第134話 炎の獅子!
前回のあらすじ:サシコの前に劣勢に立たされた三池乱十郎は奥の手を解禁する……!
一人称視点 サシコ→マキ→サシコ
「ズアアッ!!」
三池は獣のような唸り声と共に突進!
烈火のような勢いで直線的に剣を振り下ろしてきた!
「ぬぐうッ……!!」
なんとか受け太刀するも、先程とは比較にならない程の膂力と剣圧!
今度は逆にアタシの方が押し込まれる!
「シャア!! シュイィッ!!」
今度は力まかせに連撃を繰り出してくる!
火行と空行の掛け合わせで強化した剣の力を持ってしても防御するのが精一杯だ!
毒キノコを誤って口にした者が、麻薬成分によって一時的に興奮状態に陥り通常では考えられないほどの馬鹿力を発揮する事があるというのは聞いた事がある……これはそれを識行の作用で意図的に引き出しているという事だろうけど…………まさかこれ程強力な力を発揮するなんてね!
うーん、こういう単純な身体強化には天羽々切に持ち替えて戦ってもあまり効果はないし……さて、どうしたものか。
「サァ!! ドウした!! 五行使いトハ!! 【龍の玉視】のチカラとイウのは!! こんナものなのカァ!!」
ぐぅ……アタシの眼……百年に一人とか言われる程の凄い力が秘められているらしいけど、ぶっちゃけ自分ではそんな大それた力があるなんて全く実感できないんだよね!
それに、金鹿の人体実験によって付与された4つの属性もまだ十分に使いこなせる訳じゃない。さっきはぶっつけ本番で何とか技を出せたけど、あれは先の金鹿との戦いでコジノさんが火行と空行をかけ合わせて技を出していたのを見様見真似でやってみた結果、たまたま上手くいったというだけ。色んな技を安定して出せる様になるにはもっと試行錯誤と練習が必要だ。
でも今のアタシにそんな時間はない……アタシに今出来るのは今まで見聞きした色々な六行の技を、再現可能な範囲で試してみる事だけだ!
「実戦では型にとらわれず、状況に応じて即興で太刀筋を選択する事が必要……でしたよね? 太刀守殿……」
アタシは足を止め剣を水平に構えた。
「ノッコッコ!! 正面カラ迎え撃ツ気かァ!! 馬鹿メ、死ネィ!!」
アタシは三池の振り抜く剣に合わせ、横薙ぎに剣を放った。
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「識行【連弩征矢雀】!!」
私は術を発動させながらサシコちゃんと配下の戦いを注視している金鹿に攻撃を仕掛けた。
「おおっ?今度は誰の術かな?」
数十体の小型式神を連射する識行の直接攻撃用陰陽術……しかし、この技は一撃一撃の威力はあまり高くない。案の定金鹿の展開していた結界にアッサリとはじかれる。
「ち……やはり私の【征矢雀】じゃ届かないか」
だが、これは想定内。
もともと破壊力の低い識行の技でヤツの結界を破れるとは思っちゃいない。今のは術が発動してから着弾するまでの時間差を利用した、いわば陽動。私の居場所を気取らせなければ何でも良かった。そして、その思惑通り、私は金鹿に気づかれずにヤツの脇を抜け……目標に到達する事に成功した。
「……でも、本物の矢ならどうかしら?」
そう、私がヤツの気を引いてまでたどり着きたかったのは甲板の淵に備え付けられた連弩砲!
この固定砲台からの射撃なら私の陰陽術より破壊力が出せるはず!
固定の連弩砲の使い方はむかーし、我門塾の教本で読んだ事があるだけで実際に操作するのは初めてなんだけど……まあ、いけるっしょ!私、天才だし!
「ヒェッヒェッヒェ……君かぁ!」
金鹿は一瞬遅れてこちらに気づくが一手遅い!
