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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第二章 新たなる戦い?少女野獣編
64/116

17、ミッション・インポッシブル ―敵に発見されず、四大絶叫マシンを制覇せよ!―

そんなこんなですったもんだしていたら、いつの間にか時間は9時になっていた。

開演時間だ。

ゲートの所に並んでいた人々が、雪崩を打って園内に入って行く。


あたしと七海もE-チケットを交換し、顔写真を登録して園内に入った。

オンラインで事前に顔写真を登録するチケットだったら、あたしは入れないところだ。


ちなみに四大絶叫マシンとは

「ド・ドドンパ」「ええじゃないか」「高飛車」「FUJIYAMA」の四つを言うらしい。

他にも様々な絶叫系アトラクションがあるが、やはりまずはコレだろう。


あたし達が入ったゲートから、すぐの所に巨大なジェットコースターが見える。


「あれがFUJIYAMAだよ!まずはアレに乗ろう!」


だが流石は人気のあるアトラクションだけあって、軽く一時間半以上は待つようだ。

あたしはまず周囲をキョロキョロし、列にいる男女を確認した。

奥の方までは見えないが、とりあえず近場に兵太と川上さんはいないようだ。


「大丈夫だよ。あたしも見たけど、ここには中上君と川上さんはいないから」


そう七海は言って、さっさと列に並ぼうとする。


・・・なんでテーマパークにまで来て、こんなに周囲に気を配らなきゃならないのか・・・


何となく映画「ミッション・インポッシブル」のテーマ曲が、頭の中を流れる。

『ハント君、今回の君のミッションだが、敵エージェント二人に一切見つかる事なく、

富士急ハイランドの四大絶叫マシンを、全て制覇する事だ。例によって、君が敵エージェントに

発見または捕獲された場合、当局は一切関知しない・・・』


他人から見たらバカバカしいだろうが、あたしにとっちゃ真剣だ。

トム・クルーズ並みに必死なのは間違いない。


待ち時間は約一時間五十分だった。

最初は周囲に最大限の注意を払っていたが、列は何度も折り返すので、

顔を合わせるのはほぼ同じ人だ。

よって後半は、それほど気を使わなくて済んだ。


・・・


やっとのことで、あたし達の乗る番が回って来た。

前の人に続いてコースターに乗り込む。

最前列じゃないが、絶叫マシンに乗り慣れていないあたしには、このくらいが丁度いい。


係員の人がハイタッチをしようとしてくれる。

だがあたしは既に緊張していて、前のバーを握り締める。


コースターはまず急角度で上昇して行った。

空に昇って行くんじゃないか、という気分にさせられる。

あたしが一番恐怖を感じる瞬間だ。


・・・


長い、なが~いFUJIYAMAの【3分36秒】が、やっと終わった。

もう前半四分の一くらいで

「一体、いつになったら終わるんだよぉ~」

という気分にさせてくれる。

後半半分は放心状態だった。


「次はアレ乗ろう、アレ!」


七海が指さしたのは、垂直に登って120度の角度で落ちる「高飛車」だ。


・・・な、なぜ、コイツはこんなに元気なんだ?・・・


既にFUJIYAMAでヘロヘロになっているあたしの手を、グイグイ引っ張って列に並ぶ。

ここでもまずは「兵太&川上チェック」を行い、安全を確認してから並ぶ。

やはり一時間以上の待ち時間なのは避けられない。


列で待っていると、程なくして向こうから兵太と川上さんが歩いてくるのが見えた。

ヤバイ!あたしが並んでいるのは、まだ一番外側の列だ。

歩いている人からは丸見えになる。

と言って、ここまで並んでいるのに、列から抜け出すのも嫌だし、逆に目立ってしまうだろう。

あたしは帽子を目深にかぶり直し、通りに背を向ける。


背後を通り過ぎる時、川上さんの声が聞こえた。

「ねぇ、次はあれに乗りたい!あれに乗ろう!」


あたしは必死に、彼女の言った「アレ」がこの「高飛車」ではない事を祈る。

二人が通り過ぎた所を肩越しに覗いてみたところ、FUJIYAMAに向かったようだ。

あの可愛らしい川上さんが「絶叫系マシンが好き」とは意外な気がした。

兵太は確か、高い所は苦手なはずだ。

川上さんにはイメージ的に、コーヒーカップとかメリーゴーランドが似合うかと思っていた。

彼女、本当はアクティブな女だったんだなぁ。


・・・


たっぷり二時間以上待ち、やっと「高飛車」の乗れた。

だが、ちょっと待って・・・

カートは「四人乗りが二列」ではないか!

そしてあたし達は前の列になってしまった。

まじか・・・

そう思っていたら、突然・・・


・・・


高飛車から降りた時、あたしは足がガクガクした。

直落下の後、何度ぐりんぐりん振り回された事か。

もうフラフラだ。

足に力が入らないぃぃぃ。


「次はぁ~」


そう言いだす七海に、あたしは慌ててストップをかけた。


「ちょ、ちょっと休もうよ。ネ。ほら、もうお昼にもいい時間だしさ」


「そうだね、なに食べる?」


そうは言ったものの、あたしは単に休みたいだけで、それほど食欲は無い。

まだ胃がでんぐり返っている。


「さっき見た、ソフトプレッツェルとかどう?」


「わかった。じゃあ、あたしが買ってくるよ。美園、ちょっと顔色悪そうだから」


「うん、ありがと。じゃあここで待ってるね」


あたしはオープンスペースのテーブル席に座った。

かなりハードだ、富士急ハイランド。

あと二つもこんなのに乗るなんて、あたしは持つだろうか?

