表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第二章 新たなる戦い?少女野獣編
61/116

16、都リレー大会(後編)

・・・こいつは後半で巻き返すタイプだったのか・・・


マズイ、このままだとジリ貧で負ける・・

でも、呼吸が、呼吸が・・・


あたしは無呼吸全力疾走を続け過ぎていたのだ。

既に体中の酸素は使い尽くされているのだろう。


再びカーブが迫って来ていた。

このままカーブに入ったら、イン側にいる5コースの選手が前に出てしまう。

そうなったら、もう挽回は不可能だろう。


・・・くっそ、ここまで来てダメなのか・・・


そう思った時だ。

カーブにいた観客の中で、ある人物の姿がクローズアップするように、目に飛び込んで来た。

兵太だった。


・・・兵太が来てる?あたしを応援に?・・・


一瞬で走り過ぎたが、あれは兵太だった。


その時、突然にあたしには「最後の秘策」がある事を思い出した。

『お弁当お届けレース』で鍛えた、最後の技。

階段を昇り切って、水道場前から最後の100mダッシュのタイミングを思い出せ!


「フンッ!」


鼻水が飛び出すかと思う勢いで、鼻から息を吹き出す。

それと同時に最後の力を足からつま先に込めて、身体を前に押し出す。

そのまま強引にイン側の5コースの選手の前に入り込んだ。


陸上競技ではちょっと強引な割り込み方かもしれないが、

あたしたち慈円多学園の「お弁当お届けレース」なら、アリの入り方だ。


そのままカーブに突入する。

あたし、5コース、1コースの選手は一列となって、カーブを走った。


後はもう何も考えない。考えられない。

ともかくここを走り切って、アンカーの朱島にバトンを渡すだけだ。

あたしは前にいる朱島由紀奈の姿だけを見つめた。


カーブを抜ける。

朱島が左手を伸ばして走り始める。

あたしは既に頭が朦朧としていた。

朱島の手に右手のバトンを押し付けて・・・


あたしの意識は、そこで暗転した。


・・・


「おい、大丈夫か?しっかりしろ!」


咲藤ミランの声がした。


あたしは薄目を開ける。

そこには咲藤ミランの顔と、相変わらずの巨乳があった。


・・・くっそ、こんな時まで、見せつけんな!・・・


彼女の所為ではないが、八つ当たり的な怒りが、一瞬頭をかすめる。


「天辺、大丈夫か?答えられるか?」


再度、咲藤ミランがそう呼びかける。


「だ、大丈夫です・・・レースは?」


あたしはやっと、それだけ言った。

あたしはちゃんとアンカーにバトンを渡しただろうか?


「ああ、大丈夫だ。いま朱島が走っている。天辺のおかげでトップだよ」


良かった・・・あたしはどうやら役目を果たせたらしい。


あたしは四つん這いの姿勢である事に気づいた。

体勢を変えて、べったりと腰を下ろし、足を投げ出す。

足がヒクヒクと痙攣しているのがわかった。


「ありがとう。よくやってくれたよ、天辺」


咲藤ミランがそう言ってくれた言葉にも、あたしはもはや何も返す事ができなかった。


呼吸を落ち着けて、周囲を見渡す。

特に最終カーブの観客席を・・・

だが、そこに兵太の姿を見つけることは出来なかった。

あれは、もしかして、あたしの幻だったのか?


・・・


リレーの結果は、残念ながら2位だった。

1コースのアンカーが追い上げ、朱島と競った時に、2人とも転倒してしまったのだ。

その隙に5コースの選手が追い抜き、一位となった。

すぐに朱島も起き上がり後を追ったが、残念ながらトップは取り戻せなかった。


だが女子陸上部として、大いに盛り上がっていた。

あれだけあたしを敵視していた部員たちも

「このまま陸上部に入りなよ」「これなら秋の大会で優勝できるよ」

と大歓迎ムードだった。


だがあたしは、困った笑顔しか返せなかった。

あたしに運動系の部活はムリだ。

いや、たぶん運動系・文化系、どっちの部活も向いていない。

あたしは人に合わせて行動するのが、今イチ苦手だし、何より疲れることが嫌いだし・・・。

今回は「咲藤ミランにケガをさせてしまった」という負い目があったから、仕方なく参加したのだ。

それに、こんな苦しい思いをする競技は、もうたくさんだ。


・・・みんな、イケメンGETとかの特典もなく、よくこんな辛い事をやっていられるよ・・・


あたしは逆に、陸上部のみんなを尊敬した。


最後は咲藤ミランがこう言った。


「まあみんな、あんまり天辺を困らせるな。天辺は仕方なく、今回は協力してくれたんだから」


そして全員を見渡す。


「よし!みんな、打上げ行くぞ!天辺、おまえも当然、打上げには来るよな!」


あたしも、それにはありがたく参加させてもらった。

タダ飯となれば、それを逃す手はない。


打上げはもっとお洒落な店かと思ったら、案に反してお好み焼き屋だった。

この続きは5/9(木)7時頃、投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