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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第二章 新たなる戦い?少女野獣編
44/116

8、邪魔をする女

金曜日、あたしはいつものように、紫光院様がいる剣道場裏の林に向かった。


紫光院様は、月曜・木曜は部活の昼練で、後輩の指導をしている。

そして火曜・水曜・金曜は、剣道場裏の林で、自己練習をしているそうだ。


そこであたしは、最初の宣言通り

「連続にならないように」

火曜・金曜のパターンでお弁当を持っていく事にした。

(届ける前日には、紫光院様に連絡を入れて確認している。忙しい人だから)


あんまり焦って押しすぎるのは、紫光院様に対しては逆効果な気がしたのだ。

それに「紫光院涼がお昼を過ごす場所」を知っているのは、あたしだけのはずだから。


だが林に入って十メートルも行かない内に、その考えが甘い事が判明した。


紫光院様の鍛錬場に、既に渋水理穂がいたのだ!


「紫光院先輩、わたし、ずっと前から紫光院先輩に憧れていたんです!でも紫光院先輩へのお弁当お届けレースは、どこでも開かれていないから、どうにも出来ないと思って・・・。でもこの前、偶然に紫光院先輩がここにいる事を見つけたんです。あの、私、紫光院先輩のためにお弁当を作って来ました。一緒に食べて貰えませんか?」


あたしは素早く、木の影に隠れた。


・・・そうか・・・考えてみれば渋水のヤツは、

紫光院様がお昼にココにいるのは、知っていて当然だったな。

暴漢に襲われた時、紫光院様が現れてから渋水の姿は見えなかったから、すっかり忘れていた。

ちくしょう、抜かったぜ・・・


にしても、あざとい女だ。

あたしが紫光院様と仲良くなりそうだから、妨害しに来たのか?

それとも文系トップの赤御門様から、理系トップの紫光院様に乗り換えたのか?

どっちにしても、あたしにとっては再び敵となって現れた、って事だな。


渋水理穂は、あたしに見せる態度とは違って、

身体をくねらせながら

「お弁当を胸に抱いた可憐な少女」のフリをしていた。


ま、あたしだってやるけど。


だが渋水にはプラス・アルファの技がある。

「胸ブラウス3つボタン開け」と

「もう少しでパンティが見えそうなスカート」のお色気技だ。


流石にアレだけは、あたしにはマネできない。

言っておくが、身体に自信が無いからじゃない。

そこまでやるのは邪道だと思うからだ。

・・・身体には自信が無いが・・・


だが紫光院様は、渋水には目もくれず、

竹刀をケースから取り出しながら言った。


「悪いが先約がある。それに俺は『お弁当お届けレース』等と言う茶番に付き合う気はない」


カックい~~~っつ!


さっすが『孤高の剣士』『氷のプリンス』紫光院涼様だ!

堅物もここまで来れば、国宝級、尊敬の念しかないよね。

兵太も少しは、紫光院様を見習えってんだ!


と、何で、ここで兵太が出て来るんだ?

ナシ、無し、なし!

あんな黒歴史、早く忘れねば。


渋水理穂は、紫光院様のその対応に、かなりの衝撃を受けたようだ。

そりゃそうだ。

渋水ほどの美少女に言い寄られて、断る男なんて、まずいないだろう。

プラス「チラ見せ、お色気技」まで使っているもんね。

変な男なら、こんな人目の無い場所なら、

ケダモノ化して飛び掛かりかねない。


「そ、そんな、紫光院先輩・・・」


渋水は、今度は「涙目うるうる技」を使って迫って行った。

さっき、さりげなく胸元のブラウスを広げてたぞ。


だが紫光院様は渋水に背を向けて、さっそく竹刀を振り始めた。


「練習の邪魔だ。もう行ってくれ」


一瞬で渋水は夜叉の顔になる。

怖っえ~、この女、マジで女優だわ。


渋水理穂は、憤懣やる方ない、と言った様子で、

足音も荒々しく、その場を立ち去った。


途中で木の影に隠れていたあたしと目が合う。


渋水は余計に顔を赤く、そして形相が険しくなった。

夜叉を通り越して般若の顔だ。


ザマーミロ!

世の中、そんなに何でもかんでも、オマエの思い通りに行かないんだよ!


少し間を置いて、あたしは紫光院様のそばに歩み寄った。

練習の邪魔にならないように、声は掛けない。

だがさりげなく視界に入る位置に移動した。

(あたしもあざといなぁ)


「天辺か?これだけ済むまで、待っていてくれ」


紫光院様は、あたしの方を振り向かずに言った。


「はい・・・」


あたしは清楚な少女の返事を返し、いつもの高くなった場所に腰を下ろす。


ンフフ、今日は鼻歌の一つでも出そうな気分だ。

この続きは、4/20(土)8時に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ご無沙汰しております。 前回、第一章を拝読してから、大分時間が経ってしまいましたが、続きを拝読させて頂いてます。 第二章に入ってからも、相変わらずの急展開で面白いです! ……というか、第…
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