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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第二章 新たなる戦い?少女野獣編
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2、雲取麗華の仕返しはハンパなかった!(ちょっとツラ貸せ編)

またしても憂鬱なお昼時・・・


今日は川上純子ちゃんが、兵太とお弁当を食べる日だ。


兵太は教室を出て行く時、チラっとあたしの様子を伺ってから出て行った。


フン、そんなにあたしの事が気になるなら、あの時にしっかり断れよ!

「俺は美園だけが好きだ!他の女子と弁当を食べる気はない!」って。

それくらい言ってくれたら、あたしだって兵太を見直したのに。

そうしたら二人の関係だって、もっと・・・


アンタがそんなだから、あたしだって『全てを捧げよう』って気にならないんだからね!


あ、この学校で女子が男子に対して「捧げる」なんて、不適切だった。

「与える」だ、「与える!」

もとい

「アンタがそんなだから、あたしだって『全てを与えよう』って気にならないんだからね!」


あたしは不満の鼻息も荒く、カバンから紅茶の入った水筒とコッペパンを取り出した。

流石に一人の時まで、お弁当を作ろうって気にはならない。


「あ~ら、美園ちゃん。ま~た失恋弁当ですかぁ~?」


ニヤニヤ笑いながら、如月七海があたしをイジリにやって来た。


「何よ、その『失恋弁当』って!あたしは別に失恋なんかしてないし!」


ムカッと来て、そう言い返す。

だが七海のニヤニヤは止まらない。


「そうかなぁ~。でも美園って、とっても分かりやすいんだよねぇ。恋愛対象がいると弁当に力が入っているし、居なくなると途端に『パンと紅茶だけ』になるから」


「うるっさいなぁ。いいの、あたしはこれで!あたしは元々小食なの!」


さらに七海があたしをイジろうとした時だ。

教室の中に、誰もが目を惹く「フランス貴族を思わせる詰襟制服」を来た女子三人が入って来た。

彼女達は他クラスにも関わらず、少しも躊躇すること無く、堂々とクラスを突っ切ると、

あたしの目の前にやって来た。


「天辺美園だな?真・生徒会としておまえに話がある。すぐに一緒に来い!」


あたしは目の前に立った詰襟女子三人を、上から下まで見つめた。

七海があたしに駆け寄る。


「ちょっと美園。近衛兵に呼び出されるなんて、一体なにをやったのよ!」


近衛兵・・・真・生徒会直属、すなわちセブン・シスターズの実行部隊を、一般生徒は通称『近衛兵』と呼んでいる。

つまり彼女達はセブン・シスターズが『制裁すべし!』と判断した時に動き出すメンバーなのだ。

そして彼女達の存在は、一般学生には恐怖の代名詞でもある。


あたしはポットの紅茶を飲みながら、状況を冷静に分析した。


正直、あたしはセブン・シスターズに睨まれている。

だから近衛兵に呼び出される覚えはいくつかある。


一年生で、しかも入学後わずか3か月以内で、既に近衛兵に呼び出されるなんて、前代未聞だろう。

ある意味では名誉?なのかもしれないが、一般学生にとっては一大事なのは間違いない。


「わかった」


あたしは一言そう答えると、席を立ちあがった。

近衛兵三人に囲まれて、教室を出て行く。

七海が心配そうにこっちを見ていた。


校舎を出て坂を下り、第一運動場を横切って行く。

この学校は都内にあるにも関わらず、敷地はかなり広い。

スポーツ関係だけでも、運動場は3つ、テニスコートが四面、体育館が2つ、それ以外にも剣道場、柔道場、トレーニングジムがある。


運動場の横にある剣道場、柔道場の裏に回る。

もう校舎敷地の外れの方だ。

そこは木立があり、人目がない林のようになっていた。


あたしは段々不安になって来た。

まさかこのエリート高校で、暴力的なリンチだのは無いだろうが、それでも人気の無い所に呼び出されるのは恐怖だ。


剣道場から少し離れた林の中、まばらな木々の間に、雲取麗華と渋水理穂がいた。

雲取麗華はわかるが、渋水理穂までいる理由は何だ?


雲取麗華が一歩、前に出る。


「天辺さん、あなた、なぜ呼び出されたか、わかっているわよね?」


二つや三つは覚えがある。

だがこの場合は、自分から言い出さない方がいいだろう。


「黙ってないで、何とか言いなさいよ!」


渋水理穂が金切り声で喚いた。


うるさいなぁ、オマエの言う事に従う理由なんて、無いんだよ!


それを雲取麗華が抑える。

そして静かに言った。


「では私が言ってあげる。あなたが赤御門君へのお弁当お届けレースに最後に参加した時、何かしたわよね?」


・・・やっぱり、その件か・・・


以前からセブン・シスターズに睨まれていたとは言え、近衛兵が動き出すほどの事態と言ったら、やはりこの件だろう。

あたしもあれは「やり過ぎだった」と反省している所だ。


「ここにいる渋水さんの情報だと、あなたが四階の水道場前にワックスを塗っている所を見た人間がいるそうよ」


そりゃ、おそらく嘘だ。

あたしは人目が無い事を確認した上で、ワックスを塗った。

と言うか、ワックスのボトルを落として、それを拭き取るマネをしたのだ。

その間、誰も廊下には出ていなかった。

あたしはそんなにドジじゃない。


おそらく渋水理穂が、親衛隊の連中にガセを言わせているんだろう。


だが状況証拠から言っても、あたしの有罪は確定だろう。


雲取麗華は、そんなあたしをしばらく見つめていたが、やがて鋭い目つきになると、こう言った。


「『お弁当お届けレース』は、全女生徒に公平にチャンスを与えるためのもの。そこに小細工をして勝とうなんて許される事ではない。真・生徒会としては見過ごせる事ではないわ!」


それを聞いてあたしは、反抗的な目を雲取に向けた。


全女生徒に公平なチャンスだぁ?

アンタらセブン・シスターズは、配下の女生徒を使って、本来クジ引きの出走位置で有利な場所を占め、さらにはその配下の連中に一般生徒の妨害までさせているじゃないか!


そしてその横にいる渋水理穂にも、怒りの視線を向ける。

アンタは自分の親衛隊の男子を使って、あたしを転倒させるように仕組んだよな?

自分が人にやってもOKで、逆に自分がやられたら許せないってか?


だが渋水理穂の目は笑っていた。

ヤツは完全に、勝利者の眼をしている。

そう、証拠はないのだ。何も!


あたしがあの「黒い三ザコメン」を締め上げた所で、奴らは「渋水理穂に頼まれました」とは、絶対に言わないだろう。

そして「渋水が的にかけたのはあたしだけだが、あたしは出走メンバーほぼ全員を罠にかけた」という事実がある。

この違いは大きい。

「個人対個人」の問題ではなく、「集団対個人」の問題にしてしまったのだ。


あたしは怒りに耐えるように拳を握り締める。

しかし、あたしに反論する余地は無かった。


「天辺美園、あなたに懲罰を与えます!」

この続きは、明日4/6(土)8時頃に投稿予定です。

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