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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
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9、花も恥じらう学園祭!(発表、次期学園女王候補は?)

 一通りのステージが終わると、司会者である男女がステージに上がった。

女性司会者がマイクを手に、声高く叫ぶ。


「さあ、今年の『慈牡丹祭、男女人気投票』の結果を発表するわよ!」


 ワァー、と言う歓声が響く。

男性司会者が淡々と説明した。


「この人気投票は、慈円多学園の全校生徒が対象であり、投票者でもあります。またこの慈牡丹祭の来場者にも投票権が与えられます。なお全校生徒数は1442名。今年度来客数は約1万3200人。内、来場者による有効投票は2500票でした」


女性司会者がこの後を引き継ぐ。


「この人気投票で、次の『セブン・シスターズ』や『ファイブ・プリンス』が決まる訳じゃない。でもみんなも知っての通り、有力な指標にはなる。ここで発表された人が『インデペンデンツ』となる可能性が高く、その中から『セブン・シスターズ』や『ファイブ・プリンス』が決まるからね!それでは、女子の第5位!」


音楽が鳴り響く。


「2年F組、テニス部、ミリア・ザイツ・橋立」


 観客席から、褐色の肌の美少女が進み出て、壇上に上がる。

背は小柄ながらグラマーで、目のパッチリした可愛い感じの美人だ。

日・英・印のハーフで、日本有数の電機機械メーカー、橋立インダストリーの令嬢らしい。


 男性司会者が発表する。


「男子、第5位。幻刀げんとう れん2年 剣道部」


あ~、あの人か。

あたしは何となく見覚えのあるイケメンを思い出した。

まあ紫光院様に比べると、数段劣る気がするが。


「女子の第4位。2年A組、吹奏楽部、鳳 カンナ」


「男子、第4位。西守にしもり 陽翔はると2年 体操部」


女性司会者と男性司会者が交互に読み上げる。

次は女性司会者だ。


「女子の第三位を発表します!おお~っつ、コレは!大番狂わせか?いや、彼女の実力から言って、想定内って言えば想定内だけど、中々ない快挙だよ!」


女子司会者は勿体付けた。


「1年G組、卓球部、渋水理穂!」


「わあぁー」と言う歓声と「おおぉ~」というどよめきの両方が聞こえる。

当然だ。

1年生が次期セブン・シスターズ候補でもあるインデペンデンツに選ばれるなんて、まず無い事なんだから。

渋水理穂。

嫌なヤツだが、ヤツの可愛さとスタイルの良さ、そして人気の高さは認めざるを得ない。


女子司会者が、ステージ上に上がってきた渋水にインタビューする。


「すごいねー渋水さん。1年生なのにインデペンデンツになりそうなんて。滅多にない事だよ。」


「そんな~、私よりもっとキレイな先輩方がたくさんいらっしゃるのに、私なんかがこのステージに上がっていいのかなって、今、とっても戸惑ってます」


け~っつ!シラコイ事こきやがって。

最初から自信満々だったじゃねーかよ。

どうせまた、校内だけじゃなく、外部の親衛隊やファンも呼び寄せて投票させたんだろうが。


「渋水さんは入学当時から目立っていたし、中学時代からネットアイドルとしても活躍していたもんね。当然と言えば当然なんでしょうけど」


女子司会者は、渋水の言う事を聞いていないかのように、チクリと一言皮肉ったように思う。


 その後も、男女が一位まで交互に発表されていく。

 女子は以下だ。


2位、エスティ・ロスナバーグ。2年C組、イスラエルからの留学生だ。現在は射撃部。

1位、藤宮 姫野。2年D組、藤宮財閥の令嬢で女子バスケ部。


 男子の方は

3位、あずま 悠人ゆうと2年J組でコンピューター部。なんでも国際情報オリンピックと数学オリンピックで金賞を取った秀才らしい。

2位、朱雀門すざくもん 源治げんじ2年H組で弓道部。平安時代から続く名家の御曹司だ、

1位、北条ほうじょう すぐる2年D組でサッカー部。親戚に県知事、国会議員がいる。父親は神奈川県議だ。


 流石は慈円多学園だ。

