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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第4章 落日の荒野編(クリバス〜クギ〜)
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第224話 蛇対猪!(後編)

前回のあらすじ:トロイワ砦に奇襲をかけたサシコと踏越死境軍の前に御庭番候補の蛇使い・壺内朧が襲いかかる!


※一人称視点 サシコ



「ちょっと地備衛! なによ、いきなりやる気になって!」



 先程まで後方に控えていた地備衛が突然やる気を出した事に反発したのは沙湖であった。



「さっきまで行きたくないとかウジウジ言ってたじゃない! そんな奴が戦るのは後回しよ、後回し!」



 地備衛は当初このトロイワ砦の襲撃には消極的であり、結局同行する事にはなったもののこれまでは積極的に戦闘に介入しようとしていなかった。それが砦の中で起きた異変を目にして何か吹っ切れたのか、門を守る壺内との戦いに名乗りを上げてきた。



「コイツを殺るなら俺が一番速いだろ。中にはもっと強敵が待ってるんだ。お前らは砦の中で御庭番なりなんなりを好きに狙えばいい」



 そう言うと地備衛は刀を抜いて、ザッザッと壺内の方に歩み出る。



「いや、ちょっと何勝手に決めて…」


「目が覚めた様ですね。地備衛」


「フェフェフェ。この場所は元々地備衛しか知らなかったのじゃ。最初の獲物は譲ってやってもよかろう」


「地備衛の兄貴! ぶちのめしたって下さい!」



 沙湖以外の踏越死境軍(モータルフロント)の面々は地備衛が一番槍を務める事を支持した様だ。


 ……いや、全員で戦った方が早い気がするけど。その辺は妙に律儀なのね……



「む……奴ら一体何をゴチャゴチャやってるであるか」



 砦の壁が破壊された事に気を取られ、一時攻撃の手を緩めた壺内だったが、再びこちらに向き直ると先程と同じ様に"触媒"となる笛を手にして呪力を集中させる。



「砦の中が気がかりである! コイツらをさっさと片付けて砦に戻るである……風行【鎌眼鏡蛇(かまコブラ)】!」



 さっきと同じ術!

 5つの浮遊した壺から目にも止まらぬ速度で式神蛇が射出される!迫る5体の蛇の突進に対し、たった一人で立ち向かう地備衛は手にした刀をまだ構えてもいない!


 これじゃ、受け太刀もできないし、一瞬で餌食に…………て、えっ!?



「重力倍加……解除!」



 そう宣言すると同時に地備衛の姿が消える──


 え!? 瞬間移動!?

 ……い、いや違う!これは…… 



「ぬおおっ!?」



 目にも止まらぬ凄まじい速度で移動しているんだ!


 あの巨体からは全く想像もできない身のこなし……単純な速度だけならアタシの"蹴速抜足"も同じくらい出せるけど、"蹴速抜足"は直線的な動きで移動中に自由な方向転換は出来ない。地備衛の動きはとてつもない移動速度の中であっても複雑な足運びで左右上下に変化しており、迫りくる蛇のしなる様な変則軌道にも見事対応し回避している。


 そして、その勢いのまま地備衛は敵の懐にまで飛び込み……



「バラギ新陰流『狩遯(かりゅうどん)』……"唐竹・暴呀(ボア)"!!」


「むううぅ……!?」



 地備衛が剣を振り下ろすと、壺内は寸でのところで宙空に展開していた壺の一つを防御に回す。地備衛の攻撃は壺に命中し、壺は粉々に破壊された。



「反乱軍の犬め、やるである……ならば!」



 壺内は垂直に飛び上がり、同時に残った4つの壺を四方に展開。壺と壺を結ぶ四角形の中心に地備衛を置くと、四角柱の風の結界を発動させてその中に閉じ込めた。



「これで足は封じたである!」



 ム……なるほど。狭い結界の中では動きはかなり限定される。これで地備衛の機動力をかなり削がれてしまったわね。懐に飛び込んでしまったのが仇になってしまったようだけど……



「これでもうチョコマカ動いて躱す事はできまい……喰らえぃ!! 風行【眼鏡蛇終崇濤(コブラツイスト)】!!」



 壺内は宙空で片足を浮かして何かを抱えこむような不思議な体勢から陰陽術を発動!地備衛のいる真下方向に風行の強力な竜巻を放つ!


 四方を囲まれた地備衛に回避は出来ない!万事休す……か!?

 


「躱す必要などもうない」



 そう言って地備衛は迫りくる暴風に対して垂直に突きの構えを取り……



「バラギ新陰流『狩遯(かりゅうどん)』!! "突き刺し・破緬扨(ばびるさ)"!!」



 地備衛は剣を突き上げる!

 と、衝撃波が迫りくる暴風と衝突!


 バァン!バァン!と何度も弾けながら風をかき消し、衝撃波が打ち上げ花火のように上昇していく!



「うっ……おおおおおおおっ!?」 



 空中にいた壺内は地備衛の放った衝撃波に巻き込まれ吹っ飛ばされ、勢いよく地面に叩きつけられた。



「ぐわはあっ!!」



 壺内は盛大に血を吐き、持っていた触媒の笛も粉々に砕かれた。


 ……す、凄い。猪村地備衛……太刀守殿の力を知っていながら決闘を挑むだけあってこの男……相当強いわ!



「うわあああ、壺内殿がやられたー!!」



 頼みの綱の壺内を倒されては他の門番たちには蜘蛛の子を散らすように砦の中へと退却していった。



「さあて、これで道は開いた。さっさと太刀守の所へ向かうぞ」



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