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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
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4、仁義無き花火大会(後編1)

 あたしはしばらくバスケ部男子に囲まれていた。


「兵太といつから付き合っているのか」

「中学の時はどうしていたのか」

「どこまで行ったのか」


うぅぅぅ、そんなこと、聞かないでくれぇ~。

つい二ヶ月前まで、すぐそこにいる赤御門先輩の追っかけをしていたんだよぉ。

その人の前で、こんな事を聞かれるなんて、拷問に等しい。


どうやらバスケ部の連中は、あたしの事をよく知らないらしい。

まぁ赤御門先輩の追っかけなんて、それこそ『アルファベット三文字+48』のアイドルグループのメンバーより多いから、

一人一人なんて覚えていないだろうが。


「じゃあ行ってきます」


兵太のそんな声が聞えた。


あたしは焦って、兵太の方を振り向く。

おい、兵太。あたしをこんな集団の中に放っておいて、どこに行くつもりなんだ?


「あの、兵太はどこへ?」


あたしがそう聞くと、おしゃべり先輩が答えた。


「ああ、人数分の飲み物を買って来て貰おうと思って頼んだんだ。俺のオゴリ」


いや、アンタのオゴリかどうななんて、聞いてないよ。


「あ、あたしも行きます!」


そう言って兵太の後を追おうとする。


「いいよ、いいよ。もう一人一年が一緒に行ったから。女の子じゃ重いだろ」


そんな余計な気遣いはしなくていい。

どうやらこのおしゃべり先輩は、まだあたしを話の肴にしたいようだ。


 七時になった。

隅田川の方から、盛大に花火が打上げられる。

みんな一斉に、空に広がる色とりどりの光の花を見上げた。

あたしも、空に開いては消える大輪の花を見上げる。

キレイだなぁ、やっぱり夏の夜は花火だ。

隣に誰かが来た。

兵太かと思って振り向くと、そこには赤御門様が来ていた。


「天辺さんが兵太と付き合っていたとは、知らなかったよ」


ふいに赤御門様がそう口にした。

あたしは驚いて、彼の方を見上げる。

赤御門様は花火を見上げたままだ。

彼の芸術的なほど整った顔が、赤や緑や黄色の花火の色で染まっている。


「移り気な女、って思われてますよね・・・」


あたしは小さい声でそう言った。


「そんな事はないよ。兵太はすごくいい奴だ。天辺さんとは似合いのカップルだと思うよ。それに・・・」


赤御門様は一度言葉を切った。


「身近にいる大切な人に気づくって、とてもいい事だと思うよ。普通の人は、そういう身近なチャンスに中々気づけないかもしれないしね。気づいた時には手遅れになってしまうこともあるし」


・・・同じような事は、咲藤ミランも言っていた。赤御門様も彼女と同じ気持ちなんだろうか・・・


赤御門様があたしの方を見た。

こんな至近距離で、赤御門様に見つめられたのは初めてだ。

心臓がドキンと一拍強く打つ。


「僕としては、天辺さんの美味しい弁当が食べられなくなったのは残念だけどね。君の作ってくれた弁当は、本当によく考えられていて、美味しかったよ。ボリュームもあったし」


すぅ~っと、心が赤御門様に引き寄せられる気がした。

まるで重力に引き込まれるように・・・

ヤバイ、ヤバイ!ダメだ、ダメだ、ダメだ!

これじゃあ、あたしは本当に浮気性だ!

あたしは赤御門様の視線を避けて、さらに小さい声で言った。


「たまに作って持って行きます。兵太に弁当を届ける時に・・・」


それを聞いて赤御門様は、優しく笑いかけてくれた。


「ありがとう。兵太も幸せだよな。こんな料理の上手い彼女が出来て。天辺さんと兵太は同じ中学から来たんだってね?幼馴染だと聞いているけど」


「はい、兵太とは幼稚園の時からの付き合いになります」


あたしがそう答えると、赤御門様はちょっと微妙な顔をした。


「そうか、幼馴染同士で付き合っているのか・・・」


それを聞いて、あたしは気になっていた事を聞いてみた。


「赤御門先輩は、咲藤先輩と幼馴染なんですよね?」


彼はちょっと驚いたような顔をした。


「この学校では誰にも言ってないはずだけど。誰に聞いたんだい?」


「咲藤先輩から。インターナショナルスクールで一緒だったって」


「ミランが言ったのか・・・」


赤御門様が寂しそうな顔をする。彼らしくない表情だ。


「彼女はカッコいいからね。インターナショナルスクール時代も、みんなの中心だったよ。いつも光り輝いている感じだった」


大玉の花火が打上げられる。空一杯に赤い花火が広がった。

赤御門様の表情も、赤く染まった。


「彼女の隣に並べるような男になりたい、そう思っていたよ」


・・・赤御門さん、あなたはその資格が十分にあります。あなたより素敵な男性はいません・・・

・・・そして誰より、咲藤さんは、あなたが隣に来る事を待ち望んでいます・・・


だがあたしが、その言葉を口にしていいのだろうか?

当人同士が中々言い出せない、その言葉を、第三者のあたしが?

あたしと兵太だって、中々に自分の気持ちに素直になれなかったではないか。

ファイブ・プリンスのリーダーにして、学校中の女生徒の憧れの的である赤御門凛音。

そして学園を支配する美女、セブン・シスターズの一人である咲藤ミラン。

彼らほど似合いのカップルは無いはずなのに、それでも互いの中の何かが二人を遠ざけるのか?

あたしは、兵太との今までの事を考えていた。


この続きは、6月11日(火)の7時頃、投稿予定です。

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