第0.1話 伝説の決闘!
異世界転生ものは初挑戦。パロディ多め、10万字完結を目安で
四季の大地ジャポネシア────
桜と武士と田園と、「もののあはれ」に満ちたこのオリエントな異世界は幾百年にも及ぶ戦乱の中にあった。
後世の年表で見れば「なんとまあ、よくも飽きずにやるもんだ」と言いたくなる程大小数えきれ無い戦役が行われた。無論、当事者たちにとってはどの戦役も極めて重大な事柄であったのは言うまでも無いが、その中でも「ミトの戦い」は取り分け重要な戦役の一つとして位置づけられていた。
当時ジャポネシアで国力第1位のエドン公国と第2位のバラギスタン帝国が雌雄を決した戦いであるからして、その重要性は捺して知るべしと言ったところであるが、この戦役を有名にしたのは巷で「伝説の決闘」と称されるある剣豪同士の一騎討ちが行われた事にも理由があった。
───────────
─────
──
ミト平原の一角……斬り伏せられた屍が無数に横たわる中、返り血で赤く染まった少年は刀を握りしめて立ち尽くす。
「一個大隊が全滅…………エドンの小僧よ、お主が1人でやったのか?」
龍の模様があしらわれた青黒の着物。精悍な顔つきの老剣士は現場に駆け付けるなり少年を睨め付けて言った。
「そうだ」
少年は短く答える。少年もまた鋭い視線で老剣士をにらんだ。
老剣士はニヤリと笑い「ほうほう」と感心した様子を見せたのち、ゆっくりと刀を抜いて言った。
「小僧、ワシと尋常に勝負せい! 我が名は緋虎青龍斎! 使う剣はバラギ新陰流『凱亜』!」
「では貴殿が音に聞こえし“バラギの竜騎士”か!」
「いかにも!」
老剣士はジャポネシア全土で五指に入ると目される大剣豪であった。その竜騎士の渾名は他国にも広く知られ、歴戦のサムライをすら震え上がらせた。
「竜騎士は獲物を決して逃しはしない! 小僧! ワシと戦場で見えた不運を呪うのだな!」
しかし、少年は恐れるどころか、笑みを浮かべて剣豪の挑戦を受けて立った。
「不運? 不運なんてとんでもない! 俺は貴殿のような剣豪との戦いを望んでいたのだ!」
「くくく! ワシを倒して名を上げると申すか? …………面白いッ! 小僧、名を名乗れい!」
「いいか、よく聞け! 俺は村雨岩陀歩郎! いずれ大陸最強の剣士になる男だッ!」
──
─────
───────────
この後、数時間に及ぶ死闘に勝利した少年はジャポネシア全土にその勇名を轟かせる事となった。
そして、続く幾多の戦場でも武勲を重ねた少年はやがて最強の武芸者に送られる称号”太刀守”を授かり、エドン公国の公王に養子として迎え入れられた。彼は己の勇気と剣腕をもって戦乱の世を見事にのし上がり、歴史にその名を刻んだのだ。
誠、あっぱれな半生。伝記にするにも戦記にするにも申し分ない。
しかし、この物語は彼の英雄譚でも戦乱に生きる戦士達の群像劇でもない──
この物語はとある家出少年とそれを連れ戻そうとする妹の、徒然なる旅行記なのである。
一言でもいいので感想頂けると嬉しいです!




