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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第二章 新たなる戦い?少女野獣編
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9、紫光院涼へのお弁当お届け対決、勃発(前編)

朝の登校時、あたしはいつものように学校の最寄り駅で降りる、


と、同じホームにいた慈円多学園の制服を着た女子三人が、あたしの方を見ていた。

何か、あたしを見て、ひそひそと話をしているようだ。


だがその女子達に見覚えはない。

少なくとも、あたしの友達でも、同じクラスでも無いはずだ。


あたしは軽い不快感を伴った疑問を感じながら、駅を出る。


だが違和感は、駅だけではなかった。

学校前の通学路でも何人もの生徒が、あたしに対して好奇と敵意の眼を向けて来る。


・・・なんだ?何があったんだ?・・・


校門をくぐろうとした時、その原因が判明した。

校門には如月七海が、あたしを待っていたのだ。


七海はあたしの姿を見つけると、すぐに駆け寄って来た。


「ちょっと、先、越されちゃったじゃない!」


「何が?」


「何がって、美園と紫光院様のことよ!」


「いっ?」


あたしの驚いた顔を見た七海は、半分呆れた顔で言った。


「まだ知らないなんて、呑気すぎるよ。ほら、コレ」


七海はスマホをあたしの前に突き付けた。

それは慈円多学園のゴシップ誌とも言うべき

『聞き耳ジエンタ』のサイトだった。


----------------------------------------

【一年女子、氷のプリンスを陥落】


親愛なら慈円多学園の淑女・紳士諸君。

信じられない事件が発生した。


あのファイブ・プリンスNo3であり『孤高の剣士』『氷のプリンス』と呼ばれた

紫光院涼を陥落させた女生徒が現れたのだ。

その女生徒の名前は、なんと今年入学したばかりの1年生、E組の天辺美園だ!


天辺はどういう方法でか、紫光院涼の『秘密の練習場』を突き止め、

そこでスタンド・プレー的に手作り弁当を持参し、

紫光院涼と『一緒にお弁当を食べる』という事に成功した。


それにしてもこの天辺美園は、どのようにして『氷のプリンス』に取り入る事が出来たのか?

この学園の生徒なら誰でも知っている事だが、紫光院涼はどの女生徒のお弁当も受け取らなかった。

よってファイブ・プリンスで唯一『お弁当お届けレース』が開催されない男子なのだ。


写真でもわかるように、天辺美園は大して美人ではない。

スタイルだって貧相なものだ。

とてもではないが、我が学園の誇る美女軍団セブン・シスターズや、その後に続くインデペンデンツに

匹敵できるような女ではない。


果たして天辺は、いかなるマジックを用いたのか。

怪しい薬でも使って紫光院を篭絡したのか?


なおこの天辺美園は、中々に侮れないズルさとしたたかさを持っている。

つい最近までは『学園No1プリンス』である赤御門凛音にアタックを繰り返していた。

また噂では、同じ中学から慈円多学園に入学してきた一年男子もキープしているらしい。


ご存知のように当学園には

『男子生徒は、女生徒から十回連続でお弁当を受け取って食べた場合、その女子の生涯に渡って責任を持つ』

という鉄の掟が存在する。


すでに天辺が何回ほど紫光院にお弁当を渡したか不明だが、

これは由々しき事態だ。


ファイブ・プリンスに対するアプローチは公平性を担保するため、

全て『お弁当お届けレース』が開催される事になっている。


にも拘わらず、一人の卑劣なBランク女狐の抜け駆けが許されていいのか?

『聞き耳ジエンタ』編集部としては、慈円多学園の理念と誇りに掛けて、全生徒の問題とし、

『真・生徒会』に対応を訴えたい。

----------------------------------------


その記事には「あたしと紫光院様が一緒にお弁当を食べているシーン」の写真と、

ご丁寧に「あたしが赤御門様のレースに参加しているシーン」の写真まで

掲載されてあった。


読んだ瞬間、あたしの頭は一気に沸点に達した。


この紫光院様との写真、間違いなく渋水理穂が撮ったものだ。

アイツしか紫光院様の練習場所を知らないし、この写真は

「渋水が紫光院様に弁当を渡そうとして失敗した日」のものだ。


写真を撮られていた事なんて気づかなかった。

おそらく望遠レンズで撮影したのだろう。

そういや、あの女。普段からインスタグラムに上げるため、カメラを持ち歩いていたな。


それに何だ、この記事は?

まるっきり、アタシに対して悪意アリアリの記事じゃないか。


>大して美人ではない

・・・悪かったな!


>スタイルだって貧相なものだ

・・・ほっとけ!


>Bランク女狐

・・・これを書いた奴、デ○ノートに名前を書いてやりたい


そもそもセブン・シスターズに比肩できる女子なんて、日本中に何人いるんだよ!

セブン・シスターズ・レベルじゃないと、イケメン男子にアタックしちゃいけないってか?


(なおここに書かれた「インデペンデンツ」とは、セブン・シスターズ予備軍とも言うべき女子達だ。

それぞれ「独立した人気」を持っているため「インデペンデンツ」と呼ばれている。

基本的にセブン・シスターズは三年生なので、次期セブン・シスターズはインデペンデンツの中から

選ばれる事が多い。)


挙句の果てに、赤御門先輩へのアタックや、兵太の事まで書きやがって!


この記事の情報ネタは、おそらく渋水理穂だろう。

もしかして記事自体を書いたのが、あの女かもしれない。


あたしは怒りのあまり、スマホを地面に叩きつける所だった。


「もう、どうしてくれんのよ!アタシが美園の事は一番最初に記事にしようと思っていたのに!」


七海は別の意味で怒っていた。

七海は新聞部の部員であると共に、非公認の「慈円多ジャーナル」のサークルメンバーでもある。


あたしは頭から湯気が出ている状態で、七海にスマホを返すと、足音も荒々しく校舎に入って行った。

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