第103話 魔眼コレクター!
前回のあらすじ:金鹿はコジノに転妖の術を施す。
※一人称視点 サシコ→アカネ
「……」
「おーい、コジノちゃん?」
「……」
「おーい」
……どうやら、金鹿馬北斎による転妖の術は終わったらしい。激しい光も止み、金鹿の持つ【王戯遊札】の中の妖の絵が消えている。
もしも、転妖の術が成功したのならコジノさんは妖への変身能力を得て無事なはずだけど……
「……ふむ」
磔にされているコジノさんはダランとして力なく、ピクリとも動く気配がなかった。
ま、まさか……
「失敗ですかね?」
百合沢喪奈があっけらかんと言い放つ。
「あああ……コジノさん……」
そ……そんな……!
こんなアッサリと死んでしまったというの?
せっかく仲良くなれたのに……
敵同士だけど、コジノさんは同じ秘密を共有できる特別な存在。短い間だったけど心を通い合わせる事ができたと思ったのに……
「うーむ、失敗しちゃったかぁ……まあ、仕方ないねっ!覇業に失敗はつきもの!次じゃ次!」
「さすが先生ぇ……前向きですねぇ……!」
人が1人死んでしまったというのに、金鹿も百合沢喪奈もまったくと言っていいほどその死に責任を感じているようには見えなかった。
外道どもめ……人の命を弄んでおいて何なのよ、こいつら!
「さて気を取り直して……サシコちゃん、お次は君じゃ」
キッと金鹿のふざけた顔を睨みつける。
今すぐにでも飛びかかっていってコジノさんの仇を討ってやりたいけど、百合沢喪奈の術で体が思うように動かせない……うぅ!悔しい!太刀守殿から与えられた使命も果たせず、助けたい1人も助けられず……敵に捕まった上、こんな思いをしなくちゃならないなんて……奴らの実験動物にされるくらいならいっそ今すぐ殺して欲しい!
「百合沢くん」
「はい、先生」
身体がふわりと浮く。
先程まで重しをつけられていたように動かなかった身体が今度は目に見えはい力に引っ張られ、金鹿の目の前まで引き寄せられる。
「ほおおぉぉ、【龍の玉視】……見れば見るほど美しい……」
金鹿はアタシの目をまじまじと眺めつつ、嘆息して言った。
「なんとも羨ましい。吾輩に君と同じ【龍の玉視】があれば計画をあと30年は早められたのに…………見給え」
そう言うと金鹿はいきなり自分の着物をバッとはだけさせ、胸部・腹部をこちらに見せつけた。
「な!?」
露わになったのは老人の痩せこけて骨張った身体……ではなく、眼!
色とりどりの無数の眼が身体の至るところにあり、ギョロギョロと動いて一斉にこちらを見る……ぎゃーー!何これ、ナニコレ!気持ち悪うぅぅい!
「ヒェッヒェッヒェ。これは吾輩が半世紀かけてジャポネシア全土から集めた【玉視】じゃ」
作り物!? 識行の幻覚!?
ううん、違う……これは本当に身体に埋め込まれている。こいつ、自分に足りない【玉視】の力を補うために、恐らくは【玉視】を持つ人を殺して奪ったんだ。
「全部で18個ある。一つ一つの力は【龍の玉視】には遠く及ばぬが…………全て合わせた呪力量は【龍の玉視】すらも凌駕する!」
「そう……ならアタシの眼も奪おうっての……?」
「数年前までなら喜んでそうしたが……流石にこれ以上【玉視】を埋め込むのは吾輩の体がもたんでの」
アタシの眼……【龍の玉視】を奪う事が目的と思ったけど金鹿は否定する。
「じゃあ何なの……?アタシにもコジノさんの様に妖と合体させるつもり?」
「いや。君にはもっと重要な仕事がある」
……?
重要な仕事?
「君には今吾輩が最も欲しい物を提供してもらうぞぇ」
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「" 透 明 灯 臺 " ォ!!」
「のわああっ!!」
赤黒の金剛石の技を食らい、果東毎里男の三盾走亀は上空に打ち上げられ、闘場に叩きつけられた。
「勝負あり!三盾走亀・戦闘不能!よって勝者……マツシタ・アカネ!」
ふぅ……果東毎里男、恐るべき強敵だった。
三盾走亀本来の鉄壁の装甲に加え、緑の甲羅"直弾緑甲"、赤い甲羅"追尾赤甲"、青い甲羅"爆撃青甲"の3つの甲羅を攻防一体に展開する技、そして最後の切り札として使った一時的に無敵となる"絶対星甲"の3つの盾を攻略するには本当に骨が折れた。
しかし、わたしは索敵能力とスピードの低さをついて炎の壁を展開。相手の移動力を削いでからのヒットアンドアウェイで最後は粘り勝つ事ができた…………【富岳杯】3回戦突破!!




