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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第4章 落日の荒野編(クリバス〜クギ〜)
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第151話 老人と少年!(前編)

前回のあらすじ:ガンダブロウ一行は一晩の宿をとる為、道中のとある神社を訪れる。



「すみませーん! 誰かいますか〜?」



 ヨロズ神社の門を潜ると、廃墟かと見まごう程に古びたお社があり、まずマキは今夜の宿泊の許可を得るべく神社の責任者を探した。しかし、入口から何度か呼び出してみるが、反応はなかった。



「不在でしょうか?」


「うーん、どうだろ……あ、でも扉は施錠されてないね」



 ふむ。ではこの神社の主は中にいるか、もしくはそう遠くには行っておらんだろう。だが、勝手に中に入るのも失礼だし、しばらく外で待たせてもらおうか。


 と、思ったの矢先、「おじゃましま~す」とまるで気心の知れた友達の家に入るかのごとくマキがお社の中へと入っていってしまう。



「お、おい! 勝手に入っていいのか?」


「いいの、いいの。どうせ司教権限でヨロズ神道の施設は利用自由なんだからさ」



 ボロボロとはいえ仮にも神様を祀るお社にこんな無作法に入っていいものか……と逡巡するも、その間にもマキはズカズカと奥へと進んでいく。


 しかし、まあ今更こんな細かい事に気を揉んでも仕方ないか。サシコやアカネ殿と顔を見合わせ、俺達もマキの後について中に入ることにした。


 お社の中は意外と広く、誰か人がいないか確認しながらギシギシと軋む廊下を歩いていく。すると、しばらくして奥の間から何やら話し声が聞こえてきた。



「やっぱり中に人がいるみたいだね」



 ふむ。この神社の主であろうか。

 奥の部屋にいて入口からの呼び声は聞こえなかったみたいだが……んん?近づくにつれ話し声が鮮明になってくると、その声色に怒気が混じっている事が分かるようになる。男二人が何か言い合いをしているようだが……


 ううむ……何やら取り込み中のようだし、今入るのは辞めといたほうがいいか?

 と、俺が思った矢先、マキは何ら遠慮することも無くスパンと部屋のふすまを開けた。



「すみませーん、私、美人過ぎる司教として有名な吉備牧薪(キビノマキマキ)ですが今夜一晩ここに泊めてもら…」


「こりゃあ! またやらかしてきおって、このクソガキが〜!」



 マキが部屋に入るやいなや老人の怒号が鳴り響いた。

 一瞬、勝手にお社に入ってきてしまった事への叱責かと思ったが、すぐにその怒りの矛先が俺たちではない事に気がつく。



「へーくしょっ! 相変わらず小うるさいジイサンだな!」



 ハゲ頭に修道着のガッチリした体格の老人──身なりからしてこの神社の神主であろうか──は、部屋の奥にいる青年を怒鳴りつけているようであった。青年は何故かずぶ濡れで、上半身裸に手ぬぐいを首にかけドカッとあぐらで座り込んでいた。



「あれ? あいつは確か……」



 赤茶色のボサボサ髪と生意気そうな吊り目……

 間違いない、こいつはさっきクリバスの門で騒動を起こしていた木下特攻斎とかいう男だ!



「ぬぬぬ、生意気な……今度という今度はもう許さんぞ! そこに直れい!」



 老人は壁にかけられていた木槍を掴み、木下に対して構えを見せる。

 すると木下も「黙ってやられるか!」と叫んで立ち上がり、やはり近くにあった木槍を掴み老人に応戦するように構えた。



「へっ! ジイサン、オイラの腕を昔のままだと思うなよ!」



「小童がはねっ返りおって! 性根を叩き直してやる!」



 二人は今にも打ち合いになりそうな雰囲気である。

 ふーむ、穏やかではないな……あまり部外者が顔を突っ込むのはよくないが、ひとまず……



「あのー……」



「……? のわ!? だ、誰じゃお主ら!?」



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「いやー、先程はお見苦しいところをお見せした。まさか紅鶴御殿の司教様一行がお見えになるとは……」



 木下とのいざこざは一先ず水入りとなり、改めて俺たちと話すための座を設けると長身の老人はバツが悪そうに頭を掻いた。



「ワシはこのヨロズ神社の神主、呉光承恩(クレミツジョウオン)と申します。して、司教様がこのような所に何用でお越しでしたでしょうか?」



「ちょっと訳あってウラヴァに向かう道中でして。緊急の出立だったもので宿の手配もできておらず、押しかけで申し訳ないですが今夜一晩泊めて貰えないかなと思いまして」



「ほう、そうでしたか」



 マキがざっくりした事情を説明する。


 まあ、逃亡同然で紅鶴御殿を無断で出奔してきたとは言えないだろうな。



「こんなボロ神社でよければいくらでも使ってくださいな。もっとも今日に限っては鬱陶しいヤツがおりますが……」



 そう呉光氏が言うや否や、部屋の外の廊下から声が聞こえる。



「おおーい、ジイサン! 着替えるものってなんかないか!」


「やかましい! 今は来客対応中じゃ!」



 呉光氏はまるで息子を叱りつけるかのように、傍若無人な態度の木下に怒声を浴びせる。ふむ、どうやら二人は旧知の間柄のようだが親族という訳でもなさそうだし……



「ふーむ。困ったもんじゃ」


「あの……」


「……なんですかな?」


「あの青年は、一体何者なんですか?」



 こう質問すると、呉光氏は小さく嘆息したのちあの無頼漢のような青年の出自について語ってくれた。



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