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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
68/116

1、高1のハッピー・サマーバケーション!

今回より第三章が始まります。

今後ともよろしくお願い致します。


【前回までのあらすじ】

●第一章…天辺美園は高校一年生。

彼女が通う慈円多学園は「女子たるもの野獣であれ」をモットーとしている。

そして女子の積極性を養うため

「男子生徒は、女子生徒と弁当を十回連続で食べたら、その女生徒の一生の面倒を見る前提で付き合わなければならない」という鉄の掟が存在する。

そこで女生徒達は「イケメン、金持ち、秀才、スポーツ万能」という学園トップレベルの人気を誇る男子生徒をゲットするため

「お弁当お届けレース」でしのぎを削っていた。

美園は人気No1の赤御門凛音の婚約者となるため、様々な手を凝らしてレースに勝とうとする。

しかし学園を支配する七大美人セブン・シスターズの存在と、ライバル女子・渋水理穂に阻まれ、中々赤御門に弁当を渡すことができない。

渡せなかった弁当は、幼馴染の中上兵太に三百円で売っていた。

しかし兵太に接近する女子・川上純子が現れ、兵太は「美園と弁当を食べる事はできなくなった」と告げる。

ショックを受ける美園は、最後の最後で兵太に自分の気持ちを伝える。


●第二章・・・幼馴染の兵太と付き合うことになった美園。

だがそれに納得できない川上純子が、美園に勝負を挑んでくる。

そんな時に美園が最後のレースに参加した時に「ワックスを撒いて全員を転倒させる作戦」により、

学園の女王・雲取麗華から懲罰を受ける事になる。

そこでライバル女子・渋水理穂の罠により、校外の男達にリンチを受けそうになる。

その美園を助けたのが、人気No3の剣道部主将・紫光院涼だった。

紫光院にも心を惹かれて行く美園。

そんな時に、兵太が自分とのデートをドタキャンして、川上純子と一緒にいる所を偶然見てしまう。

美園は兵太と別れる事を決心する。

しかし本心はまだ兵太への気持ちが残っていた。

ある土曜日、兵太と川上純子は遊園地にデートに出かける。

美園も親友の計画により、同じ遊園地へ知らずに行っていた。

夜になって「帰りたくない」と兵太に迫る川上純子。

そこで親友が「美園が病気で家で苦しんでいる」とウソのメールを兵太に出すと、兵太は川上純子を残して、急いで美園の家に向かう。

これにより、美園は兵太とやり直すことにした。

 お昼休み。

あたしは兵太と、屋上で一緒にお弁当を食べていた。


ちなみに今日のお弁当は、塩シャケと卵焼き、ご飯はふりかけのみだ。

その前のお弁当は、茄子の生姜焼き、ベーコンのチーズ巻き、ホウレン草とシメジのお浸し、ご飯は海苔を敷き詰めた。

さらにその前のお弁当は、ビリ辛シュウマイ、コンビーフ・オムレツ、ダイコンとニンジンの酢の物、ササミのフライ、ご飯は鶏そぼろだ。


一回毎にお弁当が貧相になっているのは、決してあたしが「慣れて手を抜くようになった」訳じゃない!

何しろ、川上純子ちゃんとの勝負は

「一学期の終わりまで、一日交代で兵太と一緒にお弁当を食べる」だ。

どうやら今は川上さんは兵太と一緒に食べていないようだが、

あたしは律儀に「月・木だけ兵太とお弁当を食べる」と言う約束を守っている。

後からまた難癖つけられちゃ(かな)わない。

だからあたしも、今ここで「お弁当の手を抜く」なんてマネは出来ないのだ。


それでもあたしがこの三回ほど

「一品ずつお弁当のおかずを減らしている」

のには訳がある。


・・・ウーーーッ!・・・


あたしは腹を減らした野良犬のように、心の中で唸った。

内心はかなりじれていたのだ。


兵太はそんなあたしの様子には全く気付かないように、お弁当をパクついている。

コイツ、もしや

「お弁当の内容が粗末になっていること」

にも、気付いてないんじゃあるまいな?


あたしは覚悟を決めた。

今日は言うしかあるまい。

これ以上お弁当を質素にしたら、次は日の丸弁当になりそうだ。


「ねぇ、兵太」


「ん?」


「去年はさ、中三で二人とも大変だったよね」


「うん」


「受験一色でさ、テストが連続してて、二人でよく『灰色の夏休みだぁ』って話してたよね」


「うん、そうだな」


兵太は顔を上げずに、気の無い返答をしやがった。


あたしは横目で兵太を睨みつけた。

まだ気づかないのか、この野郎。


「高校に入ったら、夏休みは中三の分も遊ぼうって言ってたよね~」


「そうだったかもな」


この鈍感野郎、『かも』が入りやがった。


「だ、か、らぁ」


ついにあたしは大声を出した。


「夏休み、どうするのって、聞いてるのっ!」


そう、それがあたしが言いたかった事なのだ。

もうすぐ高校生活最初の夏休み。

しかもあたし達が付き合いだして、一番最初の夏休みなのだ!


