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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
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2、仕方ない、バイトでもすっか(前編)

 一学期の最終日のお昼。

約束の屋上に川上純子ちゃんは来なかった。

あたしと兵太だけだ。


あたしはホッとした。

これで彼女の言っていた勝負は、あたしの勝利で決まった訳だ。


だが一学期が終わった今、あたしも兵太と十回連続でお弁当を食べる事は出来なかった。

つまり兵太を確実にあたしの物にするのは、二学期まで待たねばならない、という事だ。


「来なかったな、川上さん」


兵太もホッと安心したように言った。

なんだ、コイツ?

まだ川上さんに未練を残してたのか?

彼女に面と向かって

「俺は美園を選ぶ!」

って言わなくて済んで、良かったって事か?


「部活の間、川上さんのお弁当、食べないでよ!」


あたしはハッキリと釘を刺した。

あたしの眼が届かない所で「お弁当お届け十回連続達成!」とか言われたんじゃ、たまったもんじゃない。


「お弁当が必要な時は、必ずあたしに言う事!あたしが作って持っていくから。いい?」


あたしは眼力を込めて、兵太にそう言った。

場外乱闘や避けたいが、彼女が仕掛けて来るならやむを得まい。


「わかった、わかったよ。それに夏休み中は自分で弁当を持っていくから」


あたしは目線を兵太から外して、屋上の入口を見つめた。

川上さんには、確かに悪い事をしたと思う。

彼女の、富士急ハイランドで一人で泣いていた姿を思い出すと、今でも胸が痛む。


だが、あたしももう、彼女に兵太を譲る気はない。

彼女が挑んで来ると言うのなら、徹底的に戦うまでだ!


「じゃ俺、部活に行くから」


兵太はそう言うと、そそくさと校舎内に入って行った。

まったく、アンタがそんなハッキリしない態度だから、彼女に付け込まれるんだよ!


教室に戻ると、如月七海があたしを待っていた。

今日はもう授業はない。下校するだけだ。


「川上さんとの決着、着いたの?」


「まあね、決着ついたって言うより、最後は彼女の試合放棄、って感じかな」


「良かったじゃん。これで安心して、美園は中上君と毎日イチャイチャできるって事だね」


「ちょっと、『イチャイチャ』なんてしないよ。それに毎日なんて会えないって」


「どうして?」


「兵太は夏休み中、ほとんど毎日部活があるんだよ。おそらくあたしよりも川上さんの方が、毎日兵太に会えるだろうね」


「お~、それは心配だねぇ、美園ちゃん」


七海はおどけて両手を広げた。


「それはさておき、美園も夏休みがヒマなら、バイトしない、バイト?」


「バイトかぁ、かったるいなぁ、どこで?」


あたしは口ではそう言いながら、七海の話に興味があった。

何しろあたしは金が無い。

しかも両親から相当に小遣いを前借りしている。

その前借りの口実にも「夏休みにバイトして返すから」と言っている。


今以上に小遣いのアップが望めない以上、ここはアルバイトをして資金を稼ぐしかない。

幸か不幸か、あたしの夏休みスケジュールは、花火大会くらいしかないし。


「渋谷のパン屋さん!ケーキも売っていて、テレビでも紹介されている有名店なの!」


七海はそう言って、スマホのバイト紹介サイトを表示した。

なるほど「女子ウェイトレス、販売員募集」となっている。

サイトに映ってポーズを決めている女の子の制服も、とても可愛い。

女子ならグラっときちゃう制服だ。

あたしがそれに注目した事に七海も気付いたのだろう。


「ね、制服、可愛いでしょ。でもそれだけじゃないんだよ。時給だっていいんだから」


あたしの耳は、素早くそこに反応した。


「どのくらい?」


「時給980円!昼間の時間帯でだよ」


昼間の時給で980円!

高校生のバイトとして、それは魅力的だ。

しかも渋谷なら通学経路の途中になる。

定期が使えるから、交通費は丸儲けだ。


 さっそく電話してみると「今から面接できないか?」と言われた。

あたしと七海は、渋谷にあるそのお店に向かう。


そこは渋谷から道玄坂を超えて奥に入ったところだ。

どちらかと言うと神泉に近い。

ただのパン屋ではなく、イートインが出来るカフェのようなお店だった。

お店の名前は「Jolie boulangerie dans la foret」と言うらしい。

(めんどくさいので「ラ・フォレット」と呼んでいる)

パンだけでなく、ケーキなども売っている。

ネット上でも有名で、テレビで紹介されていて、芸能人も時々来るようなお店だ。

七海は家が松濤なので、たまにこのお店にも買いに来ていたらしい。


店長は三十歳くらいの男性だ。

J 〇oul〇rothersにいそうな、チョイ悪を連想させるイケメンだった。


「二人とも可愛いね、モテるでしょ。慈円多学園?凄い名門校に通っているね。じゃあ学校も近いね。普段もバイト出来るね」

と軽い感じでハラスメントに引っかかりそうなコードを交えながら、そう言った。

(まあイケメンだし、嫌な感じじゃなかったので、許す)


「明日の早番から入れる?販売員兼ウェイトレスって感じで。朝は9時までに入ってくれればいいから。制服は貸し出すけど、辞める時には返してね。時々いるんだ『制服が可愛いから返さない』って子が。クリーニングは、店のランドリー用の袋に入れておいてくれれば、中一日で出来るから」


そう言ってサイズ合わせのため、制服の試着をした。

白いブラウスに、胸の部分が協調されるようなジャンバースカート、

スカ-ト丈は膝上二十センチ近い超ミニだ。

頭にはメイドがよく付けている白い髪飾り「ホワイトブリム」を付ける。


ヤバイ、可愛いじゃん、あたし。


姿見の鏡を見て、思わず舞い上がってしまった!

軽くポーズを付けてみる。

こりゃ制服を返したくない気持ちもわかるわ。

サイズはあたしも七海もMでちょうど良かった。

ジャンバースカートは胸の部分は大きくU字型に空いていて、

ブラウスの胸部分が強調される所が唯一の不満点だ。

その日は制服だけ受け取って帰る。


よし、明日からひたすら金儲けだ。頑張るぞ!

この続きは、本日6月2日(日)12時過ぎに投稿します。

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