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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第2章 北方の旅路編 (ツガルンゲン~アイズサンドリア~キヌガー〜ウィツェロピア)
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第14話 お金を稼ごう!

前回のあらすじ:旅には馬が必要……だが、馬を買うにはお金が無い!ガンダブロウは苦肉の策でツテを辿って馬を借りようとするもそれも失敗。一旦アカネと合流すべく待ち合わせ場所の茶屋に戻ると、そこには異様な人だかりが出来ていて……



「さあー寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! ()少女奇術師の大道芸だよ~!」


「なっ!?」



 茶屋の前の通りではアカネ殿が客を集めて大道芸を開催していた。彼女の周りには三十人ばかりの見物人が集まり、彼女の芸を物珍しそうに眺めていた。



「こちらは相棒のヒノチュウくんでーす!」


「チュウ~」


 アカネ殿の足元にポンと橙色のネズミが出現した。ネズミは尻尾の先と背中の毛の一部が燃えている様であった。

 あれは陰陽術……火行(カギョウ)火鼠(ヒネズミ)】。アカネ殿はあの術を加減が効きやすいという理由で気に入り、オウマからの道中で何度か発動させて練習していた。



「それではヒノチュウくんにこの火の輪を潜ってもらいましょう~!」


 これまた陰陽術で出現させたと思しき火の輪を火鼠がジャンプして潜ってみせると、観衆からはまばらながらも拍手の音が聞こえた。


「猿回しならぬネズミ回しか、なかなか面白いな」

「バカ、あれは陰陽術だよ。あのネズミは式神ってやつだ」

「へえ! でも、陰陽術の大道芸ってのも珍しいじゃないか」


 アカネ殿の大道芸は町人たちからはまずまずウケていた。確かに陰陽術を使った大道芸というのは実際珍しい。呪力は全ての人間が持っている力だが、それを陰陽術として自在に使える才がある者は数千人に1人とされている。しかも、ほとんどの術士がしかるべき国家機関に従事しているか、市井でもかなり高位の地位にいる事が多いので、このように路上で見世物として使用するような例はほとんど無いのだ。



「それでは最後にとっておきをお見せしますよ~! ヒノチュウ君、頑張って~!」


「チュウ~!」


 火鼠がアカネ殿の身体を駆け上がると、空に掲げた手から大きく跳躍!茶屋の屋根ほどの高さで鮮やかな色の火花を散らしてごく小規模な爆発を起こした。その様はまるで夏祭りの花火の様であった。

 


「おお~すげ~!」


 これには衆人たちからも大きな歓声が上がり、再びアカネ殿の肩に火鼠が出現して頭をペコリと下げるような仕草をすると今度は盛大な拍手が巻き起こった。


「どーも! どーも!」


 衆人たちはアカネ殿の足元にある茶碗に小銭を投げ入れる。


 ああ、そうか……アカネ殿は路銀稼ぎのためにこのような事を……


「ありがとうございます! ありがとうございます! …………ええと、この国の通貨は分からないけど、どのくらい貯まったのかな……? あっ、ガンダブロウさーん!」


 アカネ殿がこちらに気付きブンブンと手を振る。


「わたし、大道芸でちょっとお金を稼いでましたよ! 少しは旅の役に立つかなと思って!」


 茶碗に入った稼ぎを覗きこむ。十銭鍍(せんと)貨幣が数枚と一鍍瑠(どる)紙幣が数枚……額としては微々たるものだが、貧乏旅には実際嬉しい身入りである。


 しかし、アカネ殿の稼ぎを頼りにするというのでは何とも情けない……馬も結局手に入れられなかったし……


 俺はバツの悪さを隠しつつ「助かる」とだけアカネ殿に告げて、空を見上げた。


 陽が沈みかけ、夕暮れの時刻に迫りつつあった──今日の所はこの町で宿を取り、馬の事や路銀の事は気を取り直してまた明日方策を考えよう。




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「むっ! あれは……」


 翌朝、買い出しのついでに町の広場に出ると、掲示板に貼ってある仕事の依頼書が目に入った。


 

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【依頼書】

依頼人:黒石(クロイシ)金左衛門(キンザエモン)

依頼内容:近頃「虹の泉」近辺を野盗が根城にし、

周辺地域の特産物の流通を阻んでいる。

「虹の泉」のほとりに群生する薬草「ハッコーダ草」の流通も止まり、

そのせいでワシの持病の痔が悪化しておる。

「ハッコーダ草」を採取し、ヒロシンキの町にいるワシ黒石(クロイシ)金左衛門(キンザエモン)に届ける事が出来た者には褒美を授ける。


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「これだ!」


 黒石氏と言えば、この周辺で一番の富豪として知られている人物だ。

 その報酬とあれば千鍍瑠(どる)、いや一万鍍瑠(どる)貰えたとしてもおかしくはない。馬を買う資金としては十分に足りるだろうし、もしかすればしばらくの間、路銀で悩まされることは無くなるかもしれなかった。


 しかもヒロシンキの町といえば旅の通り道でもあるため、旅程のロスも少ない。


「やろう、やろう! 困ってる人を助けられるなら一石二鳥だしね!」


 アカネ殿も乗り気だ。この仕事、受けるしかあるまい!


 確かに危険もあるが、野盗程度が相手なら俺の剣術とアカネ殿の陰陽術でどうにかなるだろう。まあ、アカネ殿はこの世界の人間に陰陽術を直接行使するのは避けているので、戦力にはならないかもしれないが少なくとも自分自身の身を守る事は出来る。


「よし、ならば善は急げだ!」


 「虹の泉」はツガルンゲンから南方へ数里先のソワダ高原にある。


 俺とアカネ殿は早速町を出ると「虹の泉」を目指して南へ歩き始めた。



≪どうでもいい雑記③≫ 通貨について


ジャポネシア世界の通貨ですが、現実世界の貨幣価値で表すと


1鍍瑠(ドル)=1$=およそ110円

1銭鍍(セント)=1¢=およそ11円


となります。町の位置関係もそうですが、現実世界とリンクしてそうなネーミングのものは、だいたいリンクしてる世界観です。

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