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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
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9、花も恥じらう学園祭!(ウソでしょ、この衣装!)

高校生の一大イベント・学園祭。

その後夜祭のステージで、美園のE組とライバルの渋水理穂のG組がダブル・ブッキングしてしまう。

どちらが後夜祭のステージを獲得できるか、

それは互いのクラスの模擬店の売上で決める事となった。


美園達はG組に負けないように、クラス一丸となって作戦を練る。

美園はその中でもメニュー・調理担当となり、得意の唐揚げとコロッケを作ったところ、

初日は大変好評であった。


そしていよいよ2日目、この日から外部の来客もやって来る。

売上も大きい。

この二日間の売上で、勝負が決まる。

 翌日、土曜日。

あたしたちはほぼ徹夜の状態で、コロッケと唐揚げを作り続けていた。

だが一度に全ては作りきれない。

よって第一弾として、コロッケ200個と唐揚げ300個を、3人の女子が十時までに学校に届ける。

後から第二段として、昼頃にコロッケ150個と唐揚げ300個を、あたしともう一人の女子で運ぶのだ。


 そして正午ちょっと前、あたしは残りのコロッケと唐揚げを無事に教室まで届けた。


「ふぅ~」


あたしは思わずイスに倒れ込む。


「お疲れ~、今日も売れ行きはだいぶイイよ。もう朝に持ってきたコロッケと唐揚げも大半は売れちゃったし。お好み焼きと焼きそばも順調だしね。今日は女性客も多いから、小倉餡トーストもよく出てるしね」


あたしはグッタリしながら、その言葉を聞いていた。


「そう、良かった。じゃあ一休みしたら、あたしも予定通りビラ配りに回るね。それまでちょっと休ませて」


すると一緒にコロッケと唐揚げを持って来た女子が言った。


「あ、じゃあ先にわたしがビラ配りに行くよ。美園は疲れてるでしょ。ちょっと休んでからでいいよ」


「悪いね、ゴメン」


七海が教室の隅を指差した。


「そのダンボールの中に宣伝用のコスチュームが入っているよ。着替えスペースは裏にあるから、そこで着替えて。チラシはコッチにあるから、それを持って行って」


七海のその言葉を聴きながら、あたしはしばらく目を閉じていた。


 三十分ほど休憩を取り、あたしもビラ配りに行くことにする。

さっき七海が言っていたダンボール箱を除くと、中には白いワンピースの衣装しか残ってなかった。


・・・他のコスチュームに比べると地味だな。ま、地味な方があたしらしくていいか・・・


あたしはその衣装を持って、着替えスペースに入った。


 三分後・・・あたしの目は点になっていた。


・・・なんじゃ、こりゃ?・・・


 あたしのコスチュームは『白い妖精』

・・・ではなくて『白衣の天使』、


つまり『看護婦』のコスチュームだったのだ。


 しかもなぜか胸元が菱形に大きく開いている・・・。

背中も大きくU字型に開いている。

これではブラジャーが着けられない!

(なぜか首元だけは、襟のみで閉めるようになっている)

 そしてトドメはスカート丈。

お尻が隠れるギリギリくらいの長さしかない。

あの渋水理穂のスカート丈より、さらに短いじゃないか!


「七海、七海!ちょっと!」


あたしは大声で七海を呼んだ。


「なによ、大声出して」


着替えスペースのカーテンから顔だけ出して、七海に小声で言う。


「ちょっと、宣伝用の衣装がマトモじゃないんだけど。他の衣装ないの?」


あたしにそう言われて、七海は衣装用のダンボールを覗いた。


「もう無いね。なに、なんの衣装だったの?」


あたしは周囲から誰も見えていないことを確認し、パッと一瞬だけカーテンを開いた。


「ああ、『ナース』の衣装ね。人気あるんだよ、それ」


ナース?

これがナースの格好か?

こんなHな格好のナースが、日本中にどこにいるんだ、バーロー!

いるならココに連れて来い!

あたしが小一時間、説教してやる!


「いくら人気があったって、こんなの着られないよ!」


あたしは、小声だが怒りを含んだ強い調子で言った。


「仕方ないじゃん。もうそれしか残ってないんだから」


「いや、さすがにコレは無理だって。ブラだって着けられないし」


「あ~、ニップレスとか持ってないの?」


どこの世界に、ニップレスを持ち歩いている女子高生がいるんだ?

(ちなみにニップレスとは、ブラジャーを着けられない時に胸の先端につける小型パッドのことだ)


「持ってる訳ないでしょ!ねぇ、あたしはいつもの制服でもいいじゃん。ウチの制服、十分可愛いし」


「ダメ!絶対ダメだよ!」


七海は強い調子で言った。


「制服なんかじゃ全然目立たないでしょ!ビラ配りが目立たなきゃ意味無いんだから!あたしが宣伝・広告担当なんだから、ココはあたしに従ってもらうよ!美園だって中上君に言ってたじゃん。『これはクラスのため』だって」


そりゃあ、そう言ったけど。

でもそれとこれとは状況が違い過ぎる。

七海はそう言うと、強引に着替えスペースのカーテンを引き開けた。


「なんだ、可愛いじゃん。大丈夫、言うほどヒドくないよ。それにその胸元もそんなに見えないよ。あたしも何度か着てるけど、ニップレス無しでも見えた事ないもん」


あたしは恥ずかしくて、胸元を押さえながら横を向いた。

本当に大丈夫か?

