9、花も恥じらう学園祭!(初日)VOL2
昼過ぎには多くのお客さんがやって来た。
お好み焼き、焼きそばの方も手が足りないので、あたしたち調理担当はフル活動だ。
昼過ぎ、今度は紫光院先輩が、剣道部の部員を4人連れてやって来たのだ。
「赤御門に聞いたんだ、一年E組で天辺が模擬店をやっているって。そうしたら剣道部の奴らが『ぜひ食べてみたい』って」
紫光院様は苦笑いしながらそう言った。
もちろん、あたしとしては大歓迎だ。
本当は紫光院様なら特別サービスでタダにしたい所だが、
そうすると周囲の目もあるし、他の客もいる。
仕方ないから、少しでも大き目の唐揚げを皿に盛る。
全員が唐揚げ4つずつとコロッケを2個ずつ買ってくれる。
ところでここで問題が発生!
なんと、まだ昼過ぎだって言うのに、剣道部の人が買った結果、
唐揚げが6個、コロッケも4個しか残っていないのだ!
評判がよく、テイクアウトできるコロッケと唐揚げが、予想以上の人気だったのだ。
あたしは慌てて、廊下で呼び込みをしている七海のところに走った。
「それはマズイね。せっかくいい評判が流れて、売れ行きが順調だって言うのに。お客が来ても『商品が無い』って言うんじゃね」
七海も難しい顔つきだ。
「どうする?」
あたしが不安げにそう聞くと、七海はしばらく考え込んだ。
「今から美園が急いで家に帰って作っても、今日はもう間に合わない。仕方ない、今日は後はお好み焼きと焼きそばとオニギリで乗り切るよ。美園は女子を何人か連れて、明日の分の食材を購入して、コロッケと唐揚げを家で作って来てよ。明日は外部の人間も来るから、今日みたいなミスは出来ない」
教室に戻ると、紫光院様と剣道部の人たちがちょうど食べ終わった所だった。
あたしと目が合うと、紫光院様が言った。
「噂通り美味しかったよ。みんなと一緒に来た甲斐があった。揚げたてだったら、もっと美味いんだろうな」
あたしはトレイを胸に抱えながら言った。
「ありがとうございます!本当は唐揚げはこの二種類以外にも、豆板醤のピリ辛唐揚げと、甘酢を掛けた唐揚げも考えていたんですけど、流石に手が回らなくて・・・」
「それは残念だな。ぜひ食べてみたかったな」
一緒にいた他剣道部員の人たちも、同じことを口にする。
紫光院様は立ち上がった。
「お世辞抜きに本当に美味かった。明日もまた来るよ」
そう言って剣道部の人たちは一緒に立ち去って行った。
あたしは俄然、やる気がアップした。
よし、今日はこれから徹夜で唐揚げとコロッケの作成だ。
唐揚げの下準備に二人、コロッケの下準備に二人、
合計4人が手伝ってくれれば、かなりの数を作れるだろう。
あたしは鼻息荒く、両方の拳を握りしめた。
あたしはクラスの女子四人と一緒に自分の家に戻った。
途中、大量にジャガイモと鶏モモ肉などの材料を買い込む。
家に付いたら、四人はそれぞれジャガイモを蒸す係、蒸したジャガイモを潰す係、鶏肉を一口大に切る係など、油で揚げる係と作業を分担する。
あたしは味の調整役だ。
唐揚げなら、鶏モモ肉に下味を付け、唐揚げ粉のスパイスや塩や醤油などを調整する。
コロッケの方は、ひき肉や切ったカニカマなど様々な具材を混ぜ、味付けをする。
コロッケはジャガイモの味を活かしたいので、下味も薄めだ。
あたし達が大量のコロッケと唐揚げを作る様子を見て、ウチの家族は目を丸くしていたが、
やっているあたし達はけっこう楽しかった。
女子五人がキャーキャー言いながら料理を作るのは、中々盛り上がるものだ。
その後、七海から今日の売上について連絡が来た。
売上額は10万4200円。
G組は11万6千円だそうだ。
この程度の差なら、ほぼ互角と言える。
勝負は一般客が来る、明日以降だ。