もっとも一つ乗るのに一時間半以上は待っているから、あと二つくらいが限界だろうが。


あたしが疲れ切って、ボーっとしていた所だ。


「ねぇ、キミ、一人なの?」


そう隣のテーブルから声を掛けられた。


振り返ってみると、二十歳オーバーと思われる女子三人組が、あたしを見てる。


「え、いや、同性の友達と」


疲れ切っているせいか、適当な返事をしてしまった。


「きゃあ~」「声もカワイィ~」


三人組から黄色い声が飛んだ。

なんだ?


「じゃあさ、お姉さん達と一緒に回らない?女三人でちょっと退屈していた所なんだよね」


へっ?どういう意味だ?


「高校生くらいだよね?みんなで『可愛い男の子がいる』って、いま話していたんだ」


そのショートカットの女性は言った。


お、男の子?


『可愛い』はありがたいが、『男の子』は余分だろ?

あたしは『男』と間違えられているのか?


もう一人、パーマをかけたセミロングの女性が言った。


「あたし達、仕事の仲間なんだけど、女ばっかりの職場でね。あんまり男の人と知り合う機会がないのよ。だからお姉さんにちょっと付き合わない?友達も一緒でいいから」


さらに、髪の毛を明るい金髪でピンクのメッシュを入れている女性が言った。


「あたし達、年下の男の子が好みなんだって話していたら、すぐそばにキミがいたじゃん。男の子なのにすごく肌もキレイだし、可愛い顔立ちしているから、みんなで『いいね』って話していたんだよ~」


な、なにを言ってるんだ、コイツら?


確かに今日のあたしの恰好は、七海に言われたこともあってボーイッシュだ。

上はTシャツを着て、そこに薄いチェックの半袖シャツを羽織っている。

下はジーンズだ。

髪の毛はヘアピンで止めて、七海が持ってきた帽子の中に収めている。

そして今はメガネをかけている。


だが「男子高校生」に間違える程じゃないんじゃないか?

身長だって平均的な女子の身長だろーが。


流石に事実を話そうとしたところに、七海がソフトプレッツェルとドリンクを持って戻って来た。


「おまたせ~」


それを見て、今まで一方的にしゃべっていたお姉さま三人方は、ガッカリしたように言った。


「なんだ~、『男の友達』とか言っておいて、しっかり彼女と来ているんじゃない」


「女心を弄んで~、見かけによらず悪い少年だな」


バカ野郎。あたしは「男同士」なんて一言も言ってない!

勝手に勘違いしたクセに、何をぬかす。


七海が目をパチクリさせる。


「何、何の話?」


あたしは立ち上がると、帽子を取った。


「お姉さん達、勘違いしているみたいだけど、あたし、女なんで」


「えー」「ウソー」「てっきり男の子かと思った~」


三人はそう口々にそう言った。


ふざけんな!花も恥じらう女子高生を捕まえて、社会人女子が「男子扱い」とか、

失礼にも程がある!


「行こ、七海」


気分を害したあたしは、七海を促してその場を立ち去る。


少し離れると、七海が噴き出した。


「美園、男と間違えられて、あの人たちに逆ナンパされてたの?」


「まったく失礼しちゃうわよ!」


あたしは口を尖らせた。


そりゃ、あたしは渋水理穂みたいな美少女じゃないかもしれない。

川上純子ちゃんみたいに愛らしくもない。

セブン・シスターズの連中には、遠く及ばないだろう。


だが、自分では秘かに

「まあまあイケている方なんじゃないか?」と思っていたのだ。

十人並みには可愛い方だと。

これでも中学時代は、年に一回のペースで男子の告白されていたのだ!

(誰とも付き合わなかったけど)


それが成人女子から見て、男子高校生に間違われる程、

あたしはゴツイ顔をしているのだろうか?

本っ気で、落ち込みそうだ。


「まぁいいじゃない。それに今日の美園、男子として見てもけっこうイイよ。うん、『可愛い系男子』だから、年上の女性にはモテるんじゃない?」


まったく嬉しくない誉め言葉を、七海は続けた。


「それに美園って、声も割と低めじゃん。声の高い男子もたまにいるしね」


そう、それもあたしの悩みの一つだ。

あたしは女子にしては、声が低い。

これであたしが、もっとハイトーンの可愛い声を出せれば、きっと印象も違うんだろうけど。

(赤御門様や紫光院様と話す時は、かなり無理して高めの声を出している)


「男装の麗人、ベル薔薇・美園、ここに誕生!な~んちゃってね。あたし、美園の新しい魅力を発掘したかも!」


調子に乗ってそう言う七海を、あたしはキツく睨んだ。


誰のために、こんな格好をして、こんな危険を冒してまで、ここに居ると思っているんだ?

それとあたしの身長じゃ、宝塚には入れないよ!

この続きは、明日日曜日の朝に公開したい・・・と思ってます。

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