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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第3章 混迷の中原編 (オヤマ村周辺〜ミヴロ)
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第131話 地を這う影!

前回のあらすじ:落下するガンダブロウを助けたのは羅蝿籠山であった…


※一人称視点 羅蝿籠山




───────────


─────


──



「ぐぅ……行ったか……つって」



 河原での明辻泉綱、村雨太刀守との戦闘。

 お頭は"菌界衆轢"で奴らに有利に戦いを進めていたが、能飽の方舟から放たれた異様な呪力──おそらくは御珠守殿がマガタマを使用したのだろう──を察知すると彼らとの戦闘をキノコ兵士たちに任せて船に退いた。


 しばらくのち、キノコ兵士を一掃した明辻泉綱と村雨太刀守もお頭を追って浮上を始めた能飽の方舟に飛び乗り、河原にはキノコ兵士にされた幻砂楼の遊民(ルネサンドジプシー)たちの骸と倒されたフリをしていたアッシだけが残った。



 満身創痍の中、化け物どもの戦闘に巻き込まれず、かつお頭のお仕置きからも逃れられたのは良かったのだが……



「能飽の方舟が浮上…………ちっ!計画が早まったのか……」



 御珠守殿の計画では、船が浮上したのちにマガタマを使って大洪水【神奈河】を起こし、地上のすべてを洗い流すという事であった。つまりこのままここにいればアッシも呪力の洪水に巻き込まれてしまうという事……それはマズイ。なんとかして船に乗せてもらうか、船の最終到着地点であるジャポネシア最高峰「フジ・アラト」の頂上に先回りせねばならんが……ううむ、どうしたものか?第一、今は明辻泉綱にやられた傷で満身創痍で動きもかなり制限されるし、合流出来たは出来たでお頭にしくじった咎を責められてお仕置き=処刑されてしまうだろうし……



 ……と思案を巡らせていた時。ふいに背後から気配を感じた。



「おい、そこのお前」



「誰だ!?」



「……お前、金鹿の私兵か? え? そうだろ?」



 男は浅黒い肌に赤い装束のスラリとした七尺近い(約2メートル)長身。そして、その肩には特徴的な腕章がつけられていた。


 葵の紋章をあしらった銀の腕章……つまり……



「ま、まさか貴様は……!?」



「いかにも。俺は御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)猿飛丈弾(サルトビジョウダン)だ」



 御庭番!!?


 ついに御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)がアッシらを討伐しに出張って来たかっつって!!


 ……ぐ……くそ!

 よりにもよってアッシが満身創痍の時に来るとは!これでは満足に戦うことも出来ない!



「既にボロボロのよーだが、立場上見逃す訳にもいかん。なるべく痛くはしねえから覚悟を…………て、んん?待てよ……」



 猿飛はガサガサと懐から(ふみ)を取り出し、その内容を確認するとニヤニヤと笑みを浮かべた。



「ははーん。さては金鹿に見捨てられたなァ、お前!」



 うぐ……図星だ。



「アイツらあの船から何かしらの方法で地上を根絶やしにする攻撃を仕掛けてくるんだろ? そう船に侵入している間者からの(ふみ)に書いてあるぜ、なァ? こんなとこにいちゃ攻撃に巻き込まれて一緒に死んじまうんじゃないのか? エエッ?」



 やつが読んでいる文はおそらく船にいる間者から送られてきたものだろう。現状をかなり正確に把握しているようだが……



「へっへっへ……しかし、それならちょうどいい。お前、ちょっと協力しろよ」



「……は?」



「この土壇場で見捨てられた以上、今から奴らの元に戻ったとしても先は知れてるだろ? だからいっそ、こっち側に旗替えしちまえって話さ」



 裏切りの示唆……

 本来傭兵の間で敵に寝返るという行為は御法度。それをした瞬間に信頼は永遠に失われ、この世界で生きていく事はできなくなる。だが、今は死ぬか生きるかの瀬戸際だ。判断を迷っている暇はない。



「それとも命を捨ててまで義理を通すか? むろん、協力してくれれば命の保証をするが」



 ……背に腹は代えられぬ……か!



「…………分かった。協力するっつって」



「正直でよろしい! 俺は訳あって今はまだあの船に近づきたくなくてな。お前にゃ俺の駒として動いてもらうぜ……そらっ!」



 猿飛はそういうとこちらに3つ、巾着袋を投げてよこす。



「これは?」



 巾着の中を確認するとそこには熱を帯びた薄紅色の灰が納めされていた。こ、この灰はまさか……



「そ……【蘇灸粉】!?」



「ああ、そうだ。とても貴重だから大事に使えよ。それとこいつも持ってけ!」



「え……そ、それは…………!?」




──


─────


───────────




「金鹿馬北斎!この美少女異界人マシタ・アカネがいる限り、アンタの思い通りにはさせないから!」



 そう叫ぶと、マシタ・アカネは凄まじい速度で飛行する能飽の方舟へと飛んでいった。【蘇灸粉】により回復した異界人の呪力は凄まじく、マガタマを使用した御珠守殿にもまったく引けを取らない程の威圧感があった。


 今のマシタ・アカネが全力で戦えば御珠守殿にもある程度は対抗する事ができるだろう。しかし、それだけで確実に勝てるという保証はない。まして能飽の方舟にはお頭もいる。


 チラリと助けた太刀守の様子を確認する。



「ぐ……ぅ……!」



 傷を負って意識を失っている。おそらくはお頭につけられた傷だろうが……

 ちっ!そもそもこいつらが来なければアッシはこんな目にあってなかったのに…………しかし、今はこいつの力がいる。不本意だがここは少しでも勝率を上げるために一刻も早く太刀守の傷を癒し、戦線に復帰してもらわなければならない。



「忌々しいが……残りの【蘇灸粉】を使うしかないかっつって」



 猿飛から渡された巾着から【蘇灸粉】を太刀守にふりかける。

 これで傷と体力、呪力を癒やしてもらったらコイツにも働いてもらう……アッシ一人で()()を使って能飽の方舟に乗り込んでもあのバケモノども相手にはまともに戦えないだろうからな。



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