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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第3章 混迷の中原編 (オヤマ村周辺〜ミヴロ)
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第132話 天空の双剣!

前回のあらすじ:アカネは金鹿の野望を止めるため、再び能飽の方舟へと飛び立つ!


一人称視点 明辻泉綱→サシコ



「我、富嶽の神域に足を踏み入れたり!! 五行合一………………【神奈河(カムナガワ)】!!」



 金鹿が陰陽術を発動させると、虹のように極彩の光を放つ呪力の暴流が洪水の如き勢いで地上へと放たれた。


 この恐るべき術が地上に届けば人も建物も飲み込まれ、生きとし生けるもの全てが死に絶える事になるだろう。当然、村で待つ私の子供たちもいつかは巻き込まれる事になる……


 クソ!何としてもヤツの術を止めなければ……



「させないッ!」



 と、その時──

 空中に突如巨大な炎の壁が出現し、呪力の瀑流が地上に降り注ぐのを阻止した。



「【濃灯火壁(ノートンカヘキ)】・最大出力!!!!」



 …………ッ!! マシタ・アカネ!!


 地上に落下するガンダブロウを助けに船から飛び出した彼女が再び舞い戻り、結界を発動させて金鹿の術に対抗したのだ!


 術のぶつかり合いは激しく大気を揺らし、衝撃波と閃光がミヴロの夜空に迸る!



「ふんぎぃ〜〜〜〜〜〜!!」


「……ほほォ!! 異界人め、やりおるわィ!!」



 【神奈河(カムナガワ)】はまるで無限の谷底に流れ込む滝のごとく炎の壁に飲み込まれていく……!


 こ、これが異界人マシタ・アカネの本気の結界!なんという凄まじい出力か!


 目の前で繰り広げられる光景が人間同士の戦いによるものとはにわかに信じ難い!どちらの術も人智を遥かに超えている!まさに神々の(いくさ)……地を這う我ら凡人には到底予想など出来ない領域での戦いではあるが……



「ヒェッヒェッヒェ! しかし、その結界もいつまで持つかのぅ!」



 金鹿の余裕の表情は消えない。

 それもそのはず。ヤツが術を発動するのに触媒とし使っているのはあのマガタマだ。ほぼ無尽蔵に呪力を放つあの神器がある限り、いかに地異徒の術を駆使するとはいえ、先に呪力が尽きるのはマシタ・アカネの方である。しかも彼女は防御に精一杯で金鹿に反撃する余裕はない様子。



「一度発動した【神奈河(カムナガワ)】は呪力が尽きぬ限り、七日七晩止まる事はない! 君はそれまで結界を維持できるかのぉ〜?」



 このまま行けばジリ貧……ヤツのあの術を止めるには彼女が地上への無差別攻撃を防いでくれている間に誰かが金鹿本体を倒し、呪力の根源を断つほかはない。



「ぐ……うう……!!」



 あと少し……あと少しだけ時間を稼いでいてくれれば私の身体が回復し、動く事ができるようになる……!

 そうすれば【神奈河(カムナガワ)】を発動するのに集中している金鹿に背後から奇襲をかける事ができる!


 だが、船上ではまだあの三池乱十郎(ミイケランジュウロウ)も健在だ。ヤツに妨害される事なく、かつ金鹿の結界を破って奇襲を成功させる確率は限りなく低い。


 ……予定通りであれば御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)が既に援軍として派遣されてきているはずだが、彼らの援護を期待して悠長に待っていられる猶予もない。今この状況を打開するにはやはり私がやるしか…………



「……ん?」



 ふと、浮遊する金鹿の様子を確認するために目線を上げると、何かが帆柱(マスト)に沿うように落下して来るのが見えた。【神奈河(カムナガワ)】の激しい逆光で姿がよく見えないが、その影は2つあり、真っ直ぐに金鹿の方に落ちていくのが確認できた。



「あ、あれは、まさか……!」



 そうか……そうであった!


 まだこの戦いには彼女たちがいたのであったな……!

 

 

「とやああああああ!!」



 先に落下しながら金鹿に接触した少女が漆黒の太刀を振るうと、

 バギィィン!!