何故か照準が既に内側に向けられていた事も相まって、金鹿が対応するよりも早く連弩砲の砲火は放たれた!
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「がアあっ……!」
三池との剣の撃ち合い!
横薙ぎに放った斬撃は三池の突進の力が合わさった振り下ろしに跳ね返され、その衝撃でアタシは身体ごとふっ飛ばされる!
「……くうっ!」
まずい!
こっち側にこの勢いで飛ばされ続けると船外に弾き飛ばされ地上に落下してしまう……!
「そノまま落ちテ死ねィ!!」
ぐ……万事休すか……!
と、覚悟を決めたその時……
「おおっと!」
背後で誰かに抱きとめられる。
太刀守殿!?と一瞬思ったが、この華奢な腕の感触は太刀守殿のものではない。
「よく頑張ってくれたばい」
「コジノさぁん!」
アタシを助けてくれたのはコジノさんであった。
ふと見ると彼女が戦っていたキノコ兵士たちの群れは全滅していた。
おお、流石はコジノさん……でも、一体どうやってあの不死の軍団を倒したというの?
「ホホォ! キノコ兵どもヲ倒シたカ! 君モ僕の技ノ弱点に気づイタ訳か!」
「弱点? そんなものは分からんかったよ。ただ斬り続けていたらいつの間にか動かなくなっとっただけや」
ええっ!?
「ま、何百回と斬ったばい。それだけ斬れば、たまたま当たりどころが悪かったという事もあるやろ」
何か相手の技を破る作戦があると思ってたけど、単なるゴリ押しだったのね!?
まあ、それで勝ってしまうのだから大したものなのだけど……
「でもお陰でこっちも十分に溜める事ができたと」
……え?溜める?
「ハクオカ無外流"破崘炎舞"! この技は発動後に続けて斬れば斬るほど威力を上げる技! 斬っても斬っても立ち上がる敵とは願ってもない相手だったばい!」
おお、なるほど……金鹿と戦った時には不発だったコジノさんの技にそんな特性があったなんて……!三池は意図せずにコジノさんの技を無限に強化させる機会を与えていたという訳ね!
火行の身体強化を極限に重ねた技ならば、あの三池の剛力にも対抗できる!
「ばってん、こんなに斬撃を重ねた"破崘炎舞"はウチも初めてやけん、今どれほどの破壊力になっているかは全く想像もつかん」
コジノさんはそう言うと剣を構え、凄まじい勢いで三池の方に突っかける!
「この威力……お前の身体で試させてもらおうか!」
「ノッコッコッコ! 面白い! 実に面白いヨ! しかし、どンナ破壊力ノ技も当たラなケレばどうとイウ事も……」
と、三池が回避の為に動こうとした時……
「ん…………ナ!? か、身体ガ……動かン……!?」
驚愕と共に足が止まる。
いや、足が動かせなかったというのが正しいだろう。
「……ふうっ……どうやら成功していたみたいね」
「ハッ……ま、マさか……!?」
ようやく気づいたみたいね。
さっき吹き飛ばされた時横薙ぎに払った剣撃……あの瞬間、イチかバチかで土行の重力倍加の作用を三池に放った。これも見様見真似の技。かつてオウマの見張り棟で喰らった御庭番十六忍衆・阿羅船牛鬼の……
「横薙ぎ…………"縛不破壟"……!」
「お、おお……き……キサマ……」
三池は重い身体を動かし剣を防御の為に構えようとしたが、時すでに遅し。コジノさんは三池の目の前に迫り、攻撃の体勢を既に整えていた。
「ハクオカ無外流【天獅吼】……」
剣から発する火炎が雄源な獅子を型取り、コジノさんの身体を覆う!
炎の色の獅子は広大な地平を駆け抜け、獲物を仕留めるように三池の身体を引き裂いた!
「" 千 尋 ・ 破 崘 炎 舞" !!」
「グノゥオオオオオオオ…………!!!!」
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