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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第二章 新たなる戦い?少女野獣編
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6、あたしは『肉食獣』になる!

目覚まし時計がうるさい。

頭にガンガンと響く。


あ~、今日は学校を休みたい・・・


昨夜は家に帰ってからもボーっとしていた。

そして時々、思い出しては泣いていた。

そしていつの間にか、泣き疲れて眠ってしまったらしい。

頭も心も重い。


あたしはノロノロと身体を起こした。

窓を開ける。


今朝は快晴だ。

その青い空を見ている内に、あたしの心も少し軽くなって来た。


もう兵太の事を考えるのは止めよう。

いつまでもイジイジ考えているなんて、あたしらしくないし、そんな自分はイヤだ。

兵太があたしより、川上さんを選ぶというなら、それでいい。

兵太にも彼女を選ぶ権利はあるし、あたしがとやかく言う事じゃない。


心が辛いなら、「いなくなった」「存在しない奴」と考えればいい。

そう、兵太はもう、あたしとは無関係の存在なのだ。


そもそも慈円多学園には、

「秀才・金持ち・イケメン・スポーツ万能」の男子が、

それこそ豊漁時のサンマくらいいるのだ。


兵太ごとき「中の上男子」に関わっているヒマはない。

あたしの女が廃るってもんだ。


そう考えている内に、あたしの気持ちは徐々に持ち直して来た。


よぉ~し、やってやる。

素晴らしい男子をGETしてやる。

もう『野獣』なんて甘いレベルじゃない。

あたしは『肉食獣』になるんだ!

肉バンバン食うぜ!


あたしは、そう決意を新たにした。


・・・


学校に行くため、最寄り駅に向かう。

だがその改札口まで来た時、見たくないヤツがいた。


兵太だ。


あたしはヤツに見つからないように、サラリーマンの影に隠れるようにして改札を通った。

だが兵太は、目ざとくあたしを見つけやがった。


兵太は急いで改札を通ると、小走りであたしに近づいて来た。


「美園!」


あたしは振り向きも、返事もしない。

「存在しない奴」相手に、返事をする事なんて出来ない。


「美園!」


兵太はさらに大きな声で、あたしの名前を呼んだ。


るっせー、人の名前を気安く呼ぶんじゃねー!

もう、アンタに呼び捨てにされる謂れなんて、無いんだよ!


ジリリリリリ・・・


ホームで列車が出るベルが鳴った。

あたしはすかさず階段をダッシュする。


だが兵太も後を追ってダッシュしやがった。


あたしは全速力で走った。

そしてドアが閉まる直前で、電車に乗り込む。


後を走っていた兵太は、あたしのいるドアには間に合わず、隣のドアで乗り込んだようだ。

しかし満員電車のため、車両内は移動できない。


二駅先で、ホーム向かい側の急行列車に乗り換える。

兵太は、あたしがまだあの列車に乗ったままだと思っているはずだ。

うまく撒けただろう。


・・・


四時間目が終わって、昼休み。


後ろから兵太が近づいて来た。


「なあ、美園・・・」


あたしはそれを完璧に無視し、席を立つと、七海の席に行った。


「七海、お昼、食べに行こ」


七海はあたしを意外そうに見上げる。


「いいけど・・・いいの?」


七海の目がチラっと兵太の方を見た。

あたしは感情を込めない目で言った。


「なんで?何か問題ある?早くお昼、食べに行こうよ」


「う、うん」


いぶかしがる七海を急かし、アタシ達は学食に向かった。


・・・


あたしと七海は、学食のカウンターからそれぞれの注文の品を受け取ると、

窓際の3人掛けテーブルに座った。

ちなみにあたしはラーメン、七海はカレーライスだ。

女子力がないチョイスだが、肉食女子はまずパワーだ。


「ねぇ、中上君と何かあったの?」


七海がそう聞いて来た。

カレーライスを食いながら恋バナでもないと思うが、

まぁ兵太の話なんて、その程度で丁度いいのかもしれない。


「別に、何にもないよ」


あたしはそう答えた。

「存在しない奴」の話なんて、しても仕方がない。


「そう、それならいいけど」


七海の方も歯切れが悪い。


「それよりさ」


あたしは身を乗り出し、目を輝かせて言った。


「紫光院様に関する情報って、他に何かないの?」


学内の情報は、事情通の七海に聞くに限る。

しかも七海は「学園公認の新聞部」の一員なのだ。


ちなみに慈円多学園には、学園公認の新聞部が発行する「慈円多新聞」以外に、

非公認のサークルが作っている「慈円多タイムス」「慈円多ジャーナル」「聞き耳ジエンタ」の三つがある。


「慈円多タイムス」は、どちらかと言うと反体制的と言うか、学校のやり方にも批判的な記事が多い。

政治的に左寄りな記事もあって、読む人は特殊と言うか限定的だ。

ただ「セブン・シスターズ批判」がよく出るので、そこそこ支持者もいる。


「慈円多ジャーナル」は、準公式と言われるくらいで、慈円多新聞をもっと砕けた感じにした記事が多い。

先生の声なんかも掲載されるし、毎年のセブン・シスターズやファイブ・プリンスも一早く記事になる。

また紙の新聞より、今はネットで公開する事が多い。

紙の新聞は、入学式・学園祭・体育祭・卒業式の四回くらいだ。


「聞き耳ジエンタ」は、完全にお遊びに振り切っている。

ゴシップネタも多い。紙で発行されるのも、入学式直後と学園祭の時くらいだ。

掲示板は既に「学校裏サイト」と化している。


ちなみに公式の新聞部のメンバーが、非公認サークルのメンバーも掛け持ちしている。

公式な学園新聞では書けない事を、非公認サークルで書いてウサを晴らしている感じだ。


七海はちょっと考えた風だが、すぐに答えた。


「別に目新しい情報はないよ。『学園一の堅物』『氷の貴公子』って言われている所も変わらない。家は代々医者の家系で、系列病院をいくつも持つ大病院の御曹司。そして我が学園の理系No1の成績を続ける秀才。そんな所かな」


そして七海も身を乗り出した。


「一番のスクープは、そんな理系プリンスを、まだ一年の無名な美園がツバ付けたって事だよね」


無名ってなんだ?無名って?


あたしは乗り出してきた七海の手をガシッと掴んだ。


「あたしの事は、絶対に書かないでよ!」


眼力を込める。


「わかーってる。わかーってるって!あたしだって友達を売るようなマネはしないよ。でもその代わりに、紫光院様と付き合えることになったら、アタシに独占インタビューさせてね」


本当に大丈夫かなぁ、七海は何しろ噂話が好きだからなぁ。


「わかったよ。うまく行ったらね。それから、情報があったら教えてよ」


そう、あたしは肉食獣女子!

これからどんどん獲物にアタックして行かなくちゃ!

この続きは4/18(木)7時に投稿予定です。

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