座に否定しない。直感が確信に変わった瞬間、刀を構えて亜空路坊に先手を打って仕掛ける──が、アタシの攻撃よりも早く亜空路坊が懐から取り出した()()によって状況が大きく変化する。

 


「な……マガタマ!?」



「 転  移 」



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「ダイハーン無外流『飛燕翼』……"飯綱燕(いずなつばめ)"!!」



 これはあの時と同じ……遠間から風の斬撃を飛ばす燕木の得意技!



「血迷ったか!?」



 以前に道場で俺に使用した時は斬撃に纏われた風行の呪力で太刀筋が見えたが、今度のは技が強化され斬撃を視認する事はできない!しかし……



「エドン無外流『逆時雨』……"秘剣・燕返し"!!」



 それだけでは俺には通じない!空気の歪みと槍を振る動きから軌道を見切ると、俺はあの時と同じ様に風行の呪力を逆利用し燕木に攻撃をはじき返す!



「やはりそう返すか」



 以前はここで燕木は手詰まりとなって俺が勝利した。まさか斬撃を透明にした程度で俺に攻撃が通ると思っていたのなら浅はかと言うより他にないが……むむっ!?



「なっ!? 何だそれは……!?」




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「こ、ここは……!?」



 突如として目の前の景色が変わる。

 先程までの地下の部屋とは打って変わり、無機質な石壁に囲われた空間……先程の部屋の数倍以上の広さはありそうだが、篝火はあっても暗く、何やら煤けた匂いが立ち込めていた。よく見ると辺りには大砲や防弾、槍や矢がなどの物騒なものが配置されている様だけど……ここは武器庫だろうか?


 クギの反乱軍の砦で吾妻榛名(アヅマシンメイ)がマガタマを使って行った空間転移。それを亜空路坊がやったのだ。



「まだトロイワ砦の中だ。階層は違うがな」



 ふと、背後から声がする。



「……亜空路坊! 何のつもりなの! アカネさんは……アカネさんはどこにいったのよ!」


「こうした方が落ち着いて話せるかと思ってね」



 何が落ち着いて話す、だ!

 コイツがここにいるのは反乱軍を裏切って密かに御庭番や【統制者】と繋がっていたからに違いない!そうじゃないにしても何かしらやましい理由があるのは明白……危害を加えられる前に制圧してしまいたかったけど、あのマガタマの空間転移がある限り手の出しようがない。ここは黙って亜空路坊の話を聞くしかないか……



「ふぅ。しかし、まさかお前たちがいきなりこの砦に攻め込んで来るとはな。燕木が色々手を回したのだろうが、やれ面倒な事をしてくれたものだ」



 亜空路坊は淡々とした口調で語る。



「だが、こうなっては仕方がない……貴様には消えてもらおうか」



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