よくもまあ、こんなに毛並みのいい人間ばかり集まったものだ。

あたしら一般ピーポーにゃ、永遠に縁の無い話だ。


 女子司会者の発表は、まだ続く。


「それじゃあ、例年通り女子はセブン・シスターズの候補になりそうな第七位まで発表するね~」


1位から5位まで発表された後じゃ、若干テンションは下がるが、

確かに『セブン・シスターズ』を名乗る以上、

第七位くらいまでは発表が続くのだろう。


「第六位、2年K組、水泳部。夕霧玲奈!」


確か彼女は『夕霧コンツェルン』のご令嬢だ。

七海から聞いた事がある。


「そして第七位!これも驚きだよぉ。なんと第七位は同数獲得!つまり二人いるの!しかもその内の一人は、またもや1年生だぁ!」

へぇ~、渋水以外に一年にそんな目立つ女がいたんだ。

まぁソイツには是非とも頑張って、渋水のヤローを蹴落として貰いたいもんだ。


「2年B組、文芸部。日野原葵!」


 紹介された彼女が、ステージ上に上がって行く。

たしかデカい新興宗教家の娘だそうな。


「そして最後は、1年E組、部活所属なし」


ホェッ、ウチのクラスじゃないか!

誰だ?そんな目立つ子、いたっけ?

ウチで一番の美人と言えば、学級委員の佐野美香子か?


「・・・天辺美園!」


ヘッ?

あたしは一瞬、時が止まった気がした。

天辺美園?って、ウチのクラスにあたししかいないんだけど?


「ウワァー」というような「ヤッター」と言うような「えええーー」と言うような、

複雑な嬌声が周囲で渦巻いた。


「ヤッターーッツ!美園っ!すごいじゃん、すごいじゃん、すごいじゃん!」


そう言って七海があたしに飛びついて来た。

だがあたしにはまだ、状況が理解できない。


「天辺さん!ステージに上がってください!」


ポケッとしているあたしに、女性司会者がそう言った。


「ホラ、ああ言ってるじゃん。さっさと行く!」


七海がかなり強引にあたしの背中を押し、ステージ下の階段まで押して行った。

そのまま訳わからず、ステージに上がる。


「天辺さんって言えば、現ファイブ・プリンスNo3で『氷の貴公子』と呼ばれた紫光院涼に、最初にお弁当を食べさせた女子として有名なんだけど、今の気持ちはどう?」


女子司会者はそう言って、あたしにマイクを向けた。

だが「どう?」と言われても、事態が全く把握できていないあたしには、返答しようがない。


 あたしが?インデペンデンツ?セブン・シスターズ候補?

いやいやいや、あたしは絶対にそんな凄い女の子じゃないって。

渋水に対抗できるような女じゃないよ。

 今は成り行き上、こうしてステージに上がったけど、

どうしてこんな状況になったのか、理解できないんだから。


 何も言えないあたしに、女子司会者はさらに解説を付け加えた。


「さらに天辺さんは、今回の慈牡丹祭では、男性票も多く獲得してるんだよね。セクシー・ナース姿が大好評!校内だけじゃなく、外部の来客者からもかなりの支持を得ているんだよ!」


彼女はメモを読み上げた。


「ここに来場者からの声があるんだけど『黒髪自然な女の子の、ちょっと際どいナース姿がグッと来た』『恥ずかしそうに胸元を押さえながら、頑張ってチラシを配り続ける彼女に、惚れちゃいました』だって!まだまだあるんだけど、天辺さん、すごい人気だよ!」


ヤバイ、顔が熱い。

汗が出そうだ。

確かにウレシイ気持ちもあるが、それでも素直には喜べない。

あんな格好は二度とゴメンだ。


「以上、今年度の慈円多学園『男女人気投票』でした!皆さん、ステージ上の彼女・彼氏達に、もう一度盛大な拍手を!」


 女性司会者がそう言ってしめると、「ワァー!」という歓声と共に、大きな拍手が沸き起こった。

あたしはその状況を呆然と見ていた。

このあたしが、セブン・シスターズ候補だって?

何だか、タチの悪い冗談みたいだ。


 その時、突き刺さるような熱い視線を感じて、横を見た。

渋水理穂の視線だ。

彼女は危険な光を目から放ちながら、あたしに明確な敵意の視線を向けていた。

この続きは、7月4日(木)に投稿予定です。

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