10、紫光院涼へのお弁当お届け対決、兵太の詰問
学校が終わって帰宅。
今日は色んな女子の質問責めに会って疲れた。
聞いてくる内容は、みんな同じ事だけど。
わざわざウチのクラスの女子を経由して、他クラス・他学年の女子も来たもんね。
ファイブ・プリンス、
いや紫光院様の人気ってスゴイんだなぁ~。
と改めて感じる。
と、ウチの前を見ると、誰かいる。
・・・兵太だった。
なんであのヤローは、ウチの前に・・・
他の場所で待ち伏せしていたんなら、通り道を変える事も出来るが、
家の前に居られたんじゃ通らない訳にもいかない。
あたしは知らん顔をして、兵太の横を通り過ぎようとした。
「待てよ、美園」
あたしは答えず、横を通り過ぎて門の扉に手をかける。
「待てったら」
兵太が乱暴に、あたしの手を取った。
「気安く触んな!」
あたしは声も荒く、その手を振り払った。
兵太は、一瞬おどろきの表情を浮かべたが、すぐに真剣な表情に戻った。
「話くらい聞けよ」
あたしは兵太を睨みつけた。
「アンタ、部活はどうしたんだよ」
「今日は休ませて貰った。美園とどうしても話をしたくて」
「ずいぶんヒマだね。だけどあたしには話す事なんて無いよ」
兵太の顔にも若干の怒りが滲む。
「ちゃんと聞きたいんだ。美園は、俺と付き合おうとしていたのに、紫光院先輩にも隠れてアタックしていたのか?」
「そんな事、あんたに関係ねーだろ」
「関係ないって事、あるかよ。関係あるだろう」
・・・その関係を切ったのは、兵太だろうが・・・
あたしはギリギリでその言葉を飲み込んだ。
あたしと兵太の視線がぶつかる。
バチバチと火花を散らしそうだ。
「もういい。あたしには兵太と話す事なんて何もない。兵太もあたしと話す必要なんて無いはずだろ」
あたしはそう言って、再び門扉に手をかけた。
その時、兵太がチッと舌打ちをした。
「おまえがこんなチョロイ女だとは、思わなかったよ」
パアン!
派手が音が響いた。
あたしの平手が、兵太の頬を打ったのだ。
怒りのあまり、反射的に振り返って手を出してしまった。
兵太の方は、頬を打たれたまま、顔を傾けてあたしを睨んだ。
あたしもしばらく兵太を睨みつける。
だがあたしはクルリと背を向けると、門扉を開けて、家に入った。
もう兵太は何も言わなかった。
玄関のドアを開ける時、あたしは兵太に言った。
「あたし、見たんだよ。映画に行く約束だった日。アンタが川上さんと一緒にいたのを・・・」
そして最後の声を絞り出した。
「あたしは、ウソをつかれてまで、一緒にいて欲しくないんだよ!」
それだけ言うとすぐに家の中に入った。
ドアを閉じると同時にカギをかける。
身体が震える感じがした。
もうこれで、本当に兵太とは終わりだ。
あたしは鍵をかけた姿勢のまま、ドアに寄り掛かるように震えていた。
この続きを、臨時で本日の午後4時に投稿します。




