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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第二章 新たなる戦い?少女野獣編
54/116

12、紫光院涼へのお弁当お届け対決、対決(中編)

三番目は、料理部部長の伊吹真奈。

彼女は料理部だけあって、最も強敵だとあたしは考えていた。

少なくとも調理の腕で、あたしに劣る事は無いだろう。


ご飯の方は普通のちらし寿司だったが、

彼女は二種類の「肉っぽい魚っぽい料理」を用意していた。


一つは「鶏胸肉の香草蒸し」。

鶏の胸肉に軽く下味を漬けて、ハーブなどの香草と一緒にアルミホイルで包み、

丁寧に蒸した料理だ。

しかも蒸した後に、一度火を入れて、表面を焼き絞めて食感を上げている。

確かに、蒸した鶏肉は魚っぽいと言える。

マグロの缶詰は「シーチキン」って言うぐらいだし。


二つ目は「高野豆腐の素揚げ」だった。

方法はわからないが高野豆腐をあらかじめ圧縮しておき、そこにごく薄い下味を着けて、

植物油で軽く素揚げにしたものだ。

こちらもかなり「柔らかいけど肉っぽい」感じを再現できていたらしい。


あたしも正直なところ「やられたかも」と思った。

高野豆腐とは盲点だった。

「肉と魚」だけに考えが行き過ぎて、それ以外の食材には頭が回らなかった。

この発想力には完敗だ。


この二つの料理は、ちらし寿司とも良く合い、剣道部四人にも

「うまい、うまい」と非常に好評だった。

付け合わせの野菜も、野沢菜漬け、ダイコンとアンズのなますと、

疲れを取るための酢を使った料理も入れている。


この点は、あたしも酢を使った料理はたいてい入れているから、

考えている事がよくわかる。


だが紫光院様は、やはり口を開く事は無かった。


そして四番目は、いよいよあたしの番だ。


ご飯は、白米のみと鶏そぼろの二色ご飯とした。

マグロのカマは白米の方が合うが、白米弁当だけだと土曜の予選の段階で

評価が低くなる可能性があるため、鶏そぼろも入れた。


おかずの方には、チーズオムレツとキンピラごぼう、

カブと柿の酢漬け、コールスローサラダだ。


勿論、メインディッシュには、あたし渾身の

「マグロのカマの外肉」を焼いたものだ。

マグロのカマをオーブンで丁寧に焼き、外側の骨に付いている

「茶色い肉の部分」だけを取り出す。

味付けは、シンプルに塩コショウで軽く炒めたものが一つ。

もう一つは、砂糖と醤油に鷹の爪を入れて、ピリ辛味にして炒めたもの。

この二つだ。


あたしはジッと紫光院様の様子を見ていた。

紫光院様は、弁当を開いた瞬間から、目を見開いていた。

そしてカマの塩コショウで味付けした方を、まず口に入れた。

そのまま無言で咀嚼する。

その味と食感を確かめるにように噛み締めた後、ゆっくりと飲み込むと、

次にピリ辛に味付けしたカマの方を口に入れた。


他の四人はやはり「うまい、うまい」を連呼していた。

だがその点では、前の三人と評価に違いは無かっただろう。


白米と一緒にカマだけ全て食べた紫光院様が、やっと口を開いた。


「これだ、この味だよ・・・」


全員の視線が紫光院様に集まった。


「そうだ、この料理だ、母さんが作って弁当に入れてくれたのは・・・」


紫光院様があたしの方を振り返った。


「これは何なんだ?」


あたしは自信を持って答える。


「マグロのカマの、骨の外側に付いている身の部分です」


「そうか・・・あれはマグロのカマだったのか・・・」


そう言うと紫光院様は、改めてあたしの方に顔を向けた。


「ありがとう。やはり天辺に頼んで良かったよ」


あたしはニッコリ笑ってうなずいた。


ヤッター!

これであたしの完全勝利だ!

紫光院様の「思い出の料理」を再現できたんだ。

これで紫光院様へのあたしのポイントも、うなぎ昇りなのは間違いなしだ!


横を見ると、その状況を七海が写真に撮っている。

あたしは彼女だけにわかるように、小さくガッツポージを送った。

七海もにこやかに首を縦に振った。

この続きは4/29(月)の8時頃、投稿予定です。

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