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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第3章 混迷の中原編 (オヤマ村周辺〜ミヴロ)
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第107話 閃影!

前回のあらすじ:復活したコジノはサシコを連れて金鹿の研究室を脱出する!



※一人称視点 コジノ→サシコ



 

 サシコちゃんを背負い金鹿の研究室を飛び出すと、どちらが出口か分からないままとりあえず廊下をつっ走る。



「待てぇ!こらぁ!」



 背後からは追手……金鹿馬北斎(カネシカマホクサイ)の手下の男が追いかけてくる。


 追手は1人…………どうやら金鹿と百合沢喪奈(ユリサワモナ)は、追って来ていない様だ。よほどあの男を信頼しているか、それとも外敵の対処を優先してウチらの捕獲は後回しにしたか。奴のあの性格上、ウチらをタダで逃がすつもりはないのは間違いないだろうけど……差し当たってあの2人がいないのは助かるたい。

 


 …………気がかりなのはサシコちゃんの事だ。弱々しいながらも鼓動を感じる事から生きている事は分かる。しかし、呼吸はほとんど感じないし、呪力の流れもぐちゃぐちゃに乱れきっている。六行の属性を4つも追加でぶち込まれたのだから、こうなるのも無理はない。この船を出て何処かで介抱して上げたいけど……


 

「おい!止まりやがれ!」



 まずは、うっとおしい追手を撒くか。


 …………身体に入れられた(アヤカシ)の力──確か『星麒鵺(キマイラ・ジュピトル)』とかいう──。何となくだが引き出し方は分かる気がする。その力がどういうものなのかも……



「脚部……妖化!」 



「何!?」



 ウチは足だけ(アヤカシ)の力を解放。

 両足が馬のように変形し、大地を信じられないほど強く蹴ることができた……まるで自分自身が雷になったかのような凄まじい加速に自分でも驚く!


 おおおっ……!

 初めてやってみたけど、これはスゴか!


 追手をみるみる突き放していくたい……!


 

「ちっ、舐めやがって……(アヤカシ)の力を使えるのはお前だけじゃねぇんだよ!」



 楽勝で逃げ切れると思った矢先、突如として背後の男から強烈な呪力の気配……振り返ると、男の姿が煙を上げて変形していく!


 まさか……この男も妖化が使えるの……!?



幻砂楼の遊民(ルネサンドジプシー)の一番槍、怒鳴寺荼毘蜻(ドナテラダビト)を舐めるなよッ!」



 男の目は丸い複眼、背中からは4枚の薄羽、下半身は蛇のように細長く赤い堅皮に覆われている……その姿はまるで巨大なトンボ!


 怒鳴寺荼毘蜻(ドナテラダビト)は不快な羽撃き音とともに飛翔し、とてつもない速度でこちらに突進してくる!その手には先端が彫刻に使うノミのような形状をした槍!



「シャッッッ!!」


「ぐっ!!」



 サシコちゃんを、庇いながら身を伏せると間一髪で怒鳴寺荼毘斗(ドナテラダビト)は頭上を通過。



「ぎひひっ……よく躱したな!」



 怒鳴寺はウチらの上を通路した勢いのまま通路の進行方向側に陣取ると、羽根を高速で羽撃かせて対空し、槍を構えて再びこちらに向き直る。ギョロリと動いた青い複眼が怪しく光を放つ!


 く…………なんとか回避できたけど、対決は避けられない、か!流石に甘くなかと!

 しかし、サシコちゃんを庇いつつ、剣も持たない状態で果たして戦えるだろうか……



「しかし、次はない!我が愛槍・蜻蛉鑿(とんぼのみ)の一撃……受けてみよ!」



 ……来るッ!

 ならばこちらも、ぶっつけ本番!

 半妖化の力で対抗するしかない……!



「喰らえィ!トッタリア新当流(しんとうりゅう)豪邪馬(ゴウヤンマ)』!"蜉蝣稲妻(かげろういなづま)・水の()……"」



 狭い廊下を縦横無尽に飛びつつ、怒鳴寺の槍が目前に迫る!


 ……が!



「ぐボおッ!?」



 飛び回る怒鳴寺の身体を、突然床や壁から生えてきた無数の針が貫く!



「な……何だ、こ……れは……!?」



 ……えっ!?

 もしかして、これって………?



≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶

∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦

≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶



「はぁ……はぁ……」



 …………4回戦の死闘を終えて、満身創痍のまま控室に戻る。


 "サガスの神の子"平南土塔令(ヘナンドトウレイ)……次元が違うとはまさにこういう事を言うのね……

 想像を絶する…………まさに神がかり的な強さの相手であった。奇跡的に試合には勝てたものの、これが小決闘(コケットー)じゃなく、本当の戦いであったならば地異徒の術をフル活用して戦っても果たして勝てたかどうか……


 この【富嶽杯】で…………いや、このジャポネシアに来て対峙したすべての敵の中で間違いなく最強の敵。土壇場の土壇場で()()に気づき、逆転サヨナラ満塁ホームランを決められたのは何万分の1の幸運だった。次に戦った時は間違いなく負けるだろうね。


 自分で言うのも何だけど彼との戦いは、今大会随一のベストバウト。いや10年に一度の大金星。いやいや今世紀一番のジャイアント・キリング…………歴史の別れ目、パラダイムシフトだった。このジャポネシアの冒険での最大のハイライトと言って差し支えないだろう。



 彼との戦いは経てわたしは陰陽術の実力的にも人間的にも大きく成長出来たし、この事実上の決勝戦を制した今のわたしに死角は……



「ん?」



 控室の窓……ふと何かが光ったような気がして、外を見る。


 と、その瞬間、凄まじい爆音と共に強烈な閃光が発する!



「なっ……!?」


 

 振動と轟音が、玩具バトルでおかしなテンションになっていた頭を一気に現実に引き戻した。



「おいおい、何だよあれ!?」



 控室にいる他の選手たちやスタッフも突然の事態にざわつく。

 爆心地は船が停泊する河川敷…………すぐ近くだ!


「えー、選手の皆様ご静粛に!今安全の確認を行っていますので、どうかご静粛に!」



 慌てて現れた更井さんが、控室に緊急アナウンスを行う……

 外で起こっているのっぴきならない事態に空気が張り詰める……


 そ、そうだ……さっき見えた狼煙……ガンダブロウさんが近くに来ているのだった……!という事は、あの閃光はガンダブロウさんの戦いの光!?



「一体何が起こっているの……!?」



 その時のわたしは周りで何が起きているのか知る由もなかった。


 しかし、この時既に事態は風雲急を告げる混迷に突入していたのだと、後日聞いて知ることになった。


 事態が変転を始めたのは今から2時間ほど前、最初の狼煙が見えた時にまで遡る。


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