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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
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4、仁義無き花火大会(中編)

ついに互いに意識して付き合い始めた、美園と兵太。

しかし兵太はバスケ部の練習で忙しく、ほとんど会う事ができない。

唯一の二人のデート・イベントが花火大会。

この日を楽しみにしていた美園。

しかし花火大会に行くと、そこでバスケ部の連中と出会ってしまい。

「オマエが帰った後、川上さんが『花火大会にどうしても行きたい』って言いだしてさ」


川上さん?

あたしの耳がダンボのように大きくなった気がした。


「彼女もずっと部活詰めだろ。『たまには記念にみんなで花火でも見に行こう』って言われてさ」


あたしはチラっと兵太の方を見た。

兵太も盗み見るように、あたしの方を一瞬だけ見る。


「もうすぐ赤御門さんと一緒に来るだろう。川上さん、浴衣に着替えて来るって言ってたから」


赤御門様まで!

あたしは二度ビックリした。

そりゃ、あたしもバツが悪いよ。

なにせ二か月前まで赤御門様の『お弁当お届けレース』に参加していて、あの人を追いかけ回していたんだから。

最初に声を掛けられた時に、素早く全員をチェックして、赤御門様がいない事で安心していたのは甘かった。


 あたしは兵太をちょっと後ろに引っ張った。

バスケ部の連中に聞こえないように耳打ちする。


「この『浅草寺が穴場』って、誰かに聞いたの?」


兵太はさらにバツが悪い表情をした。


「クラブの先輩から。去年、この花火大会に行ったって話してたから。まさか来るとは思ってなかったんだよ」


バカッ!、バカバカバカ!

本っ当に思慮が足りない!

バスケ部で話せば、川上さんの耳にも入るに決まっているだろ!

そうしたら、彼女が妨害工作に出るって、何で考えられないんだよ!

その『昔のゲーム○ーイ並の処理能力』しかない脳みそで、少しは考えろっての!バカ!


「なに二人でコソコソ話してるんだ?大丈夫だよ。二人のデートの邪魔はしないって」


いや、するだろ。

って言うか、もうしてるし。

そもそも川上さんがココに来るってだけで、十二分に邪魔になっている。

こりゃあ、川上さんと赤御門様が現れる前に、早々にここを立ち去るしかない!


「あ、赤御門さん、来たよ。お~い!こっち、コッチぃ!」


バスケ部の一人が山門に向かって手を振った。

あたしもその方角を見る。

そこには数ヶ月前まであたしが恋焦がれた赤御門凛音様と、数週間前まであたしと兵太を争っていた川上純子ちゃんがいた。


くぅ~、最悪の組み合わせじゃないか!


赤御門様が合流する。


「あれ、兵太もいたんだ?あと天辺さん?」


赤御門様はあたし達を見て、ちょっと意外そうな顔をした。


「どうやらデートみたいですよ。兵太に最近出来た、噂の幼馴染の彼女と!」


さっきの「幼馴染の彼女」と聞いた男が、そう説明しやがった。

このおしゃべり男が!

デートだと思ったんなら、気を利かしてさっさと消えろよ!


赤御門様と一緒にいた川上純子ちゃんは、あたしを粘っこい目つきで睨んでいた。

前の『腹を空かせた山猫の目』より、もっと陰湿な感じになっている。

おしゃべり男が「幼馴染の彼女」と言った瞬間、ビクッと彼女の顔が引き攣った。


バツが悪い事この上ないが、ここまで来て知らん顔はできない。

あたしは赤御門様に挨拶をした。


「お久しぶりです、赤御門先輩。この前はご面倒おかけしました」


考えてみれば赤御門様に会うのは、あの査問委員会以来だ。


「いや、いいんだよ。あれくらい。問題が解決されて何より良かった」


赤御門様は、そう言って優しく笑いかけてくれた。

ヤバイ、この笑顔。またあたしの心が引き込まれそうだ。

慌てて視線を赤御門様から引き剥がす。

兵太を探した。


「え、いいんですか?新品のバッシュなのに!」


「いいよいいよ。親父がアメリカの土産で買ってきてくれたんだけどさ、俺には合わなかったから。サイズは26で多分おまえには丁度いいと思うからさ」


「助かります。もう今のシューズがダメになって来ちゃって・・・」


おいおい、兵太。

あんた、あたしを放っておいて、なにバスケ部で盛り上がってんだよ。

あたしら、何のためにここに来たか、忘れてるんじゃないだろうな?


そんなあたしの様子に気づいたのか、赤御門様が二人に声をかける。


「なあ、兵太たちがデートなら、僕らが引き止めちゃ悪いだろ。二人にさせてやれよ」


だがその先輩は雰囲気を読まなかった。


「おい、そうなのか?俺たち邪魔か?二人っきりになりたいのか?」


そう言って兵太の肩に手を回す。


「いや、別に、邪魔って事はないですけど・・・」


いや、このシチュエーション、その返答じゃダメだろ。


「だよな。せっかくじゃん。一緒に花火見物しようぜ。彼女も一緒でいいからさ!」


いや、そっちは良くても、コッチは良くないんだよ。


だが兵太は完全にバスケ部の先輩に取り込まれたようだ。

あたしはタメ息をついた。

はぁ~、タメ息と一緒に幸せが逃げていく・・・


「まったく、しょうがない奴らだなぁ」


赤御門様が苦笑いしている。

ふと見ると、川上純子が「してやったり」という表情をしていた。

にゃろ~、これを狙っていたな。

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