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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第4章 落日の荒野編(クリバス〜クギ〜)
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第229話 地の底に眠る鬼!

前回のあらすじ:ガンダブロウは地備衛の献身によって燕木の待つ最上階へと進む!一方その頃サシコとコジノの二人は……



※一人称視点 サシコ


「はぁ、はぁ……振り切ったみたいですね」



 太刀守殿と別れた後、アタシとコジノさんは二人で砦内を逆走していた。途中、守備兵の部隊を3度撃退し、増援部隊の追跡も振り切って気付けば砦の地下へとやって来ていた。外はもう夜の時間に差し掛かっているはずだが、ここはそれとは無関係に薄暗く、壁の炬火(きょか)の小さな明かりが行く道をかすかに照らし出していた。先程までの喧騒が嘘のような静けさはいきなり別の世界に迷い込んでしまったような、そんな不安な気持ちを頭によぎらせる。



「コジノさん」



 不安な気持ちを拭う為、道を先導するコジノさんに声をかける。



「……なに?」



 思わぬ形で再会したコジノさん。初めて会ったミヴロでは金鹿を倒すために共闘し、反乱軍に協力してからは敵として剣を交え、今度はまた味方……この人とは本当に数奇な巡り合わせで良くも悪くもを何度となく関わる事となった。そして、きっとこの不思議な縁は今後も続く事になるだろうと、確信に近い予感があった。願わくばこの因縁がお互いにとって幸福なものであれば良いと思うのだけど……とりあえず今回は殺し合いをする事にならなくてよかった。



「あの……本当にいいんですか? こんな事してしまって」


「うーん……ちょっと勢いで決め過ぎたかもしれんね」


「えぇ!?」



 コジノさんは淡々とそう答える。


 そういえばこの人、今までも思い立った衝動のまま千里以上の距離を移動して紅鶴御殿に入門したと思えば、今度は燕木哲之慎に弟子入りしようと紅鶴御殿も飛び出す、かなりの直情径行型だったわね……



「でも、まあ今更言ってもしょうがなか。こうなった以上、最後までやり切るだけばい」



 そうカラッとした口調で言い切るとコジノさんは道の突き当りの壁の前で立ち止まる。



「行き止まり……?」


「いや」



 コジノさんは石壁の一部を手で押すと、そこに開閉機の仕掛けがあったようでゴゴゴと音を立てて壁がせり上がり、更に地下への階段が出現した。


 ……アカネさんはこの隠し扉の先にいるのね!

 なるほど、であればやはりコジノさんの提案に乗ったのは正解だった。もしも彼女の協力なかったなら、この隠し扉を見つけるには相当の時間を擁しただろうし、そうこうしてる内にアカネさんを移動させられてしまった可能性も高い。



「この先にはもう守備兵はおらん。あとは見張りにいるはずの御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)を一人何とかすればいいだけたい」


「……うっ。やっぱり御庭番十六忍衆がアカネさんを見張っているのですね」



 アカネさん程の力を持った人を捕らえておくには、見張りからしてそれなりの力を持った実力者でなければならない。またキリサキ・カイトを間接的に操る事を画策する【統制者】及び御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)の目的はサイタマ共和国の正規軍とは共有されていないはずであり、その役目を御庭番十六忍衆自身が務めている可能性はもともと高かった。だからアカネさんを奪還する為にこの砦に乗り込んだ以上、御庭番の誰かとカチ合う事はある程度織り込み済みではあったけど、いざ自分が彼らと相対するとなればやっぱり武者震いするわね。



「うん。誰かまでは分からんけどね」


「何とかするって言いましたけど、何か策はあるんですか?」



 階段を降りながらコジノさんへ問いかける。

 御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)の強さは今まで何度も目の当たりにしてきた。どいつもこいつも六行の技を極めた猛者揃いで、退けるには一筋縄ではいかないのは明白。無論、コジノさんもそれは百も承知のはずで、彼らと相対すると決めた以上何かしら勝算があるはずだ。あ、もしかして、彼らの弱点を燕木哲之慎から聞いて知っているとか……



「ん? いや何もなかね」



 ないのかい!



「まあ、ウチとサシコちゃん二人がかりなら何とか勝てるやろ」



 そ、そんな適当な。

 本当に行き当たりばったりで決めてるのね、この人は……


 ……でもまあ、確かにコジノさんの言うことも一理ある。今のアタシは自分で言うのもなんだけど剣士としてそれなりには強くなった。不本意ながら手に入れた5属性の力もある。まだ一人で御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)と戦うのは流石に荷が重いけど、コジノさんと二人ならば戦える自信がない訳じゃない。そりゃあ、金鹿馬北斎や燕木哲之慎が相手じゃいくらなんでも勝つのは難しいけど、彼らは御庭番の中でも特別に強い方だろうし……阿羅船牛鬼か熊野古道伊勢矢くらいの相手ならば、十分に勝機はある。なんたってアタシとコジノさんが組めばあの戦国七剣・三池乱十郎にさえ勝てたんだから。


 ……そうだ。コジノさんと二人なら恐れる事はない。最悪勝てなかったとしてもアカネさんを解放するだけの隙を作れれば、それでいいのだし、きっと上手くいく。


 そう自分に言い聞かせながら長い階段を降り切ると、天井が高く少し明るい開けた空間に出る。と、その時──



「なっ!?」



 突如として凄まじい呪力の気配を感じ取る!



「な、なに……これは……!?」



 凄い呪力圧だ……!

 肌にビシビシと向かい風が当たるような感覚……これ程の呪力を感じたのは金鹿の持っていたマガタマを見た時以来の事……い、いや恐らくマガタマから発していた呪力よりは遥かに総量は少ないのだろうけど、底が知れないという意味では同じくらいの迫力を帯びている。その発生源の方向には、緊迫した空気からはかけ離れた様子で人が一人地面に寝そべっているのが見えた。



「ぐごー」 



 浅黒い肌の大男。彼の横にはトゲのついた大きな金棒が無造作に置かれている。


 いびきをかいて眠っているようだけど、そんな状態でもこれだけの呪力を放つとは……あれは一体、何者なの!?



「最悪ね。膰䳝梵蔵(バッドリボンゾウ)……寄りによってあの人が見張り番とは」



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