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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第一章 学園一のイケメン御曹司をGETせよ!乙女の疾走編
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EP2、あたしが慈円多学園を選んだ訳(後編)

美園はなぜ「上を目指す」に拘るのか?

その理由は中1の時の体験にあった。


1学期の時、クラス全員から除け者にされていた女子・杉村綾。

美園はそれに同調するのを良しとせず、杉村とも普通に話しをしていた。


だが2学期に入ると、今度は美園がクラス女子全員から除け者にされるようになってしまった。

そしてそうするように仕向けていたのは、杉村綾だった。

ちょうどその頃、教育実習生が来た。

あたし達のクラスを受け持つことになったのは、背はそれほど高くなかったが、

髪の毛をボブカットにした、カッコいい女性だった。

彼女の名前は宮田さんだ。


宮田さんは教育実習生の割りには、授業や勉強を見るのも熱心だったし、

あたし達生徒とも、よく話をしてくれた。

あたし達にとっては「身近な良きお姉さん」と言った感じだった。


ある日、あたしは学校から帰ろうとした時、宮田さんに呼び止められた。

クラスの女子から除け者にされているあたしは、当時は帰りは一人だ。

宮田さんは空き教室に私を呼び入れた。


「天辺さん、あなたクラスの女子と仲が良くないみたいだけど、何があったの?」


「別に、わからないです」


あたしは別に人に話す気は無かった。

だが宮田さんは、それで納得はしなかった。


「何か思い当たること、あるでしょ?天辺さんは成績もいいし、クラブ活動には入っていないけど、足も早くて運動神経もいい。性格もサッパリしていて、他人に嫌われる性格じゃないと思うのよ」


あたしは黙っていた。

面倒臭いのと、クラスで除け者になっている事を他人に話すのは、それはそれで苦痛なのだ。


宮田さんがあたしの目を見る。


「実は私も、中学生の時にクラスの女子全員から除け者にされた事があったの。キッカケは本当に些細な事だった。学校で女子に人気のあった先生が、私の事をすごく誉めたことがあった。それが気に入らない女子達が中心になって、私を除け者にするようになったの。だから天辺さんにも、同じような事があったんじゃないかと思って」


先生がここまで腹を割って話をしてくれたんだ。

あたしも正直に言うのが筋ってもんだろう。


あたしは今までの事を話した。

最初は杉村さんが除け者だったこと。

あたしだけが彼女と話す存在だったこと。

夏休みに杉村さんがクラスの中心女子と話すようになったこと。

そこで杉村さんは、あたしが彼女達の悪口を言っている、と言い回ったこと。


宮田さんはじっとあたしの話を聞いていた。

あたしの話が終わると、宮田さんは言った。

「天辺さん、あなた、高校は慈円多学園に行きなさい」

「は?」


何を言っているのかと思った。

ここでいきなり高校の話?


「慈円多学園は、私の母校なの。あなたみたいに実力はあるけど周囲に合わせず、ストレートな人は、周囲の嫉妬を集めやすい。普通の学校に行ったら、あなたはまた標的にされる可能性があるわ」


そんなものか?と、思った。

そこまであたしは、自分に実力があるとは思わないが。


「慈円多学園のモットーは『女子たるもの、野獣であれ!』。だから競争も全てストレート。女子の嫉妬によるイジメとか、そんな陰湿な物が入る余地がない!」


そう熱く語る彼女の言葉に、あたしもいつの間にか引き込まれて行った。


「慈円多学園では、こう教えている。『女は全て女であるだけで素晴らしい』全ての女性の生き方を肯定してくれる。だからより良い男を捕まえる事も、勉強や仕事を頑張って社会でのし上がる事も、両方とも価値があって重要だと言っている。あなたや私みたいなタイプにはピッタリの学校だわ!」


宮田さんは立ち上がると、強く言った。


「もうすぐ文化祭があるわよね。C組の出し物は演劇。そこで天辺さんは、周囲を意見を気にせず、自分の思う通りにやりなさい。そしてあなたの存在を他女子に見せつけるの。『人生は常に勝負』よ!」


その時のあたしには、宮田さんの言ったことは全部は理解できなかったが、

宮田さんの強い意思だけは響いた。


あたしは宮田さんの言う通り、文化祭の演劇については率先して発言し、活動した。

題材選びから脚本、台本作成、道具の準備まで、できる事は全て!

少しでもより良いモノを、上を目指して!


最初はあたしを無視していた女子達も、男子があたしに協力的になってくれると、

自然にあたしの回りに集まり始めた。

時には議論を交わし、時にはみんなの意見を調整して行く内に、

熊本達ボス猿女子もあたしの事を認めるようになって行った。


そして文化祭はクラス一丸となり、大成功を納めた。

各クラスの出し物の投票結果でも、あたし達の1年C組が上級生を押さえて一位だったのだ。


その頃には、あたしはクラス女子の中心となっていた。

あたしはそこで宮田さんの言った事を実感したのだ。


『人生は常に勝負』


そしてそこにはこう付け加えるべきだ。


『勝たなきゃ意味がない。上を目指し続けるべき』


文化祭から一週間ほど後のこと。

下駄箱で、杉村綾があたしを待っていた。


「あの……」


彼女がオドオドしながら、声をかけて来る。


あたしは感情を込めずに、彼女の方を見た。


「あたし、天辺さんに謝らなきゃって思って……」


あたしは無言だった。


「あの、ごめんなさい。天辺さんはあたしに優しくしてくれたのに……」


あたしは答えない。


「あたしは嫌だったんだけど、熊本さん達に『天辺さんと話をしたら許さない』って言われて。あたし、またイジメられるのが怖くて……」


「嘘つき」


「えっ?」


「嘘をつくな、って言ってるの」


「えっ、あたし、嘘なんて言ってない」


「あたし、もう聞いているんだよ。他のクラスの子から。杉村さんが夏休みに熊本さんと偶然会って、それから『あたしが熊本さん達の悪口を言っている』って杉村さんが言ったって」


「・・・」


「ちなみに同じ事は熊本さん達からも聞いたよ。他の女子はわかっていたみたいだけどね」


「う、うう」


とうとう杉村さんは泣き出した。

泣けば許されると思ってるのか?この女?


あたしはそんな彼女にさらに言った。


「1学期の時は、あたしには杉村さんを嫌う理由が無かった。だけど今はハッキリとある。あたしはあなたを信用できない」


彼女は泣き続けた。


「だけど、あたしはあなたを除け者にはしない。でも関わりたくもない」


あたしは泣いている杉村綾をそのままにして、その場から立ち去った。


確かに不愉快な出来事だった。

だけどあの事件によって、あたしは人生において一つの教訓を学んだのだ。


そしてあたしには当面の目標が出来た。

それは「慈円多学園に行くこと」


名門私立高校だけあって、学力的には難しいかもしれないが、これがあたしの今の目的だ。

あたしは宮田さんみたいな人になりたい!


あたしは上を目指すんだ!


・・・


弁当を食べながら、あたしはその事を思い出していた。


そう、あたしは上を目指す。

妥協はしない。

普通で満足しない。

つまらない女にはならない。


人生は常に勝負だ。勝たなきゃ意味がない。

『女子たるもの、野獣であれ!』だ!

この続きは、3/9(土)に公開予定です。

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