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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第3章 混迷の中原編 (オヤマ村周辺〜ミヴロ)
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第120話 決戦!ノアの方舟!(中編)

前回のあらすじ:マキVS百合沢喪奈!


一人称視点 マキ→アカネ



「圧死しな!土行【黒穴(クロアナ)】!」



 百合沢喪奈(ユリサワモナ)は地球儀──確か地動説とかいう異端学派が唱える世界球体説に則って作られた立体地図──をかざすと、無詠唱で術を発動させる。



「……ッ!」



 再び空間の歪みを感知して跳躍回避すると、私がもといた場所に黒い球体が出現!同時に床が球体の形に沿って瞬時に消失した!


 恐らくは土行の"凝固重点"の作用で強力な重力場を発生させたのね。ううむ……これは当たればひとたまりもなさそうだ。まあ、当たんなきゃいいだけだけど。


 

 私は対抗策を打つため「触媒」の()を取り出した。



「ホオズキの花言葉は"偽り"……識行【迷香擬華(メガギガ)】!」



 【迷香擬華(メガギガ)】は自分の姿を偽りの幻覚で隠匿する陰陽術。先程、怒鳴寺荼毘蜻(ドナテラダビト)という男の姿に変身したのもこの術で、今回は身体を透明にして敵の攻撃の的を絞らせない。



「これは……確か熊野古道伊勢矢(クマノコドウイセヤ)の……」



 そう。この術は以前に戦った御庭番十六忍衆(ガーデンガーディアン)熊野古道伊勢矢(クマノコドウイセヤ)の使った花を触媒にした技だ。


 私の属性と同じ識行の技だし、非常に使い勝手が良さそうなのでキヌガーにいた頃から密かに使えるように練習していた。見様見真似だったのでまだ使える種類も少ないけど、この短期間でここまで仕上げられたのはひとえに私の才能のおかげ。ああ、我ながらなんと器用なのか……



「さァ。どこにいるか当てられるかな?」



 先程の重力場攻撃は一発の破壊力が高い代わりに連発不能な類いと見た。しかも、攻撃範囲も一回につきタタミ1畳ほど。



「……ふーん。面白い事するわね」



 想定される次の一手はあてずっぽうで同じ技を撃って来るか、それとも以前に私がやったように狙いを定める必要のない範囲攻撃を使ってくるか。あるいは一旦引いて体勢を立て直すか……いずれにせよ対策は既に準備している。攻めの一手ならその間隙を縫って接近、至近距離から稜威(いず)高鞆(たかとも)あらため回転式銃ピースメーカーで一気に畳み掛ける。守りの一手ならば真面目に相手する必要はない。百合沢が引いたスキに奥の部屋に移動してしまえばいい。


 どっちでも私は一向に構わないけど…………さあ、どう出る?百合沢喪奈(ユリサワモナ)


 

「………………アナタ、もしかして吉備牧薪?紅鶴御殿の司教の……」



 ……!

 なかなか鋭いわね。でも……



「……だったら?」



 紅鶴御殿の戦いが知られていれば、熊野古道伊勢矢(クマノコドウイセヤ)と私が戦った事はある程度推理できる。ここに侵入してきた事からも私が村雨くん側の人間だというのも予想がつくし、時間をかければ理詰めで当てる事もそう難しくない。ただ、それが分かったからといってこの術に対処できる訳ではないわ。

 


「うふふ、当たり? 当たりね? うふふふ……」



 百合沢喪奈は自分の推理が的中した事を確認すると、不快な笑い声を上げる。

 


「アナタ、自分が誰より頭いいと思ってない? 自分が計画した事は何でも自分の思い通りになると思ってるでしょ? んんっ?」



 …………。

 ま、ここで挑発に乗れば敵の思う壺だね。


 それにヤツがこのまま挑発し続けてくれるなら、私としては期を見て奥の扉に進んでしまえばいいだけだし。



「愚民どもにはマガタマ研究の第一人者とかジャポネシアきっての才媛だとか言わて持て囃されてるみたいだけど……アナタは今日思い知る事になるわ。正規の方法でチンタラ身につけた知識じゃ、及びもつかない領域があるという事をねぇ!」



 百合沢がそう言放つや否や、彼女の周囲の本棚やら机やらがフワリと宙に浮く…………それを飛ばしてあてずっぽうで攻撃する気!?