いや、正確にはまだ付き合ってないかもしれない。

あたしは兵太と連続十回お弁当を食べてないし、

川上さんと決着が着くのは、あくまで「一学期の終わり」だ。


でも今の状況、もうあたしも兵太も、互いに付き合う気になっているはずだろ?

でなきゃ、この前のアレは何だったんだ?

少なくとも就職活動で言う「内々定」くらいは出ているハズだ!。


兵太はきょとんとした顔をして、あたしを見た。


「でも夏休み、俺はほとんど部活あるよ」


く~~~っつ!

あたしは頭に血が昇った。

そんな事はわかってるよ!

だからこそ、事前に遊びに行く予定を立てようって、言ってるんじゃない。


「いくら部活でも、ずっと休み無しって訳じゃないでしょ。お盆とか」


「お盆に合宿があるから、それまでは休み無しだよ、確か。その後も練習試合があるし」


兵太は涼しい顔でそう言いやがった。


コイツ、本当にあたしと付き合う気があるのか?

あたしと「一緒にいたい」って感じが、全然見えないんだけど!


それに気に食わないのは、その合宿だ!

どこに何日行くのか知らないが、それには当然、あの川上純子ちゃんも行くんだろ?

バスケ部のマネージャーだからな!

この前の富士急ハイランドの一件もある。

彼女はマジで侮れない。

合宿となれば、どんな手を使ってくるかわからない。

『必殺・肉弾特攻』すらあり得る。

あんなあどけない、可愛い顔して・・・

彼女は『パンダの皮を被ったヒグマ』『ウサギの皮を被ったウルヴァリン』だ!


だがあたしはグッと怒りを堪えた。

ここがあたしが進歩した点だ。

今までのあたしとは違う。


あたしは身体をしならせて兵太にすり寄ると、甘えた声で言った。


「ん・・・でもさ、あたし達にとって、初めての夏休みだよね、二人にとって・・・」


だが兵太は怪訝な顔をした。


「な、なんだよ、突然。変な声だして。気持ち悪いな」


あたしは怒りと恥ずかしさで、一瞬で頭に血が昇った。

誰のために、こんなクソ恥ずかしい事をやってると思ってるんだ。

せっかく深夜アニメで

「ツンデレの女の子が、デレで男の子に甘える時」

を録画してまで研究したのに!

その努力を「変な声、気持ち悪い」と抜かしやがった。


「悪かったわね!変な声で、その上、気持ち悪くって!もういいよ!」


あたしはぶーっと膨れて、兵太に背を向けた。

さすがに兵太もマズイと思ったらしい。


「ご、ゴメン、ゴメン。夏休みの練習の予定とか、まだ出てなくてさ。休みが分かったらどっか行こうよ、海とかプールとか?」


一度損ねたあたしの機嫌は、そんなのじゃ直らない。


「あたしが、海とかプール、嫌いなのは知ってるでしょ!」


余計に気分が悪くなった。

なんでわざわざ男と出かけて、

『他の女と体型を比べられるような場所』に行かねばならんのだ?

少しは考えろ、ボケッ!


「あ、ごめん。じゃあさ、花火大会に行かないか?」


「花火大会?」


あたしはちょっとだけ興味を持った。


「うん、花火大会ならさ、たぶん行けると思うんだ。合宿前の土曜は休みらしいし、夜まで部活は無いはずだから」


花火大会かぁ、そう言えば小さい頃、家族で行って以来かもしれないなぁ。

それに花火大会と言えばカップル・デートの定番だし・・・まぁ、いいか。


「わかった。花火大会。約束だからね!絶対に他の予定を入れないでよ!」


あたしは少しだけ機嫌を直して、強くそう言った。


「了解、了解。約束するよ。それまではちょっと時間無さそうだけど、我慢してくれよ」


兵太のその言葉を聞いて、あたしは小さくため息をついた。


あ~あ、せっかくの夏休みも、イベントは花火大会だけか・・・

二人で付き合う最初の夏休みだから、何か記念日的な事が欲しかったんだけどな。

そもそも毎日部活って、なんだよ、それ。

これなら中三の時の方が、夏期講習があっただけ、二人で一緒だったじゃん。

この続きは、6/2(日)0時過ぎに投稿予定です。

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