 と音を立てて、まるで硝子細工に金槌を振り下ろしたかのごとく、いとも簡単に金鹿の結界破られた。



「むうッ!?」



 ふいを突かれた金鹿は驚きながらも襲撃者たちに対して振り向いたが、その時には既に二人目の襲撃者の追撃が目前にまで迫ってきていた。



「ハクオカ無外流【天獅哮(てんしこう)】!!"破崘炎舞(ばろんえんぶ)"!!」


「ぬおおおっ!?」



 斬撃は咄嗟に防御のためにかざした金鹿の手を切り飛ばす。



「今度こそ……腕ば切り落としたばい!」



 金鹿にしたたかに急襲を加えた二人の少女は船の甲板に着地すると、手傷を負わせた敵に対し、油断することなく再び剣を構えた。




「おおお……そうじゃった。まだ君らがいたのォ…………宮元住蔵子(ミヤモトスミサシコ)武佐木小路乃(ムサキコジノ)!」



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「金鹿馬北斎ッ……!!」



 帆柱(マスト)の上からの奇襲攻撃……一定以上の痛手を追わせることは出来たが仕留めるには至らず、発動させていた術も片腕だけで放出状態を維持していた。


 

 むむぅー……捕まった際に取り上げられた武器を探しだすのに手間取り、戦線に出るのが遅れてしまった結果、うまく奇襲が出来る時期に出て来られたのは良かったんだけど……これを奇襲成功と見るべきか千載一遇の機会を逃したと見るべきか。太刀守殿の戦いに少しでも役に立てたのならいいんだけれど………………て、ハッ!!



「太刀守殿は!?」



 咄嗟に辺りを見渡す……が、太刀守殿の姿はない。


 先程、甲板から武器を探しに一度船内に戻る時、確かに太刀守殿とアカネさんが金鹿一派と戦う姿を目にした。それなのに今は太刀守殿の姿もアカネさんの姿も見えない…………ま、まさか……!



「太刀守なら既に死んだぞ!」



 いずこかより最悪の事態を告げる声がした。


 振り向くとそこには小決闘の審判員の男──確か更井とかいう──が、血走った目と興奮した様子で立っていた。



「太刀守は三池殿に敗れた!そして、無様にこの船から地上に落とされたのだ!」



 な……太刀守殿が船から落とされた!?

 そんな……そんな馬鹿な!



「う、嘘……」



「嘘ではない!マツシタ……いやマシタ・アカネも敗北を悟り船外に飛び出して行ったわ!今更お前たちだけで抵抗しても我らの計画を邪魔する事は…」


「ハクオカ理心流【天巌(アマイワオ)】"西波碧(せいはへき)"!」



「ぐほおッ!」



 更井は全てを言い切る前にコジノさんが放った地を這う電撃を受け、その場に昏倒した。



「戯言を聞く必要はなか! サシコちゃん、あすこを見い!」



 コジノさんが指差す方に目を向ける。



「あれは……アカネさん!」



 そこには空中で結界を張り、金鹿の術を防ぐアカネさんの姿があった。



「マシタ・アカネは村雨殿ば助けるために船の外へと飛び出したんやろう……だから村雨殿もきっと無事ばい!」



「……コジノさん!」



「ウチらは目の前の敵を倒す事だけに集中するんやッ!」



 コジノさんは言い終わるや否や赤く稲光りする斬撃……ハクオカ理心流【天巌(アマイワオ)】"東天紅"を金鹿に飛ばす。


 ミヴロの町で戦った時は金鹿の結界を一撃で破ったこの技も今回は既に復活した金鹿の結界に弾かれ効果はなかった。



「……ちっ」


「ヒェッヒェッヒェ! 流石は吾輩の見込んだ二人! 美美っときたぞぇ! 美美っと!」



 金鹿は高笑いを上げると、身体に埋め込まれた無数の【玉視】がギラリと光り、マガタマの杖を地上に向けたまま突風を発生させた。



「ぬぐう!」



 す……すごい風圧……!前に進めない!

 


「その強さは新世界を切り拓く為に必要な力……しかし、今はまだ君らの出る幕ではない! 旧世界の掃除が終わるまで少し大人しくしていてもらおうかの……三池くん!」



 金鹿は私達二人との間に間合いを作ると、その隙間にキノコのようなけったいな髪型の男が割り込み行く手を阻んだ。



「ノッコッコッコ!今度は小娘二人が相手か……異界人や太刀守と比べれば役者不足だが、致し方ないネ!」



 むむ……この気配……かつて御庭番十六忍衆と対峙した時に感じたのと同等の威圧感!相当の手練……まずはコイツを倒さないと金鹿に近づけないという訳ね!



「……サシコちゃん!」



 コジノさんの視線に気づく。

 この強敵を倒すには、コジノさんとの連携は不可欠……


 アタシはコジノさんと呼吸を合わせると、剣を天羽々切から普通の小太刀に持ち替えた。そして、お互いに合図を送り合うこともなくごく自然な流れで同時に駆け出す。



「ハクオカ無外流【天獅吼】……!」

「エイオモリア無外流【武蔵風】……!」




「さあ!今度こそ僕を満足させてくれ給えヨ……トッタリア新当流『髏涅讃崇(ルネサンス)』!! "菌界衆轢(きんかいしゅれき)"!!」



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