自分の胸元とか、自分で確認できると思えないが。


「ハイ、それじゃあチラシはコレだから。校門近くとか玄関ロビーとかを回って、入場客に配ってきて」


七海はナースキャップをあたしの頭に乗せると、チラシの束を押し付ける。

それを受け取って、あたしは上目使いに聞いた。


「ねぇ、本当に大丈夫かな?衣装が白だけど下着の色とか透けない?今日の下着はピンクなんだけど・・・」


「大丈夫、これは夏コミ用だから、そういう点も考慮して、布地は透けない素材を使っているから」


七海はあたしの背中を押して、バックヤードから客席側に押し出す。

一瞬、客やクラスの男子の目が、あたしに集まった気がした。

七海はそのままあたしを廊下まで送り出した。


「文化祭なんだから、みんな派手な格好してるよ!G組なんてビキニもいるってさ。美園なんて、まだ大人しい方だよ。大丈夫、行ってらっしゃ!」


そうデカイ声で言いやがった。

バカ野郎、デカイ声出すな!

余計人目を引くじゃねーっか!


 あたしはチラシで胸元を隠しながら、校舎内を歩いた。

しかしながら、この『お尻ギリギリしか隠れないスカート』の方は、いかんともしがたい。

それにしても・・・

本当にあたしの格好は大人しい方か?

 さっきから通り過ぎる人の視線が、あたしをジロジロ見ているような気がしてならないんだが?

学校内で『露出度の高いナース姿』って、かなり目立っているのではないか?

あたしは火照ってくる顔を隠すように俯きながら、指定された玄関前ロビーに急いだ。


 途中に階段!

ウソだろ。

この状況、絶対に下から丸見えだよ。

 あたしは今度はチラシでスカートの前を押さえながら、階段を早足で降りる。

登ってくる男性客の目が、あたしに集中する。

うう、勘弁してくれぇ~。

これ着て校内回れとか、それだけで罰ゲームどころか拷問レベルだ・・・


 やっと玄関前ロビーに到着した。

かなりの人出だ。

早い所、チラシを配り終えて、普段の格好に戻らねば。

親も来るかもしれないのに、こんな格好、死んでも見せられない。

親が泣くよ!


「二階、一年E組、模擬店『アルフヘイム』やってま~す!来て下さ~い」


あたしは無理して声を張り上げ、続々とやって来る来客者に、次々とチラシを手渡しいった。


 だがここでやはり問題が・・・

チラシを手渡す時、頭を下げるので少し前かがみになる。

するとあたしの衣装の胸元が、大きく開いてしまうのだ。

チラシを受け取る男は、大抵は視線がそこに行く。

あたしは急いでチラシで胸元を隠すが、

かなり奥まで見えているんじゃないだろうか?

七海の奴は「ニップレス無しでも見えた事はないから大丈夫」と言っていたが・・・

この点も心配だ。


 実は胸の無い女子の方が、胸元が開いた服の場合、奥の方まで見えてしまうからだ。

ヘタをすると『胸の先の見えてはならない部分』まで見えてしまう。

胸のある子は、この部分は服に押し付けられるので、まず見える事はない。

七海はあれでもCカップはある。

そしてあたしは・・・止めよう、この話題は。

 ともかく、この衣装では七海よりあたしの方が不利、という事だ。

来客の男子の中には、わざわざ話しかけて来て、長い間あたしを見物しようとする輩までいる。


「どこでやっている模擬店?」


「その喫茶店って、病院なの?その格好」


「可愛いね、キミ。ウェイトレスはみんなその格好?」


「異世界風の模擬店なのに、ナース姿なんだ。萌えるね」


うるっせーなぁ、人の身体ジロジロ見てないで、さっさと行けや。

イメクラじゃねーんだよ。


 だがコッチは宣伝、客引きという立場だ。

それに渋水理穂のG組には、絶対に負けられない。


「ありがとうございま~す。衣装は違いますけど、異世界風の模擬店です。美味しいですよ、ぜひ来て下さ~い」


あたしは作り笑顔で答える。

中には


「ちょっと写真撮らせて」


という男までいやがった。


 いや断るだけ、まだマシだろう。

黙ってスマホを向けてくる野郎どもも多い。

だが「写真撮らせて」と言われたら「嫌だ」とも言えない。

引き攣った笑顔でそれに答える。


・・・中学時代に比べると、あたしも変わったなぁ・・・

この続きは、明日6月30日(日)10時に投稿予定です。

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