「お前の考える様な事は分かってるんだよォ!」



 百合沢が地球儀を振ると、宙に浮いた物体は一斉に奥の扉に飛んでいき扉の前を塞いだ。



「……ちっ!」



 扉を開けるのにはあれをどかさなければならないが、いかに相手から姿が見えていないとはいえ、戦闘中に百合沢に気づかれずにあれだけの質量を動かすのは不可能!


 く……私とした事が優位な状況にいながら受け身になって、行動の選択肢を狭めてしまった!



「やはりコイツは倒すしかないか……識行【連弩征矢雀(レンドソヤスズメ)】!!」



 移動しながら簡易式神【征矢雀】を連続召喚し、時間差で放つ!

 【征矢雀】は百合沢の結界にはじかれるが、これでいい。一発の威力は低くてもこちらの場所さえ掴ませなければ相手の技も当たらない。熊野古道伊勢矢の戦法まで真似するのは何となく嫌だったけど結局これが一番効率がいいのよね。悪いけど、このまま一方的に攻撃して結界を削りきったところで仕留めさせてもらおうかしら!



「今度は一転、波状攻撃か……単純ねぇ。研究者にしては戦術発想力が低いんじゃない?」



 百合沢はまたしても挑発的な言葉を口にすると、懐から何やらカルタの札のような物を2枚取り出す。



「さあ〜出ておいで。私のカワイイ下僕ちゃん……」



 あれは…………コジノちゃんが言っていた「王戯遊札」とかいう(アヤカシ)を召喚する札!?



「 解 ★ 封 !! 」


 


≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶

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「"海進猪(バタフライキック)突・乱(タービュランス)"!!」


「"七彩(スペクトルカ)花火(ラーバースト)"!!」



 空中をランダムで飛び回る真向海猪(フロンタデルフィン)を迎撃!七色の爆発が夜空を照らす!



「またも痛み分け!一進一退の攻防はどちらも譲りません〜!」



「ちっ!これもダメか!」



 試合が始まってかれこれ10分以上……うーん、どうも決め手にかけるわね。


 確かに津久田玄場(ツクダクロバ)は強い。それもある。それもあるのだが、それ以上に……



「フッフッフ!この僕とここまで渡り合うとは……アカネ!ますます好きになったよ!」



 このウザさ!キモさ!

 ヤツの少女漫画の王子様キャラしか許されないような言動が人の神経を逆撫でし、冷静な判断力を欠けさせる!

 


「……いくら言われてもわたしはアナタの事、好きでも何でも無いし、何なら嫌いですから!赤黒の金剛石(ブラディダイヤモンド)、突撃よ!」



 く……こんなセリフ言い返すと、ますます少女漫画ぽいじゃないの!


 あー、もう!

 反応しちゃ負けなの分かってるのに……わたしの馬鹿!




「かわせ!真向海猪(フロンタデルフィン)! ……ふふふ。まだ僕の想いが伝わらない様だね」


「伝わってるから嫌がってるの!」



 またも赤黒の金剛石(ブラディダイヤモンド)の攻撃はスカされ、真向海猪(フロンタデルフィン)も反撃にでるがこちらもまた当たらない。


 むむ……またこの繰り返し!埒が開かないわね!



「つかず離れずの攻防……まるで僕ら二人の様だね」



 うぐ……またキモいセリフ!



「そういうのマジでやめてくれないですか?ふざけてるのかもしれないですが、本当にシャレにならないレベルでドン引きしてるんで!」



「ふざけてなど無い!僕は至って真剣さ!」



「じゃあ、もっとドン引きですよオッサン!わたしといくつ歳が離れているか分かります?」



「年の差……? そんな些細な事はどうでもいい!」



 津久田は開き直ったかのようにそう言い放つ。



「運命を受け入れるのだアカネ!共鳴し合う二人には年齢も境遇も敵か味方かさえも関係ない!愛はすべての障壁を貫通する!愛は他のあらゆる理由に優先するのだ!」



「はあ!? 何よその理屈!? それはお互いが愛し合ってる時だけ通用する理屈で……」




 そこまで言って、はっとなる。


 お互いに愛し合っていれば年齢も境遇も関係ない……と、いうどこかで聞いた事のあるようなご立派な建前。テレビドラマや映画で聞けばうん、うんと頷けるだろうセリフも自分に置き換えたらそれはどうなんだ?


 つまり……わたしと誰か……

 年齢も境遇も違う男の人……そう例えば、その相手がガンダブロウさんだったとして……それで、仮にガンダブロウさんがわたしの事を愛していて……それで仮にわたしが……



 ……わたしが??



 わたしが何!?


 

 え!?

 ……その場合、わたしはどうするの!?



「……!スキ有り!」





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