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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
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2、仕方ない、バイトでもすっか(後編)

 翌日、あたしと七海は九時十五分前に「ラ・フォレット」に入った。

手早く制服に着替えると、私服と手荷物をロッカーに仕舞う。

店長は既に来ていた。


「今日は作業というより、先輩のやる事を良く見ていて。わからない事があったら、僕でも誰でも聞いてくれればいいから。あと今日は初日だから、五時に上がっていいよ。夜番の子が四時には来るから」


お店の開店時間は九時半からだ。

女子大生くらいの先輩が店内の掃除をしているので、あたし達も出来る事を尋ねる。


「じゃあウィンドー拭きをお願い。曇りとか残らないように注意してね」


言われた通り、窓拭き用クロスと洗剤を持ってウィンドーを拭き始めた。

だが五分と経たない内にダメ出しが出た。


「これじゃあダメよ。洗剤の拭き残りの後が残っているじゃない。正面からだけだと気づかないから、斜めからもよく見て」


確かに、正面からだと曇りが見えなくても、斜めに透かして見ると、薄いスジのような曇りがあった。


「すみません。わかりました」


あたしはそう返事してウィンドーを拭き直す。面倒だが仕方がない。

ウィンドーの掃除が終わり、さっきと同じ先輩に見てもらう。


「OK、いいわ。じゃあ次はレジの打ち方を教えるから付いて来て」


あたし達は店内に入ると、レジの操作を教わった。

一応、レジの前にはパンの写真とバーコードが付いているので、それを読み取れば価格は覚えなくても済む。


「まあ覚えちゃえば手で打った方が早いかもね。その内、自然に覚えると思うけど」


その後は焼きあがったパンの陳列、ケーキの並べ方、ドリンクの入れ方について簡単に説明を受ける。

九時半開店の少し前には、何人かのお客さんが店の前に並び始めた。

そして開店と同時に、ほぼ途切れる事なくお客様が入って来る。

イートインの方にも何人かのお客さんが入る。

店が開店すると、もう先輩店員はあたし達に構っているヒマは無い。

厳しい指示が飛ぶ中、あたし達は必至に動いた。

十一時半ぐらいからお客さんがグッと増え、息をつくヒマもない。

と言っても、あたしが実際に役に立ったのは、焼きあがったパンを店内に並べる時と、

レジで買い上げられたパンを袋に入れるくらいだが。

午後二時を過ぎた頃から、やっとお客さんが減って来た。


店長が「休憩を取って」と声を掛けてくれる。

あたしと七海、それと最初に教えてくれた女子大生らしい先輩が一緒に休憩に入った。


「普通は一人か多くても二人で休憩なんだけどね。今日は特別かな」


その先輩は言った。彼女の名前は飯倉さんと言い、渋谷にある女子大に通っている。もうすぐ二十歳らしい。


「高校生って言うから、あんまり期待してなかったけど、二人ともよく働くじゃん」


「他にも高校生はいるんですか?」七海が聞いた。


「十人近くいるはずだよ。高校生は普段はあまりシフトに入れないけど、夏休みとかはけっこう多いかな」


「やっぱり女子だけですよね」と七海。


「ここはそういう点も売りのお店だからね。男子は厨房だけだから、人数も少ないしね」


そこで飯倉さんは手に持っていたアイスコ-ヒーを口にした。


「あとバイトの中でも、ちょっと派閥みたいのもあるから気を付けてね」


「派閥、ですか?」


あたしは思わずそう言った。嫌だなぁ、ここでもそういうのがあるのか。


「表だってはそんなに無いんだけど・・・。女子社員とバイトの間では少しあるかな。それとあなた達と同じ女子高生なんだけど、すごく生意気な子がいるのよ。その子には気を付けて」


「「生意気な子?」」


あたしと七海が同時に口にした。


「そう。確かに可愛い子なんだけどね。それを鼻にかけちゃって。ヘタに店長や他の男の子もチヤホヤするもんだから、余計に図に乗ってるんだよ。ちょっと作業を頼むと『それは私の仕事じゃない』とか言っちゃってさ」


あたしと七海は目を見合わせた。どこの世界にもそういう女って、いるんだなぁ。


「あなた達は影響されないでね」


彼女はそう言うと残りのアイスコーヒーを飲み干して立ち上がった。

休憩終わりの時間だ。


 それからは夕方の繁忙時のために、あらたなパン出しをしたり、トレイを拭き直したりと、それなりに忙しく過ごす。

午後四時、夜番の子がやって来た。


「おはようございま~す」

「おはようございま~す」


夕方なのに「おはようございます」は違和感があるが、販売業では普通らしい。


「おはようございます」


背後からあまり景気の良くない声がした。三人目の子だ。何となく不機嫌そうだ。

店長があたし達に声を掛ける。


「ちょっと二人来て、夜番の人を紹介するから」


飯倉さんが小さな声で、あたしに耳打ちする。


「いま入って来た子だよ。さっき話した子」


あたしはそれを聞いて、店長の方に向かった。

途端にあたしは目を丸くした。遅れて来た七海も目を剥き出している。


そこに居たのは、渋水理穂だった。

この続きは、6月4日(火)午前7時頃、投稿予定です。

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