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兄を訪ねて三千世界! ~草刈り剣士と三種の神器~   作者: 甘土井寿
第3章 混迷の中原編 (オヤマ村周辺〜ミヴロ)
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第105話 六分の五行!(中編)

前回のあらすじ:金鹿は自分に5つの属性を付与するため、【龍の玉視】を持つサシコの身体で実験を行う!


※一人称視点 アカネ→サシコ



「お初にお目にかかる。次戦のお相手をさせて頂く平南土塔令(ヘナンドトウレイ)と申します」



 3回戦を終え、4回戦のはじまる前に控室で待機していると次の対戦相手から挨拶を受ける。



「あ、ども……」



 この【富嶽杯】で対戦相手にはじめて紳士的に話しかけられた。

 ヘッドバンドで長髪をまとめた白いローブの少年──といっても年下にはとても見えない老け顔──は、柔和な笑顔と落ち着いた低い声が印象的だ。



「僕と貴女は本来敵同士……ですが、主は"汝の敵を愛せよ"と仰せだ。お互い全力を尽くして戦ったのち、なお憎しみあう事なく、語り合う事が出来たらよいですね」



 お、おお……なんか凄く説法的な言い回し……牧師さんとかお坊さんみたいね。でも、めっちゃいい奴なんだろうな。それは何となく伝わってくる。



「貴女に神の恩寵あらん事を」



 平南土塔令(ヘナンドトウレイ)君は握手を求めて手を差し出す。



「はは。こちらこそ、よろしく」



 わたしはぎこちなく彼の手を握る……と、その瞬間!



「むウッ!!」



 平南土塔令(ヘナンドトウレイ)君が目をカッと見開く。

 何やら凄く驚いている様子だけど……え?わたし、何か失礼な事とかやっちゃった!?

 


「手から伝わるこの神気…………まさか、貴女は異界の者か?」



「え!?」



 う、嘘!?

 手に触れただけで、何で分かるの!?



「おお、神よ……!」



 今まで微笑みをたたえていた平南土(ヘナンド)君の顔が、醜く歪む。



「……主はおっしゃった。隣人を愛せよ。敵も異教徒も同様に愛せよ。ただし、異界人だけは……ぶっ潰せよ、と」



 ええええーー!?

 何、その教え!?



「4回戦を始めます!マツシタ選手、平南土選手、闘場に上がって下さい!」



 タイミングよく出番のアナウンスが聞こえる。平南土君は敵意むき出しの表情でこちらを睨みつつ、闘場の方に歩き始める。


 うぅ……せっかく気持ちよく試合に入れると思ったのに……何でこんな事になっちゃうのよ!



罪根(ざいこん)の深層より出し、悪魔の使途よ……この"サガスの神の子"、平南土塔令(ヘナンドトウレイ)桃源郷の鵲(ユートスピアマグピー)が主神・彌不芭(ヤフバ)の御名において、神罰を下そうぞ!」



 あ〜、もう!



「やれるもんならやってみな!」



 とりあえず、煽り返しとくかぁ!




≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶

∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦∦

≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≷≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶≶




「ふむ、これで3つ」


「ぐ…………はあ……はあ……」



 六行の属性付与……!


 1つが加わる度にその属性による攻撃をまともに食らうかのような想像を絶する苦痛と、身体に異物が混じる得も言われぬ嫌悪感……


 くぅ……!

 ここまで、3属性の付与に何とか耐えてきた…………そろそろ限界も近いけど……



「さて、いよいよここからが未知の領域。あと1つ加えれば前人未到の……5属性保持者じゃ!」



 最後の一つ……これさえ耐えればアタシの身体には5属性の呪力が宿る事になる……


 金鹿の計画のための実験というのは不本意だけど……

 5つの属性が使えるようになればアタシの剣術の糧になるはず!

 こうなったら、タダでは転ばない!必ず耐えて、力を手に入れてみせる!



「これが成功すれば君は史上初めて六行の5属性をその身に宿す人類となる!さあ、いってみよう!4つ目……火行!」



 金鹿が杖をかざすと、水槽に入れられた紅榴石のような【玉視】から炎が伸び、まるで罪人を火刑に処すようにアタシの身体を燃やし始める。



「ぐうぅう!!」



 とてつもない熱さ!そして、息も出来ない苦しさ!

 生きながらに高温で焼かれる責め苦……だけど死ぬことも出来ない!


 …………〜〜〜〜〜ッ!!

 耐えろ!耐えるのよ、宮元住蔵子(ミヤモトスミサシコ)

 ここが正念場…………こ、これさえ耐えれば……アタシの力は……



「ヒェッヒェッヒェ〜!頑張るのじゃぞ〜!」



 金鹿の声が遠い……

 目もかすんで……意識も遠のく……



「○☓△、■★……」



 もう、何を言っているかも聞き取れない……


 こ……ここまで耐えてきたのに……

 …………だ……ダメ…………意識を保ってられ……な……



「…………あ……」



 精神力が尽き果て、意識が消え去るその瞬間──


 

「御珠守殿!緊急事態にござる!」



 曇った視界に、研究室の扉が開け放たれるのが見えた。



「ああ!? なんじゃ、今いいところなのに……」



「刺客が……村雨(ムラサメ)"太刀守(たちのかみ)"岩陀歩郎(ガンダブロウ)と、明辻泉綱(アケツジイヅナ)の二人が、この船に迫っております!」



「何ィ!?」




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