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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第一章 学園一のイケメン御曹司をGETせよ!乙女の疾走編
28/116

13、戦線離脱・・・

「みその~、美園ってば!」


如月七海(きさらぎななみ)が苛立ったように、あたしを呼んだ。


「んあ?」


あたしはぼんやりと返事をする。

焦点の合わない目で七海を見た。


「『んあ?』じゃないでしょー。さっきから話しかけてるのに!」


そしてあたしの机の上を指さした。


「あんた、本当にお昼ご飯はそれだけ?」


今は昼食の時間だ。

そしてあたしの目の前にあるのは、食パン一枚と紅茶の入った水筒のみ。

食パンは何も塗っていない、ただの食パンだ。


「んあ」


あたしはさっきと同じ音を発声した。

今度は「返事する気がないイエス」の意味だ。


七海は顔をしかめて、ボリボリと頭を掻いた。

「勘弁してよ」という様子だ。


「あたし達、まだ十代なんだよ?成長期なんだよ?そんな乙女の昼飯が食パンのみじゃ、身が持たないでしょーが。胸だって小さくなっちゃうよ。痩せる時は胸から痩せるんだからね!」


あたしは七海のお小言を聞きながら、ハムスターのようにモショモショと食パンを齧った。


ふん、別にいいもんね!

胸くらい小さくなったって。

どうせ見せる相手もいないんだし。

あたしは男なんかに頼らず、一生をキャリア・ウーマンとして生きるんだ。

現実の三次元の男なんて、面倒臭い!

乙女の必死な想いもわからない男共なんて、コッチから願い下げだ!

乙女ゲーの二次元イケメン・キャラの方が、ずっと優しいよ!


そんな時、あたしの気力を削ぐ存在が、もう一つやって来た。


可愛いらしいお弁当箱を2つ胸に抱いて、教室の入り口に現れたのは、

これまた可愛いらしい川上純子ちゃんだ。


「中上くん……」


彼女は恥ずかしそうに小さめの声で兵太を呼んだ。


兵太は慌てて席を立ち上がる。

4時間目の問題が解き終わってなくて、時間までに屋上に行けなかったのだろう。

少しオドオドした様子で、慌てて教室を出ていく。


「ご、ゴメン。すぐに行くよ……」


そこまでの会話が耳に入ったところで、2人は廊下に消えていった。


ハァ~、仲がいい事で、よろしいござんすね。


七海がそんな2人の様子を見ながら言った。


「まぁ、美園がやる気を無くすのもわかるけどね。中上君があれじゃあね」


あたしはチラっとだけど、七海を睨んだ。

あたしのやる気が出ないのは、兵太とは関係ない!

赤御門様が「あたしの超高級傑作弁当より、そこらのラーメンを選んだ」からだ。

あの弁当には、純粋に万単位の材料費がかかっているのに、

一杯7~800円のラーメンに負けるなんて!

こんな目に合ったら、イエス様でも脱力するだろう。


「もう6日目だよね。あと4回連続で弁当食べたら、中上君は完全に川上さんのモノになるんだよね」


その七海の言葉に、あたしの耳がピクッと反応した。


そうか、もう6日もお届け弁当が続いているのか。


兵太が川上さんの弁当を食べるようになってから、あたしは兵太と話していない。

弁当の事が無ければ特に話すことも無いし、川上さんにも悪いし。


兵太とは幼稚園からの付き合いだが、幼馴染みって意外と脆い存在なんだな。


「いいの、このままで?」


「何が?」


「中上君と川上さんのことだよ。このまま中上君を取られちゃっていいのか、ってこと!」


七海は心配そうに聞いてくる。

だが余計なお世話だ。

あたしと兵太の間に、恋愛感情は無い。

それに兵太が誰を彼女に選ぶかなんて、アイツの自由だ。

あたしには関係ない。


「別に」


あたしは食パンの耳だけ残した。

水筒から紅茶を飲む。

もはや自分の弁当を作る気力すら起こらない。


またもや七海が呆れ顔で言った。


「アンタも本当に極端だよね。この前まで、あんなに力入れて弁当作っていたのに」


「うるさいわね。今はちょっと休んでいるだけなの!明日からまたお弁当作って、レースに参加するわよ!」


そう言って、水筒に残った最後の紅茶を飲み干す。


・・・


そう、今はちょっと休憩しているだけなのだ。

誰にだって充電期間は必要だ。

気力が回復すれば、また以前のような力作弁当を……


……あたしは、本当に作れるんだろうか?

この続きは3/22(金)朝7時頃、投稿予定です。

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