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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第二章 新たなる戦い?少女野獣編
52/116

11、紫光院涼へのお弁当お届け対決、推理(その2)

家に帰って、買って来た食材をそれぞれ試してみる。

味は「塩コショウをつけただけのもの」と「甘ピリ辛のもの」の二種類だ。

和牛の赤身部分、熟成肉、鶏肉の各部位、マグロ、カジキ、サメ、カワハギを、

それぞれ一つずつフライパンで焼き、

味を付けてしばらく放置する。

お弁当で食べるのと同じ状態にするためだ。


食べてみるが、やはり牛肉は牛肉、魚は魚の味と食感だと思う。

確かに牛肉の赤身とマグロは似てなくはないが、間違えるほどだろうか?


「う~ん、やっぱり肉は肉、魚は魚だねぇ。子供でも間違えないと思うけど」


一緒にあたしの家まで着いて来た七海も、そう言った。


ハァ~


あたしはソファに身体を投げ出した。


これでダメだとすると、やはり珍しい食材か、加工食品という事になってしまう。

だがこの世に星の数ほどある加工食品を、一々調べている時間も予算もない。


「やっぱり紫光院様の記憶違いかもしれないね」


七海がそう言うのを、あたしは黙って聞いていた。


・・・


ある日の夕方のことだ。

その週の日曜が「剣道大会の予選日」、つまり「紫光院様、思い出弁当勝負」の日でもある。


その週は父親の帰宅が早かった。

家族で夕食を一緒に取る。


母親があたしを呼んだ。


「美園、オーブンからマグロのカマ出して!」


「は~い」


こういう時に愛想のいい返事を返しておかないと、

また小遣いを前借する時に、障害となりかねない。


と言う訳で、夕食前はテキトーに負担にならない程度に手伝う事にしている。

(嫌な時は「宿題がある」と言って、自分の部屋に逃げ込む!)


父親、母親、あたしが食卓についた。

お姉ちゃんは今日は大学の飲み会だ。


あたしはマグロのカマをオーブンから取り出し、大皿に乗せながら考えた。

・・・やっぱり肉に一番近いのはマグロだよな。マグロの角煮にでもするか?・・・


食卓にはホイコーロー、ホウレンソウのゴマ和え、ポテトサラダ、そしてマグロのカマだ。

ご飯があるのはあたしだけ。

父親と母親は、まず缶ビールだ。


実はあたしはマグロのカマは、あまり好きじゃない。

食べると美味しいとは思うが、分厚い皮を取って、骨から肉をほじくるのが、面倒くさいのだ。

手が脂でベトベトするし。


だがビールを飲みながらチビチビ料理をつまむ父親は、マグロのカマが大好物らしい。

母親も大抵缶ビール一本は付き合うが、その時は一緒につまんでいる。


母親が言った。


「今日はスーパーでマグロのカマが安かったのよ。カマも大きいし」


「おお、旨そうだな」


そう言って父親は、オーブンでじっくり焼いたカマの皮を剥いだ。

その時だ、あたしの眼はカマに釘付けになった。


皮の下の、骨に隠れるように付いている身の部分だ。

茶色いその身は、まるで肉のように見えた。


「ちょっと待って!」


あたしはそう言うと、マグロのカマの皿を自分の方に引き寄せ、骨についている茶色い肉を丁寧にほじくり出した。

 ズルリ

と魚にしては、大きな肉が塊りとなって取れる。

その茶色い肉にはゼラチン質の透明が部分が付いていた。

そのまま何もつけずに、少し食べてみる。


・・・肉っぽい!


あたしは続けて醤油につけて食べてみた。

さっきよりは焼き魚っぽくなったが、肉っぽい感じもする。


調味料入れから塩コショウを取り出し、振りかけて食べてみた。

するとかなり肉っぽい味がした。

食感も普通の魚よりは肉っぽい感じだ。

ゼラチン質が、いい具合にコクも出してくれている。


・・・コレじゃないか!紫光院様が言っていた肉っぽい魚って!・・・


正直、思っていたより魚感が強いが、まあ牛肉と食べ比べていなければ、

「肉みたいな魚みたいな」と思えなくもないだろう。


マグロのカマなら時々、普通のスーパーにも大量に出回っている時がある。

紫光院様が言っていた「特別な食材じゃない」にも合致している。


あたしは今まで、マグロのカマが出た時は、皮や骨からほじくるのが面倒臭く、

内側の白くて柔らかい部分を主に食べていたから、気付かなかったのだ。


・・・よし、コレで行こう・・・


マグロのカマの大皿を前に、ニンマリと笑うあたしを、

父親も母親も奇異な目で見ていた。

この続きは、明日4/28(日)8時頃、投稿予定です。

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