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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第3章 混迷の中原編 (オヤマ村周辺〜ミヴロ)
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第119話 決戦!ノアの方舟!(前編)

前回のあらすじ:【富嶽杯】決勝戦の幕がついに切って落とされる!


一人称視点 アカネ→マキ




 試合開始の合図があると、わたしと津久田玄場(ツクダクロバ)はほぼ同時に小懸騎士(コケナイト)を投げ入れた。



「行け、真向海猪(フロンタデルフィン)!"海進猪突(バタフライキック)"だ!」



 津久田のイルカを模した水色の小懸騎士(コケナイト)真向海猪(フロンタデルフィン)は呪力の青い光を放ちながら真っ直ぐぶつかってくる。ならば、こちらも小細工する事なく正面から受けて立つわ!



赤黒の金剛石(ブラディダイヤモンド)! "閃星(ブリリアントシャ)輝断(イニングカット)"!」



 2体のコケシは舞台中央で衝突し、頭部をカチ合わせ鍔迫合いならぬ()()()()を演じる。



「ああっと!両者いきなり激しいぶつかり合いだ〜!」



 数秒間ギシギシと不協和音を上げて競り合ったのち、2体同時に後方に弾かれる。



「ど、どちらも譲らない!」

「互角だ!」



 観客が叫びを上げるが、彼らの反応した時には既にお互いに体勢を立て直し、次の攻防に移行していた。わたしは赤黒の金剛石(ブラディダイヤモンド)の推進力を活かし様々な角度から空中攻撃を仕掛けさせる。


 しかし、津久田もこの戦法を読んでいたのか、真向海猪(フロンタデルフィン)赤黒の金剛石(ブラディダイヤモンド)の対称線上に展開させ連続攻撃を同じく連続攻撃で迎撃した。2体の小懸騎士は、まるで磁石の吸着と反発を繰り返すように空中で衝突と通過を反復した。



「ふ……やるなッ!流石は僕の認めた女だ、アカネ!」


「うわうわっ!馴れ馴れしく呼ばないでよ!」



 クラスメイトか幼なじみの距離感で話しかけてくる44歳。

 いやー、キツイっす。



「つれないな!でも、そんな気丈なところもまた気に入ったよ!」



 いやいや、キモいキモい。キザな言い回しのつもりなのだろうけど、超見え透いてるというか女性経験の無さがにじみ出てるというか……正直黙っていれば結構ダンディーなおじさんなのに、どうして話し始めるとこうも残念なのか……


 て、あーもうっ!津久田のキモい言動に惑われて集中が切れてるよ!敵のペースに飲まれて後手にならないよう、ここはこちらから一気に技を仕掛けよう!



赤黒の金剛石(ブラディダイヤモンド)!"重炎(パイロカラット)雪崩(・メルトフロー)"ッ!!」



 舞台を飲み込むほどの炎の雪崩を発生させる面攻撃!



「むうっ!」



 おほほ!さあ、この攻撃の前にゴチャゴチャと話している余裕はあるかしら…………て、完全に悪役のノリね、これ……



真向海猪(フロンタデルフィン)!"波浪影歩(デルフィンズマーチ)"!」



 真向海猪(フロンタデルフィン)の前方に4体のイルカの形をした水の塊が出現!イルカは直立したまま、揃って前に進みわたしが発生させた炎と衝突し相殺する!


 むむ!どうやら真向海猪(フロンタデルフィン)の属性は水行のようね!わたしの得意とする火行の炎とは相性が悪いな……さて、どう戦うか。



「素晴らしい攻撃だったよ、アカネ!だが、今の攻撃は甲斐田震源(カイダシンゲン)との試合を観て対策済みだ!」



 ……こいつ、自分の試合の合間にも他の人の試合を観て分析していたのね。単なるデータマニアと侮っていたけど、実戦で即座に対応できるのは短い時間にも色々と思考を繰り返した賜物だろう。こういう勤勉さだけは真似したいところだね。



「では今度はこっちから行くぞ!」

 


 考えてる時間はない……か。

 でもこっちも玩具のバトルじゃない本物の実戦で鍛えられた自負がある!土壇場での対応力なら、負けないよ!



真向海猪(フロンタデルフィン)!"水輪鉄砲(バブルリングショット)"!」



赤黒の金剛石(ブラディダイヤモンド)"透明(クラリティ・フ)灯臺(レアライト)"よ!」



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「……ゆ、百合沢……様……!」



 金鹿馬北斎の研究室……足を引きずりながら扉を開けると、そこにはマガタマと金鹿の姿はなく、ひと繋ぎの黒衣を纏った暗い顔の女だけがいた。



「……は?なに、その格好?」



 槍を支えにようやく立っているボロボロの姿に女は侮蔑的な視線を送る。



「し、至急……報告を……」



「先生は小娘を追えと言ったはず。負けておめおめ逃げてきたのなら、使えない駒の言い訳など聞く気はないけど」



 金鹿の側近、百合沢喪奈(ユリサワモナ)だね…………今にも敗北の咎で処断してもおかしくないような顔だが、とりあえず槍を置いて彼女の前に跪く。



「お、お待ち下さい…………私は武佐木小路乃(ムサキコジノ)に敗れたのではありません……」



「なに……?」



「敵の新手です! 既に船内に敵の刺客が侵入しており……わ、私は武佐木小路乃の追跡中に襲撃を受けたのです……」



「……」



「こ……この一大事を金鹿様に報告しようと……恥を忍んで急ぎ戻って参りましたしだいで……」

  

 

 顔を上げて百合沢の顔をちらりと覗く。

 敵がすぐそこまで攻めてきている情報を伝えたのに表情はまったく変わる様子もない……



「……ち……ちなみに……いま、金鹿様はどちらに?」



「……なんで?」



「いや、その……逃げる際に敵の刺客について重大な情報を得ましたので、金鹿様に直接伝えたいのですが……」



「…………先生なら奥の部屋にいるわ」



 百合沢は部屋の奥の扉を指差す……む、確かに扉の方向からは異様な気配を感じる。あの扉の向こうに金鹿と…………夢にまで見たあのマガタマがあるかもしれない……そう思うと、慎重にならなければならないのは分かっていながらも、自然早足になる。



「で、では……」



 私が百合沢の横を通過し、部屋の奥に進もうとした時──

 突如周囲の空間が歪むのを感じる!



「おおっとッ!」



 咄嗟に跳躍!

 と、次の瞬間、私のいた場所の床がベコン!と音を立てて陥没!まるで何百貫もある落石が激突したかのようだ!


 コジノちゃんの言ってた、百合沢喪奈の重力操作の術か…………ふーー!危ない!事前情報と感知能力がなければペチャンコになってるとこだったわね!



「……いやー、バレちゃったか」



 コジノちゃんを追っていたトンボ男に擬態していた識行の術を解除し、元の姿に戻る。



「御庭番時代の前から仕えている子飼いの兵どもは先生の事は御珠守(みたまのかみ)殿と呼ぶのよ。それに呪力の気配の消し方がうますぎて逆に不自然だったわよ……」



 加えて仮に間違えて殺したとしても部下の命など毛ほども惜しんでないから即座に攻撃できた……てところだろうね。

 わずかの間にそこまで推理して行動に移す頭の回転と残虐性。なるほど、こいつは手強そうだね。


 ま、元々すんなり行くとも思ってなかったけど。



「マガタマはどこ?」



「教える必要、皆無ぅ〜」



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前回のあらすじ:【富嶽杯】決勝戦の火蓋がついに切って落とされる! 誤用 [火蓋を切る]と[幕を切って落とす]が混じっています。
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