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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第二章 新たなる戦い?少女野獣編
53/116

12、紫光院涼へのお弁当お届け対決、対決(前編)

翌日曜日。

この日は高等学校剣道大会の東京都における団体戦の予選である。

会場は武道館。

参加校は全部で48校だ。


そしてこの日は、あたし達・慈円多学園女子にとっては、

紫光院様への「思い出の料理再現弁当・対決」の日でもある。


あたし達の勝負は、以下のように行われる。


まず前日土曜日の段階で剣道部男子部員20名が、それぞれ参加女子の弁当を少しずつ食べ、

1番から5番までを書いて投票する。


ちなみに剣道部女子も参加しているため(当然、紫光院様は剣道部女子の憧れの的だ)

剣道部女子には投票権はない。


同じ理由で、どの弁当を誰が作ったかは、わからないようになっている。

剣道部男子が、同じ剣道部女子を贔屓することを避けるためだ。


ここでトップの点数を取った五つの弁当が当日の決勝戦として、紫光院様に食べて貰う。

そして「最も紫光院様の記憶に近い弁当」を選ぶ訳だ。


選ばれた5つの中に、紫光院様が満足する弁当が無かった場合は、

それ以外の弁当も試す事になる。


よってそれぞれの女子は「土曜予選用」と「日曜本戦用」の2つの弁当を用意しなければならない。

面倒臭いことだ。


前日の土曜日、正午のお昼時に剣道場にお弁当が並べられた。

その数は45個。

中々の競争率だ。


あたしもチラっと見てみたが、やはり多くのお弁当が「キャラ弁」だった。

海苔で剣道のポーズを取っているもの、剣道で対戦しているもの、

紫光院様をキャラクター化しているもの、

「ガンバレ!」「必勝!」「一本」と文字にしているものもあった。

・・・君たち、「思い出の料理を再現する対決」だって、わかってる?


中には、紫光院様の家が医者である事を狙っていたのか、

「人体標本弁当」と言うのがあった。

本当に人体の形で、内蔵などを具で表現しているのだ。

脳は梅干し、心臓と胃は切って形を作ってウインナー、肺はエリンギの傘部分、

肝臓は鶏レバー、腸はナポリタン・スパゲティ、腕や足の筋肉はハムだ。

・・・誰が食うんだ、こんなの?・・・

良く出来ているとは思うが、作った人間のセンスを疑う。


その結果、本戦に選ばれた弁当は、以下の五つだ。


華道部部長でセブンシスターズの一人・菖蒲浦あやめ。

料理部部長の伊吹真奈。

またもやあたしの邪魔をしに来た渋水理穂。

剣道部女子の近藤由紀奈。

最後に・・・あたしだ。


そして団体予選の当日。

あたし達5人は、それぞれの弁当を持って武道館に向かった。

剣道部の応援以外にも、あたし達の対決の結果を見ようと、

多くの生徒達も集まっている。

そして「公平さを監視する」という名目で、セブン・シスターズの連中と、

ファイブ・プリンスの面々も揃っていた。


剣道の試合は激しかった。


あたしはそれまで剣道に興味が無かったので、試合など見たことが無かったが、

こんなにも激しいものだとは思わなかった。


そして早い!

あたしの目では、いつ・どこで・どのように一本が決まったのか、全くわからない。

また「竹刀が当たった」と思われても、一本の判定がされない事が多い。

あたしにはその基準もわからなかった。


あたしは剣道には何となく「時代劇のチャンバラ」のようなイメージを持っていたが、

実際にはまったく違っていた。

意外にも「鍔迫り合い」と呼ばれる、接近した状態が多い。

そして離れる瞬間に胴を打ったりするのだ。


だがその中でも、紫光院様の剣道は異彩を放っていた。

ほとんど鍔迫り合いなどには持ち込まず、離れた状態で鮮やかに一本を決めるのだ。

周囲の人の話では、紫光院様は間合いの取り方と、打ち込みの速さが際立っているらしい。

なるほど、そこらのチンピラごとき、相手ではないはずだ。

我が慈円多学園は順調に勝ち進んで行った。


午前中での試合が終わり、昼休み。

これからは、あたし達の対決だ。

判定するのは、試合に出る5人となる。


トップバッターは渋水理穂だ。

ちなみに渋水が最初なのは、彼女のゴリ押しによるものだ。

コイツは「腹が減っている状態では最初が有利」である事を計算に入れているのだ。


渋水が出して来たのは「牛肉赤身弁当」だ。

ご飯はガーリックライスで、その横に牛肉赤身部分を火を通したものだった。

味付けは塩コショウと甘辛いタレの二種類。

付け合わせはフライドポテトとブロッコリーにポテトサラダだ。

肉の種類まではわからないが、適度なほぐれ具合から見て、和牛の赤身と思われる。

肉の中心部分だけがうっすらとしたピンク色で、うまく火を通している。


他の四人には「うまい」と好評だったが、紫光院様は赤身の部分を食べても、

無言で厳しい表情のままだった。

この勝負、「マグロか牛肉赤身」を使うのが確かに妥当な選択ではある。

渋水の作戦は間違ってはいないが、単なる牛肉の赤身でない事は確かだ。


次は剣道部女子のお弁当だ。

ご飯は普通の白ご飯だが、おかずの方は赤魚の照り焼きだった。

他にはベーシックに鶏の唐揚げ、マーボー茄子、カニカマサラダなどだ。


確かにブリの照り焼きなどでも、肉っぽい味は出せるかもしれない。

食感があまりに違うので、あたしは検討に入れなかったが。

だが彼女は「一夜干しした赤魚」を照り焼きにしたらしく、

食感を固めにして、かなり「肉っぽい感じ」を再現したらしい。

他の四人は「けっこう肉っぽい」と高評価だったが、

紫光院様はやはり無言のままだった。

この続きは4/29(月)8時頃投稿予定です。

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